NI PXI使用したRFフロントエンドテスト

概要

今日の無線デバイスのRFフロントエンドはどのような部品で構成されているでしょうか。携帯電話を分解すると、ワイヤレス通信を可能にするさまざまな機能を備えたチップが組み合わさっているのがわかります。このホワイトペーパーでは、デュプレクサ、パワーアンプ (PA)、およびRFトランシーバに焦点を絞って説明します。

内容

一般電話コンポーネント

図1:一般的な電話のレイアウトは、ワイヤレス通信を可能にする多くのコンポーネントで構成されています。

アンテナ

1台の電話に異なるアンテナを組み込むのは難しい場合があります。規格ごとに異なる周波数が使用される場合、特定のアンテナを使用すると、最高のパフォーマンスが得られます。不適切なアンテナ長による損失のフィルタ処理や予測を使用することで、アンテナを共有できる場合もあります。さまざまな国々で複数の帯域をカバーする必要がある一般的な電話の例を考えてみましょう。たとえば、380 MHzの低帯域と1,900 MHzの高帯域のGSM帯域幅をサポートする必要があるとします。無線信号の波形計算に基づいて、アンテナの長さを特定できます。

つまり、簡略化された双極子アンテナ設計フォーミュラに基づいて、アンテナ長は7.5 cmから37 cmまで変化します。

電話機の製造元は、共有アンテナのほかにも、他の電子製品のインピーダンスと比較して、アンテナのインピーダンスの課題にも直面します。アンテナは、金属製のテーブルや他のシンプルな接地など、理想的ではない媒体と接触するため、アンテナの電気インピーダンスは変動します。このインピーダンスは信号反射や劣化の原因となり、電話の電源管理が難しくなります。微小電気機械システム (MEMS) などが、これらのインピーダンスの変化を非常に高速で機械的に制御できる新しいテクノロジとして期待されています。

デュプレクサ

デュプレクサを使用すると、携帯電話のメイン信号の送受信を同一の共有アンテナで実行することができます。電話の場合、デュプレクサは高速スイッチングデバイスのように機能します。基地局から信号を受信する場合、通常は低ノイズアンプ (LNA) を通してゲインを加えた後、RFトランシーバによってダウンコンバートされ、最後にベースバンドプロセッサに送られます (図2を参照)。生成の場合は、PAを通して信号にゲインを加え、基地局に伝送されます。

図2:電話は、左側の図ではRF信号を受信し、右側の図ではRF信号を生成します。

パワーアンプ

携帯電話で最も重要なコンポーネントの1つがパワーアンプ (PA) です。PAは生成されたRF信号にゲインを加えます。規格によっては、電話からは最大30 dBmまたは1ワットの電力が出力されることがあります。これは、電話内の他のコンポーネントよりバッテリ寿命に大きな影響を与えるため、効率を最大化するよう特に注意が払われています。

RFトランシーバ

RFトランシーバは、ベースバンドプロセッサの主要フロントエンドです。選択されたRF周波数から、通常は100 MHzより低い中間周波数に信号をダウンコンバートします。多くの場合、さらに信号処理を行ってベースバンド (0 Hz) までダウンコンバートして、伝送された元の複素データを取得します。また、プロセッサからのベースバンドデータを、通常はI/Q変調器を通して直接RF周波数にアップコンバートします。

ベースバンドプロセッサ

このホワイトペーパーの主題ではありませんが、このコンポーネントの機能を理解することは重要です。ベースバンドプロセッサは、RFトランシーバからキャプチャされたデータを収集し、復調その他の信号処理を通して未処理データを抽出します。この内容には、オーディオ情報からビデオまたはWebサーフィン用のブラウザビット情報まで、あらゆる情報が含まれます。信号処理とデータの変調によって逆の処理も行います。データの物理層部分を管理するだけでなく、電話が基地局と通信するための信号要件も扱います。

RFフロントエンドデバイス他のモバイルデバイスコンポーネント違い

PAなどのRFフロントエンドデバイスと、他のモバイルデバイスコンポーネントの違いの1つは、使用されている材料です。シリコン (Si) は、マイクロ波ベースの信号にとって有効な特性を備えていないため、通常RFデバイスには使用されません。代わりに、PAや他のRFフロントエンドデバイスには、最も一般的な化合物半導体であるヒ化ガリウム (GaAs) が使用されています。ただし、新しいデバイスでは、リン化インジウム (InP)、シリコンゲルマニウム (SiGe)、窒化ガリウム (GaN) も使用されています。これらの化合物には、トランジスタの接合が高速で、高周波数信号に対する許容範囲が広いという利点があります。デメリットは、製造コストが高いことと、ウエハサイズが小さいことです。これらの理由から、マイクロ波デバイスをシリコンに移行するための研究開発が活発になっています。

RFフロントエンドデバイステスト重要性

すべてのコンポーネントを使用して電話機を開発する際、テストを適切に実施しないと、多くの問題やエラーが発生する可能性があります。これらのエラーが重なり合うと、電話機の全体的なパフォーマンスが低下するおそれもあります。したがって、各コンポーネントをテストして品質を確認し、電話機本体も全体をテストして正しく組み立てられていることを確認することが重要です。従来、半導体コンポーネントのテストは、パッケージ化後に実施されてきました。しかし、新規ウエハ開発やプロセスのコストを考慮し、パッケージ化の前にシリコンの問題を把握しておくことの重要性が増しています。

RFフロントエンドデバイス一般テスト

これらの一般的なテストの多くは、半導体デバイスの問題の把握に最も効果的であることが実証されています。特性評価テストでは、チップの機能の本質を理解することができます。以降のセクションでは、特性評価、製造、またはその両方に適したテストについて説明します。一部のテストは、パッケージ化されたチップとウエハレベルのテストの両方に使用されます。

テストは次の5つのカテゴリに分類できます。RF電力測定、スペクトル計測、ネットワーク解析、変調確度計測、DC計測です。

RF電力測定

Tx電力、つまり送信電力はデバイスに対して実施される、おそらく最も一般的な測定です。デバイスからの出力電力は、設計に準拠した範囲内でなければなりません。この測定は、パワーメータ、ベクトル信号アナライザ (VSA)、ベクトルネットワークアナライザ (VNA) などのさまざまな計測装置を使用して実行できます。

電力対時間 (PVT) 測定では、信号のバースト電力と平均電力を測定します。この測定は、通常GSMやWLANなどのバーストRF信号に使用されます。多くの場合、テストに確実に準拠するように、信号の周囲にマスクが配置されます。


図3:PVT測定は、通常バースト信号に使用されます

ゲインはPAにとって重要な測定です。Gain = Pin – Pout。Pinはアンプへの入力電力、Poutは増幅後の最終的な出力電力です。優れたキャリブレーション手法を使用して既知の入力電力がわかる場合は、これをPin基準として使用できます。パワーメータなどの高確度デバイスは、Poutを測定します。相対ゲインを測定している場合は、VSAなどの一部の測定製品でゲインも測定できます。

反射減衰量からは、RFフロントエンドデバイスを通過する際の元の信号の反射を知ることができます。これは、最適なインピーダンス整合を得るために電圧定在波比 (VSWR) を測定しようとしている場合は特に重要です。入力信号および出力信号の比率を基準にするため、通常はVNAで測定されます。場合によっては、ベクトル信号発生器 (VSG)、VSA、カプラを使用できますが、このハードウェアのシステムキャリブレーションを実行する場合は注意が必要です。

電力効率は、PAがモバイルデバイスからどれだけ効率的にバッテリ電力を使用しているかを示すため、非常に重要なPA測定値の1つです。効率が高いほどバッテリは長持ちします。これは、デバイスの製造元にとって理想的です。電力効率は、デバイスが高ゲインアンプかどうかによって、いくつかの方法で計算できます。

Poutはアンプからの測定電力、PDCはバッテリ源またはバッテリシミュレータからの供給電力、Pinは入力電力で、通常はコントローラトーンまたは連続波形 (CW) です。

1 dB圧縮も重要な測定値です。PAは最大出力レベルに駆動されると最終的に非線形になるため、理想的な線形出力から逸脱し始めます。図4に、この逸脱をわかりやすく示します。


図4:1 dB圧縮は、理想的な線形アンプと現実のアンプが1 dB逸脱するポイントです。

電源入力、つまりPinを増やすと、PAは飽和し始め、Psatと呼ばれる最大電力出力に達するとそれ以上上昇しません。理想的な線形アンプと現実のアンプが1 dB逸脱するポイントは1 dB圧縮と呼ばれます。信号は自然な飽和ポイントによって圧縮されます。PAの設計では、このレベルに近い電力効率を得るために、この1 dBポイントに可能な限り近づけることが理想です。

サーボはPAに固有の概念です。キャリブレーション済みの出力電力を知る必要があるため、この最終ゲイン量を特定するための電力制御手法が使用されています。この手法では、希望の出力電力をキャプチャするための制御ループを作成し、その出力電力に達するまで発生器の電力を制御します。簡単にいうと、比例制御ループを使用して、出力電力レベルが希望の電力に収束するまで、電力レベルを前後に振幅させます。


図5:PAサーボでは、出力電力レベルと希望の電力が収束するまで制御ループが電力レベルを前後に振幅させます。

3次インターセプト (TOI) と相互変調歪み (IM3) は、RFシステムの線形性を列挙するために使用される非常に関連性の高い2つの仕様です。どちらの仕様からも、計測器の電力に対する3次高調波歪み積のレベルに関して優れた洞察が得られます。3次高調波歪み積は元の信号に干渉し、SN比特性が低下する可能性があります。そのため、より高次の複素変調スキームをシステムで正しく動作させるのが困難になります。

また、高調波はデバイスの出力結果に影響を与え、他のRF信号に干渉したり、米国連邦通信委員会を始めとする他の政府通信当局と準拠上の問題が発生したりする可能性があるため、高調波の測定は重要です。高調波は、さまざまな規格に対して7次まで測定可能です。たとえば、1,800 MHz PCS帯域の高調波を7次まで測定できます。これはおよそ12.6 GHzです。

スプリアスも、設計中によく測定されます。これらはSN比 (SNR) に影響します。そのため、設計仕様は、測定スペクトルからこれらを排除するように作成されます。

スペクトル計測

隣接チャンネル漏洩電力では、特定のチャンネルと、そのチャンネルに隣接する2つのチャンネルの分散電力を測定します。この測定は、チャンネル内の合計電力および周囲の上側および下側チャンネルの合計電力を計算して実行できます。測定するテクノロジの規格により、隣接チャンネル漏洩電力測定の条件が異なります。たとえば、符号分割多重アクセス方式 (CDMA) のワイヤレス規格では、4.096 MHzの帯域幅内で転送を行う必要があります。さらに、5 MHzのオフセットで測定される隣接チャンネル漏洩電力は、チャンネル内の平均電力より少なくとも70 dB下回る必要があります。

隣接チャンネル漏洩電力比 (ACLR) は、搬送波積電力と隣接チャンネル漏洩電力レベルの比率です。これは、広帯域CDMA測定で最もよく使用されます。他の規格では、一般に隣接チャンネル漏洩電力比 (ACPR) としても知られています。この測定を行う主な理由には、2つの意味があります。この測定では、対象の搬送波外にある他のスペクトルに影響を与える可能性のある隣接チャンネル干渉を測定しますが、さらに重要なのは、これが、搬送波がもたらす3次相互変調積を測定するもう1つの方法であるということです。図6は、特定のWCDMA信号に対するこの測定を示しています。

図6:このWCDMA波形はACPRまたはACLRを示します。

出力RFスペクトル (ORFS) は狭帯域測定で、3GPP仕様で定義された変調とスイッチングによるモバイル局のトランスミッタのチャンネル外スペクトルエネルギーの分布に関する情報を提供します。この測定は、一般に、GMSK変調 (位相のみ) がデータの送受信に使用される場合に、GSM、GPRS、およびEGPRSに使用されます。

ORFS測定では、搬送波周波数からオフセットされたさまざまな周波数での電力を計算し、他の周波数帯域へのバースト漏洩の量を特定します。各オフセットでの電力は搬送波電力を基準とし、dBcを単位として報告されます。

2種類のORFS測定があります。変調ORFS測定では、バースト中心の周波数の内容を調べますが、スイッチングORFS測定では、バーストのランプアップおよびランプダウン部分を測定します。一般に、スイッチングORFSは、所定の周波数で変調ORFSより高い値を報告します。3GPP仕様では、変調とスイッチングには定義済みの周波数オフセットが使用されます。

  • 変調: +/-200 kHz、+/-250 kHz、+/-400 kHz、+/- 600 kHz、+/-1.2 MHz、+/-1.8 MHz
  • スイッチング: +/-400 kHz、+/-600 kHz、+/-1.2 MHz、+/-1.8 MHz


図7:これはGSM信号のORFSです。

QPSKや16QAMのような振幅変調や位相変調を導入する場合は、代わりにエラーベクトル振幅 (EVM) 測定を使用するのが一般的です。

相補累積分布関数 (CCDF) は、信号の電力特性の解析に使用できる統計的測定法です。定義された時間内に特定の電力レベルで信号が存在している時間を示します。CDMAまたはWCDMA信号では、信号伝送で不定期に高い電力ピークが発生します。これらのピークは、適切なデータ伝送に必要ですが、ピークが不要に長く続く場合、PAデバイスの圧縮を示している可能性があります。これを図8のグラフに示します。所定の時間内に発生する長いピーク伝送と正常なピーク伝送を示しています。

図8:相補累積分布関数

ネットワーク解析

電圧定在波比 (VSWR) は最小振幅に対する最大振幅の比率で、以下の式に示すように結果は干渉波となります。

pは次のように定義された反射係数

A = 反射波、R = 入射波


図9:pまたは反射係数の定義

伝送ラインでインピーダンス不整合があると、伝播信号が反射する原因になります。インピーダンス誤差によって反射の振幅が変わります。不整合部分の長さによって、その部分から反射する信号の最小周波数が決定されます。VSWRは、その信号反射の尺度です。

反射減衰量もVSWRに似た反射測定値ですが、通常はdBで表されます。上と同じ反射係数を使用して、次のように表現できます。

反射減衰量 (dB) = –20 log (p)

PAのようなRFフロントエンドデバイスで最も一般的な順方向の反射減衰量または、RFトランシーバに使用できる逆方向の反射減衰量を測定できます。

変調確度計測

位相および周波数誤差 (PFER) は、GSM、GPRS、EGPRS信号で一般的な測定値です。変調信号は、振幅シフトのない位相 (GMSK) に完全に基づいているため、その位相の品質、つまりその変調品質を特定する必要があります。通常は、2乗平均平方根 (RMS) とピーク位相の両方が測定されます。RMS位相誤差は、バースト全体の位相誤差のRMS平均を示すのに対して、ピーク位相誤差はバースト内で測定された最も悪い位相誤差を示します。

エラーベクトル振幅 (EVM) は障害のある状況での復調器の性能を示す尺度です。受信したシンボルのエラーベクトルは、I/Q平面で受信したシンボルと理想シンボルの位置間のベクトルと定義されます。EVMを計算するために、エラーベクトルの振幅と予測されるコンスタレーションポイントの振幅の比率が測定されます。

変調誤差比 (MER) とは、デジタル変調信号におけるSN比 (SNR) の尺度です。

DC測定

電流は、RFフロントエンドのさまざまな部分で測定できます。デバイスに電力を投入する供給電圧で測定できます。デジタル回線、Vrampまたはモードおよび周波数制御ラインのアクセサリチャンネルで測定することもできます。

RFフロントエンドなどの半導体デバイスでは漏れ電流が発生することがよくあります。漏れ電流の測定は、半導体デバイス上のピン間の絶縁の特定に役立ちます。ソースメジャーユニット (SMU) を使用することで、特定のピン間の漏れを測定できます。

Vdetect測定は、PAからの出力制御ラインの電圧測定です。このVdetectは、デバイスのバッテリに制御信号を出力し、PAのVbattに必要な電力を示します。

RFフロントエンドテスト一般設定およびデバイス制御

図10:この図は、一般的なモバイルデバイスのPAを表します。

PAには少なくとも2つの異なる入力、RF入力 (1) と (2) があります。これはモバイルデバイスの帯域に大きな違いがあるためです。たとえば、GSMは800 MHzの範囲だけでなくPCSの1.8 GHzの範囲でも動作します。そのため、周波数の違いに対応する個別の増幅が必要になります。また、次世代モバイルデバイスのマルチモードPAでは、多くの場合、GSMとWCDMAやLTEなどの他の規格が組み合わさっています。PAには4つ以上の入力が存在することがあります。この場合、モードは周波数によってハイバンドおよびローバンドに分類されます。また、増幅効率を最適化するために、規格ごとに異なる入力が存在します。

Vbattは、バッテリまたはバッテリシミュレータ計測器からPAに供給される電力です。

Vrampは、PAのゲインの制御に役立つ制御入力ラインです。これは信号プロファイルが重要なバーストGSM/GPRS/EDGE/EDGE+信号には特に重要です。

PAの複雑さによって、電力制御の切り替え用に個別のモードおよび帯域制御ラインが含まれている場合があります (モード/帯域/SPI)。たとえば、GSMモードからEDGEモードへのモード制御が可能です。帯域は、PAが動作可能な異なる周波数帯域に調整されます。次世代PAでは、シリアルペリフェラルインタフェース (SPI) が使用される傾向にあり、最終的にはMIPI (新しい高速シリアルインタフェース) が使用されます。SPIとMIPIは高速デジタル制御インタフェースを使用します。このインタフェースは携帯電話の電力管理IC (PMIC)、CPU、その他のチップから組み込むことができます。

入力と同様、今日のPAには少なくとも2つの出力、RF出力 (1) および (2) があります。これらは異なる周波数帯域に対応しています。新型のPAは、複数の規格、モード、および周波数を使用する傾向にあります。

Vdetectは、デバイスのバッテリに制御信号を出力し、PAのVbattに必要な電力を示します。

RFフロントエンドテスト一般テスト装置

RFフロントエンドデバイスとインタフェースして特性評価および製造テストを行う場合、通常複数の装置を使用します。以降のセクションでは、最も一般的な計測器について、RFフロントエンドデバイスとのインタフェース方法とともに説明します。

図11:RFフロントエンドデバイステストには従来この計測器のセットが使用されてきました。

スペクトラムアナライザは、RFデバイス開発ラボや施設に普及しています。不明な信号の電力測定に優れ、RF信号のキャプチャ設定も簡単です。RFフロントエンドテストは、一般に、スプリアスや高調波テストなどの高周波数RF信号のキャプチャに使用されます。WLANデバイスの7次測定を行う必要がある場合、40 GHzまで測定可能なアナライザが必要です。アナライザにはネイティブのバンドパスフィルタがないため、主搬送波の入力に外部フィルタを追加して、高調波やスプリアスを測定できる十分なダイナミックレンジを獲得するのが一般的です。多くの場合、セルラー帯域やWLAN、Bluetooth、ZigBee向けのワイヤレスネットワーク帯域に、異なるフィルタバンクが使用されます。

ベクトル信号アナライザ (VSA) は、RFフロントエンドデバイステストで最も重要なテスト装置の1つです。電力測定用のスペクトラムアナライザと同様、変調確度測定に重要な位相情報を測定できます。この位相および振幅のキャプチャ機能に加えて、RF信号を非常に高速にデジタル化できる機能も備えています (ダウンコンバージョン後)。そのため、信号をダイナミックにキャプチャできます。これは、WCDMAやWLANなどの拡散スペクトルテクノロジに適しています。連続的な位相情報には、30 MHzの帯域幅が必要になる場合があります。VSAは、PAのRF出力 (1) および出力 (2) とインタフェースします (図10を参照)。

RF関数発生器は連続波 (CW) 発生器とも呼ばれ、正確なRF信号をRFフロントエンドデバイスに入力します。これらの発生器は、通常システムのキャリブレーションに使用されるか、IMDおよびIP3用のマルチトーン生成用や隣接チャンネル干渉として組み合わされます。

ベクトル信号発生器 (VSG) は、RFフロントエンドデバイス開発を行うラボや施設では最も一般的なタイプの発生器です。電源と周波数の両方に制御されたRF信号出力を供給するだけでなく、位相制御出力信号も生成します。これは、通常、スーパーヘテロダインアーキテクチャまたはI/Q変調器アーキテクチャのいずれかを通して行われます。システムキャリブレーション、マルチトーン生成、隣接チャンネル干渉にVSGを使用することもできます。ただし、さらに重要なのは、RFフロントエンドデバイスに変調信号を生成できることです。これは、デバイスを通過した後の信号の変調確度をテストする際に必須です。VSGは、PAのRF入力 (1) および入力 (2) とインタフェースします (図10を参照)。

ベクトルネットワークアナライザ (VNA) は、RFフロントエンドデバイスラボでは他の計測器ほど一般的ではありませんが、一部の測定に重要な機能があります。ほとんどの場合、反射減衰量、挿入損失、VSWRなどの反射および伝送測定に使用されます。相対確度に非常に優れていますが、これは上述の測定にとって重要です。CW発生器およびスペクトラムアナライザとともに外部カプラが使用されることがありますが、VNAと同程度の確度は得られません。

高価な発生器やアナライザを追加するコストを発生させずに、デバイスにより多くのRFチャンネルを追加しようとするときは特に、RFスイッチを使用できます。RF信号の厳格な仕様により、RFフロントエンドデバイステストではメカニカルなスイッチを使用することが最も一般的です。半導体デバイスの進化により、これらをソリッドステートスイッチに置き換えることが可能となり、スイッチングのライフスパンと速度が向上します。

高速デジタルアナライザ/発生器 (HSDIO) では、RFフロントエンドデバイスのモード (CDMAやLTEなどの規格)、周波数帯域、その他の設定変更を制御できます。モバイルデバイスの高度化に伴い、すべてのチップ間で共通の通信プロトコルを提供するMIPIなどの規格が採用されつつあります。HSDIOは、MIPIおよびSPIプロトコルにシンプルなスタティックコマンドまたは高速シリアルコマンドを提供できます。この機能は、デジタルインタフェースが、従来の並列デジタルインタフェースと比べて、より高速なシリアルインタフェースに移行する中で必要性が増します。HSDIOは、PAデバイスのモード/帯域/SPIポートとインタフェースします (図10を参照)。

任意波形発生器 (AWG) はPAのVramp信号を制御します。多くのRF信号は、連続的伝送ではなくバーストするため、信号の正しいプロファイルを生成することが重要です。Vramp制御ライン (図10を参照) はAWGとインタフェースします。Vrampは、PAのゲイン制御プロファイルを担当します。AWGではアナログ波形合成を完全に制御できます。100 MS/秒以上の高速AWGによって、異なる種類のカスタムランププロファイルを簡単に実現できます。

バッテリシミュレータは、RFフロントエンドの主電源用です。モバイルデバイスのPAでは、増幅するこの信号の規格や周波数によっては、この電流が3アンペア以上になる可能性があります。電源のもう1つの重要な要件は、バーストしたRF信号の適切な電力プロファイルを得るための高速過渡応答が可能であることです。図10のVbattは、通常、特にGSMまたは同様のバーストに敏感な信号向けのバッテリシミュレータによって供給されます。

ソースメジャーユニット (SMU) はRFフロントエンドデバイスで一般的な特殊なバッテリ供給です。ナノアンペアや小さな電流範囲でのリードバック機能がある点で標準電源と異なります。また、4つの象限で動作可能で、信号電力のソース機能またはシンク機能を提供します。SMUは、RFフロントエンドデバイスの複数のラインとインタフェースできます。図10では、Vramp、Vdetect、Vbatt、およびモード/帯域/SPIポートとインタフェースして、電流およびラインのパフォーマンスを測定できます。製造テストでは、SMUをHSDIOと組み合わせて、ピンパラメータ測定ユニット (PPMU) と呼ばれる製品に組み込むことができます。このデバイスは、一般的なHSDIO計測器と同じ能力を備えているだけでなく、SMUのような電力および計測機能も備えています。通常、単体ではSMUほど正確ではありませんが、より高密度のチャンネル数を持つことができます。

デジタルマルチメータは、おそらくラボで最も一般的な計測器の1つであり、RFフロントエンドデバイスラボでも使用されます。SMUほど重要ではありませんが、複数ラインにわたる電圧降下や多くの同じ制御ラインおよび監視ラインからの電流漏れを測定できます。デジタルマルチメータは、SMUと同程度の確度の電流および電圧測定を行うことができます。

オシロスコープまたはデジタイザは時間領域測定用です。RFフロントエンドデバイスでは、有益なトラブルシューティングツールであり、特に高サンプリングレート機能は優れています。図10からのVdetectラインは、値が急速に変化するため、デジタイザを使用して計測しています。

パワーメータは、RFフロントエンドデバイスにとって重要です。RF電源の確度は、ラボのこのデバイスから発生します。通常、パワーメータの電源確度は、スペクトラムアナライザやVSAの10倍以上です。異なる種類のアーキテクチャを使用して電力をキャプチャします。また、このアーキテクチャにより、一般に電力範囲は制限されています。しかし、システムキャリブレーションの基準として使用されることが多く、範囲外の測定や高速測定が可能です。RFフロントエンドデバイスは、パワーメータで直接または間接的に特性評価を行い、正しい電力レベル出力を得る必要があります。

RFフロントエンドデバイスラボでは、ロードプルは他の計測器ほど一般的ではありませんが、実世界のシミュレーションでは重要な装置です。通常、PAまで接続されるアンテナのインピーダンスは環境によって異なります。金属構造の近くに置かれたり、車のシートに立てかけられたりします。このような場合、RFフロントエンドデバイスとアンテナ間で調整されたインピーダンスに影響します。すると、これがVSWRの上昇を招き、RFフロントエンドが補正のためにより多くの電力を求め、バッテリが早く尽きることがあります。ロードプルは、RF入力または出力のインピーダンスを調整して、この状態をシミュレーションします。これにより、PAをより強固に設計し、過剰なバッテリプルを避けることができます。

アンプは、多くの場合、RFフロントエンドデバイスの圧縮テストに必要とされる高い電力状態をシミュレーションするために使用されます。ほとんどの発生器は、CWでもVSGでも、出力電力レベルは+10 dBm以下に制限されています。RFフロントエンドデバイスへのより高い電源入力をシミュレーションするには、この信号を+18または+20 dBmの高さまで増幅する必要があります。CWまたはVSGによって生成されたRF信号は、アンプを通過して適切なゲインを出力します。

NI PXI製品使用したRFフロントエンドテスト実施

RFフロントエンドテストで使用される測定、コンポーネント、計測器の理解を深めたところで、PXIベースシステムを使用するとどのように設定されるか見てみましょう。

図12:このシステムは、RFフロントエンドデバイス用に設定されています。

次の製品が、基本的なPXIベースのRFフロントエンドデバイステストを構成します。

  • HSDIO―任意のデジタル制御信号用HSDIO。最大20ラインのSPI、MIPI、I2C、カスタムデジタルおよびスタティックデジタル制御で操作可能
  • AWG―精密なVramp制御を行う16ビット分解能、オンボードスクリプト、およびトリガを備えた任意波形生成器
  • バッテリシミュレータ―RFモバイルデバイステスト用に製造された特殊電源。バーストRF信号に対する超高速遷移応答
  • RFベクトル信号発生器―2 Gから4 Gまでのセルラー信号だけでなく、WLANなどのワイヤレスネットワーク信号をサポートする100 MHz広帯域VSG
  • RFベクトル信号アナライザ―2 Gから4 Gまでのセルラー信号だけでなく、WLANなどのワイヤレスネットワーク信号をサポートする50 MHz広帯域VSA
  • デジタイザ―Vdetect信号や、最大帯域幅43 MHzまでの高速遷移信号をキャプチャする高分解能デジタイザ


図13:この図は、一般的な設定で使用される装置を示しています。

  • RFプリアンプ―最大50 dBのゲインを提供するプログラマブルプリアンプ/アンプ。NI PXIe-5673Eの出力電力を+21 dBmまでブースト可能。これはPAの1 dB圧縮テストに重要。+21 dBmを超える場合、代わりに外部アンプを使用
  • RFスイッチ―発生器およびアナライザチャンネルを切り替える複数あるRFスイッチの1つ (ほとんどのデバイスで複数の帯域がサポートされていますが、RFフロントエンドデバイスへの複数のパスが必要です。複数の発生器とアナライザを使用する代わりに、入出力を変更する高品質スイッチを自動化できます。)

図14:より専門的なテストでは、ソースチューナとロードチューナ (ロードプル) を使用して、非線形動作と入力/出力インピーダンスの変動をテストします。

  • VNA―RFフロントエンドデバイスの挿入損失、反射減衰量、VSWRを測定する2ポートVNA (図14ではVNAの接続は点線で示されています)
  • ソースチューナとロードプル―Maury MicrowaveやFocus Instrumentsなどの企業が製造する個別の他社製計測器

 

PXIフォームファクタ使用したRFフロントエンドテスト緊密トリガタイミング統合

RFフロントエンドテストの重要な側面に、さまざまなテストを実施するのに必要なタイミングとトリガの統合があります。トリガは、PAデバイスのテストで重要な役割を果たします。緊密なトリガ制御がなければ、デバイスはデバイスの電力、Vramp、またはRF信号生成およびキャプチャのずれにより間違った結果を生成します。

たとえば、もう一度図10のPAデバイスを見てみましょう。このデバイスをテストするために、制御と読み取りを同時に行う複数のラインが使用されています。PAのVbattピンに電力を供給する必要があります。バッテリ電源デバイスをシミュレーションしているため、バースト電力であり、RF信号が送信されると発生するようにトリガされます。信号Vrampのゲインも制御する必要がありますが、通常はAWGを使用して正しいランプを生成する必要があります。また、モードと周波数も制御する必要がありますが、これはタイミングを通して制御する必要はありません。最後に、RF入力信号を特定のタイミングシーケンスでバーストさせる必要があります。このすべてを示したのが図15です。

図15:PAテストのトリガ基準図

任意のモジュールのバックプレーンからPXIをトリガできるため、上述のすべてのデバイスと、VSAやデジタイザなどのキャプチャのみのデバイスで同じトリガ基準を共有できます (図16を参照)。代わりに、VSAとデジタイザでは、NI PXIe-5663のI/Q電力トリガ機能を使用して独自のトリガを基準にして、RF信号電源レベルに基づいてキャプチャすることができます。バッファ型データのプレトリガは、対象の信号が信号のランプアップ、プロファイル、ランプダウンとともにキャプチャされるように設定できます。

図16:PXIバックプレーンは、VSGとバッテリシミュレータ間のトリガ接続を示しています。

PXIによる測定時間メリット

PXIを使用すると、従来の計測器よりRFフロントエンドデバイステストの時間を大幅に短縮できます。テスト時間は4つの領域で短縮されます。

  1. 最速で信号を処理する最新の市販プロセッサ
  2. リアルタイムの信号処理と測定を行うためのFPGAテクノロジ
  3. ホストコントローラとの間でデータ移動と低遅延通信を行う高速PCI Expressバックプレーン
  4. システム構成と通信を最適化できる柔軟なソフトウェア

最速信号処理する最新市販プロセッサ

高速CPUのメリットを受ける他のアプリケーションと同様に、PAテストの信号処理にもメリットがあります。RF信号は低周波数信号より信号処理の負荷が高いため、テスト時間が課題になることがあります。信号は、ダウンコンバージョンを介して高周波数から発信されるだけでなく、より広帯域の内容が含まれます。LTEや802.11 acなどの新テクノロジの登場とともに、帯域幅がすぐに80 MHzを超えることがあります。そのため、ADCは200 MS/秒以上でサンプリングする必要があります。信号がデジタル化されると、変調の確度やスペクトル測定用に、そのベースバンドのフォーマットで処理する必要があります (IF信号でデジタルダウンコンバージョンが終了していることが前提)。これには、パルス形状フィルタの除去、チャンネルのデコード、およびスペクトル測定のための復調またはフォーマットが含まれます。200メガサンプルのデータを処理する場合、大量の処理が必要になります。

この処理には、一般にマルチコアプロセッサが使用されます。PXIテストシステムは、組込コントローラまたはリモートMXIを使用した市販PCによるマルチコア処理を行います。マルチコアプロセッサは、クロックレートの上昇に伴いプロセッサから熱が発生する問題の結果として登場しました。水や窒素などのより高度な冷却がないため、マイクロプロセッサのクロックレートは制限する必要があります。PXIは、マルチスレッド処理により並列で計測器を実行し、複合測定を実施することで、複数コアを利用しています。

下の表は、デュアルコアプロセッサからクアッドコアプロセッサへの移行によるテスト時間の差を示しています。これらの測定はGSMおよびEDGE信号用です。

GSM/Edge

PVT

信号タイプ測定の説明NI PXI-8106 Intel T7400 Core 2 DueNI PXIe-8133 Intel i7クアッドコア (6 GB RAM)
GMSKPVT時間 (1回平均)

9.7 ms

7 ms

PVT時間 (10回平均)

56 ms

52 ms

平均PVT (10回平均)

0.28 dBm

標準偏差PVT (10回平均)

0.009 dB

 

ORFS (ACP)

信号タイプ測定の説明NI PXI-8106 Intel T7400 Core 2 DueNI PXIe-8133 Intel i7クアッドコア (6 GB RAM)
GMSKORFS時間 (1回平均)

14 ms[i]

11 ms

ORFS時間 (10回平均)

90 ms2

77 ms

平均ORFS (10回平均)

-36 dBc @ 200 kHz

-41 dBc @ 250 kHz

-71 dBc @ 400 kHz

-80 dBc @ 600 kHz

-81 dBc @ 1,200 kHz

標準偏差ORFS (10回平均)

0.3 dB

 

PFER

信号タイプ測定の説明NI PXI-8106 Intel T7400 Core 2 DueNI PXIe-8133 Intel i7クアッドコア (6GB RAM)
GMSKPFER時間 (1回平均)

11 ms

9 ms

PFER時間 (10回平均)

57 ms

53 ms

平均PFER (10回平均)

RMS位相誤差0.195度

Pk位相誤差0.48度

標準偏差PFER (10回平均)

0.014 dB

 

EVM

信号タイプ測定の説明NI PXI-8106 Intel T7400 Core 2 DueNI PXIe-8133 Intel i7クアッドコア (6GB RAM)
8PSKEVM時間 (1回平均)

9.4 ms

7 ms

EVM時間 (10回平均)

53 ms

53 ms

平均EVM (10回平均)

RMS EVM 0.55 %

Pk EVM 1.2 %

標準偏差EVM (10回平均)

0.1 dB

 

NI TestStandアプリケーションは、並列およびマルチスレッドテスト用にPAテストシステムを設定する優れた方法です。キュー、ノーティファイア、ランデブーなどの高度な同期機能だけでなく、利用可能なテスト装置で並列テストを最適化するのに役立つスケジュール機能も搭載しています。一度に複数のPAをテストする場合は、NI TestStandがハードウェアの切り替え管理に役立ちます。

複合測定では、マルチコアプロセッサのメリットを活かすことができます。測定ごとにI/Qデータを取得して解析するというキュー方式で測定を実行するのではなく、データ収集を1回行い、すべての測定用にデータを同時に解析します。図17は、GSM信号におけるこの例を示しています。PVT、PFER、およびORFS用に別々に収集を行わず、収集を1度行い、マルチコアプロセッサを使用してI/Qデータを並列処理します。


図17:GSM信号のコンポジット測定

複合測定を行うと、時間を大幅に短縮できます。前に見たGSMとEDGEの測定に戻りましょう。個別に収集と測定を行う代わりに、1度の複合測定で同じテストを実施します。下の表は結果を示しています。

GSM:ORFS、PVT、およびPFER

EDGE:ORFS、PVT、およびEVM

信号タイプ測定の説明NI PXI-8106 Intel T7400 Core 2 DueNI PXIe-8133 Intel i7クアッドコア (6 GB RAM)
GMSK複合時間 (1回平均)14 ms211 ms2
GMSK複合時間 (10回平均)110 ms277 ms2
8PSK複合時間 (1回平均)14 ms211 ms2
8PSK複合時間 (10回平均)106 ms274 ms2

GSM (GMSK変調) を調べる場合、10回平均の個々のテストに要する合計テスト時間は52 ms (PVT) + 77 ms (ORFS) + 53 ms (PFER)、つまり182 msです。それと比較すると、複合測定の実行時間は77 msで、テスト時間を136パーセント短縮できます。

リアルタイム信号処理および測定FPGAテクノロジ

RFテスト時間の短縮に役立ち、さらにその短縮を加速するもう1つの領域は、フィールドプログラマブルゲートアレイ (FPGA) テクノロジです。今日のFPGAは、エネルギー効率の高い柔軟なパッケージでリアルタイムの信号処理を行います。ワイヤレスの世界では、データの信号処理にこのテクノロジは重要です。この良い例がオンボード信号処理、つまりOSPテクノロジです。NI 5663 VSA用のデジタイザとNI 5673 VSG用のAWGではOSPテクノロジが採用されています。これらは、FPGAでIFからベースバンドへ、またはベースバンドからIFへの直接変換を行いますが、通常はホストPCで負荷の高い処理が必要です。

より一般的なOSPアプリケーションのほかにも、現在ではLabVIEW FPGAモジュールのようなツールを使用して、FPGAで測定を行うようにFPGAを設定することもできます。前に説明したGSM信号では、規格を見ると、バースト信号の長さは5 msです。信号全体を並列で処理することもできるので、マルチコアフローティングプロセッサで行うように同様の複合測定を実行することができます。単一のバーストキャプチャのテスト時間を11 msからリアルタイムキャプチャの5 msに効果的に短縮できます。

ホストコントローラデータ移動遅延通信行う高速PCI Expressバックプレーン

信号処理後、テスト時間を短縮するうえで次に最も重要となる要因は、データ移動のための高速バスです。より短いデータバーストの場合、高速バスと低速バスの違いはそれほど明確ではありません。しかし、LTEのような信号用にデータ収集サイズを大きくすると、テスト時間に影響を及ぼし始めます。

PXI計測確度速度提供

携帯電話のデュプレクサ、PA、トランシーバなどのRFフロントエンドコンポーネントをテストするには、高忠実度テスト装置が必要です。通常、従来のボックス型計測器は、確度の高さから特性評価に使用されていますが、これらの計測器では、製造テスト環境で求められる速度を実現できません。大型のアイロンテスタは高速で、並列テストが可能ですが、ボックス型計測器の確度およびデバッグ機能がありません。PXI計測器は特性評価ラボで必要とされる確度と、製造テストエンジニアが求める速度を備えています。PXI計測器はモジュール式のため、RFアナライザ、発生器、デジタル発生器/アナライザ、電源など複数の信号計測器を混合して使用できます。これらの計測器を緊密に同期させて、テスト速度を改善し、確度の高い測定を実行できます。さらに、PXIで使用されているPCIテクノロジを使用すれば、ソフトウェアの制約なく、計測器間でデータを共有できます。