PXIデジタルパターン計測器は、半導体テストエンジニアが普段見慣れている機能やプログラミング手段を通じて、PXIプラットフォーム上でATE (Automated Test Equipment: 自動テスト装置) と同等以上のデジタル性能を提供します。このような機能は、計測器のハードウェア面だけでなく、NI-Digital Pattern DriverやDigital Pattern Editorなどのソフトウェアにも支えられています。半導体テストに従事するエンジニアにとって、デジタルパターン計測器のユーザエクスペリエンスは、NI-HSDIOデバイスドライバを使用する従来のNI PXIデジタル波形計測器よりも一段と洗練されたものとなります。これは、前述のように、デジタルパターン計測器の使い勝手が半導体テストエンジニアになじみの深いものを採用している一方、PXIデジタル波形計測器は半導体テストの現場で慣習的に使用されるものとは違ったプログラミング方式に基づくためです。そのため、デジタルパターン計測器とデジタル波形計測器の間には、仕様やテストプログラム開発アプローチの面で留意しておくべき差異があります。本ドキュメントでは、特にPPMU (Per-Pin Parametric Measurement Unit: ピンごとのパラメトリック計測ユニット) を備えた24チャンネル搭載のPXIe-6556およびPXIe-6555デジタル波形計測器を使用しているお客様が、テストプログラムをPXIe-6570デジタルパターン計測器に移行する場合の留意点をまとめています。
PXIe-6555およびPXIe-6556デジタル波形計測器は、販売終了を間近に控えています。お客様のアプリケーションでこれらのモジュールを利用している場合、アプリケーションの要件に応じてPXIe-6570デジタルパターン計測器または別のデジタル波形計測器への移行をご検討ください。以降のセクションを参照することで、ご利用のアプリケーションにとって最適な移行の選択肢を判断していただけます。
PXIe-6555およびPXIe-6556デジタル波形計測器は、PPMUと能動負荷 (アクティブロード) 機能を搭載しています。この機能を備えたデジタル波形計測器はPXIe-6555とPXIe-6556のみです。そのため、PPMUや能動負荷が必要なアプリケーションをご利用の場合は、これらの機能を搭載したPXIe-6570デジタルパターン計測器への移行をご検討ください。
PXIe-6555およびPXIe-6556デジタル波形計測器は、最大周波数200 MHzの固定サンプルクロックに基づいてデータを集録および生成します。PXIe-6570デジタルパターン計測器は、サンプルではなくベクトル単位の強力なタイミング制御を利用しているため、ドライブエッジと比較エッジを柔軟かつきわめて正確に構成することが可能です。PXIe-6570の最小ベクトル周期は10ナノ秒ですから、Return-to-Low (RL) またはReturn-to-High (RH) のドライブフォーマットを使用して100 MHzクロックを生成できます。データピンでは、Non-Return (NR) のドライブフォーマットを使用するのが一般的で、ビットレートは最大100 Mbpsとなります (100 MHzまでシングルデータレートのインタフェースで問題なく動作します)。DDR (デュアルデータレート) インタフェースの場合、データピンはクロックピンと同じ頻度で更新されます。したがって、100 MHzのNon-Return (NR) ドライブフォーマットでは、50 MHzのDDRインタフェースとなります。さらに、現時点で比較ストローブは10ナノ秒周期で1回実行されます。つまり、PXIe-6570の場合、データの比較は100 Mbpsに制限されます。一方、PXIe-6555およびPXIe-6556は、200 Mbpsでデータを比較する能力があります。NIは近い将来PXIe-6570のデータレートを高速化する予定ですが、お客様のアプリケーションにとって上記のデータレートが懸念材料となる場合は、NI担当者までお問い合わせください。デジタル波形計測器とデジタルパターン計測器の間でタイミングの取り方がどのように異なるか、その違いについて、このドキュメントの「サンプルレートからタイムセットへ」セクションに詳しい説明があります。
複数台のPXIe-6555またはPXIe-6556を同期して32ピン超のDUTに接続するようなアプリケーションでは、PXIe-6570への移行時に追加のキャリブレーション手順を実行して、計測器間のピンアライメントを確保することが必須になる場合があります。
PXIe-6544とPXIe-6545は、それぞれ100 MHzと200 MHzで動作する32ピンのデジタル計測器です。シングルエンドインタフェースを持つ多くの標準電圧レベルに対応します。両計測器とも、バンクごとのデータデスキューおよびデータ遅延に対応しています。これによって、DUTとの接続、プロトコルのテスト、ケーブルその他の障害によって必要となるスキュー調整が可能です。
PXIe-6547およびPXIe-6548は32ピンの100 MHzおよび200 MHzのデジタル波形計測器です。1.2 V~3.3 Vの間で高電圧レベルを生成し、最大5 Vまでの入力保護機能を備えています。PXIe-6547およびPXIe-6548カードもまたバンクごとのデータデスキューおよびデータ遅延に対応し、DUTとの接続、プロトコルのテスト、ケーブルなどの障害によって必要となるスキュー調整が可能です。
以下は、PXIe-6555およびPXIe-6556を、PXIe-6570デジタルパターン計測器、およびPXIe-6544、PXIe-6545、PXIe-6547、PXIe-6548デジタル波形計測器と比較した表です。
PXIe-6555/6 | PXIe-6570 | PXIe-6544 | PXIe-6545 | PXIe-6547 | PXIe-6548 | |
計測器のタイプ | デジタル波形 | デジタルパターン | デジタル波形 | デジタル波形 | ||
ドライバ | NI-HSDIO | NI-Digital Pattern | NI-HSDIO | NI-HSDIO | ||
双方向チャンネルの数 | 24 | 32 | 32 | 32 | ||
論理レベルと範囲 | -2 V~7 V | -2 V~6 V | 1.2 V、1.5 V、1.8 V、2.5 V、3.3 V | 1.2 V~3.3 V | ||
プログラム可能 | プログラム可能 | 選択可能 | プログラム可能 | |||
高度過電圧保護 | なし | あり | なし | なし | ||
最大データレート | 200 Mbps | 100 Mbps | 100 Mbps | 200 Mbps | DDRで200 Mbps | DDRで400 Mbps |
データ形式 | Non-Return (NR) | Non-Return (NR) Return-to-Low (RL) Return-to-High (RH) Surround by Complement (SBC) | Non-Return (NR) | Non-Return (NR) | ||
ハードウェア比較 | あり | あり | なし | あり | ||
PPMU機能 | あり | あり | なし | なし | ||
能動負荷機能 | あり | あり | なし | なし |
PXIe-6555やPXIe-6556などのデジタル波形計測器では、生成または比較するデータを「波形」というパラダイムによって定義します。波形パラダイムにおいては、出力値および予想される入力値のサンプリングレートは固定されているため、波形の始めから終わりまで同一周期でサンプリングを行います。
図1.デジタル波形計測器は、等間隔でサンプリングする波形データ形式を使用します。
一方、PXIe-6570デジタルパターン計測器では、波形に基づくパラダイムから離れて「パターン」に基づくパラダイムを採用しています。パターンでは、入力値と出力値はサンプリングではなくベクトルで定義され、それぞれがベクトル単位の固有のタイミング特性を有します。これによって、ドライブ値と比較値をより自在に制御することが可能です。
図2.デジタルパターン計測器は、複数のパターンをバーストします。その際、さまざまなタイミング構成やレベル構成を利用できますが、これらはデータとは別に定義することが可能です。
パターンの詳細については「デジタルパターンヘルプ」ドキュメントを参照してください。
デジタル波形計測器では、サンプルクロックのエッジを利用して、ビットの遷移を定義し、状態を比較します。ただし、これはデジタルデータのオーバーサンプリングにつながります。波形に対するタイミングの分解能を高めるために、クロック周期ごとに複数のデータポイントを配置することで、波形ファイルのサイズが大きくなるからです。このため、メモリのロードや大きなファイルの管理に余計な時間がかかり、アプリケーション構築の際の課題となります。こうしたオーバーサンプリングでは、計測器が生成可能な上限のクロックタイム速度に制約されるため、波形に配置するエッジの分解能は粗くなってしまいます。
図3.デジタル波形計測器では、あらかじめ決められたクロックエッジでのみライン値の変更をアサートすることができます。これに対してデジタルパターン計測器では、サイクルごとにベクトル内のデータ遷移を任意の位置に設定することができます。
デジタルパターン計測器ではタイムセットの概念が導入され、柔軟かつ高分解能のタイミング構成が可能になっています。個々のタイムセットは、すべてのピンに対して一律にベクトル周期を定義し、さらにドライブフォーマット、ドライブエッジ、および比較エッジをピン単位で構成することが可能です (PXIe-6570の場合、エッジ配置分解能は39.0625ピコ秒)。パターン内の各ベクトルは、定義済みのタイムセットと各ピンのデータ値から構成されます。データ定義とタイミング定義を分離することで、より柔軟でモジュール性の高いパターン作成が可能となり、必要なファイルサイズもデジタル波形計測器に比べるとわずかなものです。
デジタルパターン計測器の仕様のうち、とりわけ重要なのがベクトルレートです。PXIe-6570の最大ベクトルレートは100 MHzで、これは最小ベクトル周期10ナノ秒に相当します。この仕様は、デジタル波形計測器で定義される最大クロックレートと機能的に同等ではありません。デジタル波形計測器では、定義されたサンプルクロックレートでしかNon-Return (NR) の生成と比較が行えないのに対し、デジタルパターン計測器では、1つのベクトル周期内にドライブエッジおよび比較エッジを柔軟に配置できるからです。たとえば、サンプルクロックレートが200 MHzのデジタル波形計測器では、ピンのHigh/Lowの状態を5ナノ秒周期で変更できます。このとき、データピンが生成できるクロック信号は最大100 MHz (5ナノ秒間のLow、5ナノ秒間のHigh) となります。一方、デジタルパターン計測器にはReturn-to-High (RH) とReturn-to-Low (RL) のドライブフォーマットがあり、1つのベクトル周期で2ビットを駆動できます。また、これによりPXIe-6570の1つのピンから最大100 MHzのクロック信号を生成可能です。この違いを図4に示します。この図ではPXIe-6555およびPXIe-6556とPXIe-6570のデータピンで生成可能な最大クロックを比較しています。
図4.PXIe-6555およびPXIe-6556は、200 MHzのサンプリングレートで、DUTに対して1つのデータピン上に100 MHzのクロック信号を生成することができます。PXIe-6570もまた100 MHzのベクトルレートでDUTに対して100 MHzのサンプルクロック信号を生成可能ですが、これはデジタルパターン計測器がドライブフォーマットを柔軟に定義できるという特徴を活かしています。
このタイミング動作の違いにより、PXIe-6545、PXIe-6548、PXIe-6555、およびPXIe-6556の各デジタル波形計測器は、PXIe-6570より高いレートでデジタルデータを生成し、集録できます。NIはPXIe-6570のデータレートを高速化する予定ですが、お客様のアプリケーションが現行より高いデータレートを要件とする場合は、NI担当者までお問い合わせください。
デジタルパターン計測器のタイミングの詳細については「デジタルパターンヘルプ」ドキュメントを参照してください。
デジタル波形計測器では、NI-HSDIOドライバを使って計測器の各種機能をプログラム的に制御します。ドライバのフレームワークは、デュアルセッションベースのアーキテクチャで構成され、ユーザは計測器ごとに生成セッションと集録セッションを1つずつ作成してデバイスのデジタルI/Oにアクセスします。このドライバはLabVIEW、C、または.NETのラッパーでサポートされています。
図5.NI-HSDIO計測器ドライバとNI-Digital Pattern Driverは多くの点で異なりますが、最大の違いの1つはNI-HSDIOでは集録と生成が個別のタスクを必要とする点です。NI-Digital Pattern Driverを使用すると、1つのパターンに集録と生成を含めることができます。
デジタルパターン計測器では、NI-Digital Pattern Driverを使って各種機能をプログラム的に制御します。このドライバは、NI-HSDIOと互換ではありません。つまり、デジタル波形計測器からデジタルパターン計測器へ移行する際に、既存のコードを修正して新規にこのAPIを組み込む必要があります。NI-Digital Pattern Driverでは1台の計測器に1セッションのみ存在します。1つのセッションで、ユーザはドライブと比較の両ステートを包含する複数のパターンをプログラム的にバーストすることが可能です。NI-Digital Pattern Driverは、LabVIEW、.NET、およびCの各言語に対応します。
デジタル波形デバイスの場合、NI-HSDIO APIを使ってサンプリングレート、データ遅延、電圧レベルなどのセッション構成を定義し、コード実行時に計測器に適用します。この構成方法では、設定値の変更にコードの修正が必要となるため、ユーザはクラスを使用するか、独自にファイルタイプを構築して、VIアーキテクチャ全体にわたって設定値を渡す場合が多くなります。
デジタルパターン計測器では、よりモジュール性の高い方法で構成することが可能です。計測器の構成をシートと呼ばれる外部ファイルに保存し、これをデジタルパターン計測器にロードするのです。シートは、Digital Pattern Editor (DPE) で作成し、編集できます。これには、タイムセットを定義するタイミングシート、ドライブ電圧と比較電圧を定義するレベルシート、他のシートで利用可能なユーザ定義変数を定めた仕様シートなどがあります。これらのシートはDPEによって手動でロードすることも、NI-Digital APIでプログラム的にロードすることもできます。この方法では、構成内容を転送して複数の構成を管理し、さらにデバッグ構成をDPEから自分のアプリケーション開発環境へと移植することも簡単です。
デジタル波形計測器の場合、計測器のチャンネルはNI-HSDIO APIを通じてコード内部で定義および構成されます。これらのチャンネルは、計測器を中心としたチャンネル番号によって参照されます。このときユーザは、アプリケーション全体を通じて、どの計測器チャンネルがどのDUTピンに接続されるのかを把握しておく必要があります。また、計測器を中心としたチャンネル定義では、将来計測器を交換したりアップグレードしたりする際に、コードの記述内容を変更する必要が出てきます。
デジタルパターン計測器の場合、ユーザによる構成が可能なピンマップファイルを使用して、論理的なピン名とピングループをアプリケーションにおいて特定の計測器チャンネルにマッピングします。このピンマップファイルを複数の計測器にわたって展開することでユーザは、計測器のチャンネル番号ではなく抽象化されて直観的な認識が可能なDUT名とシステムピン名を使って作業できるようになります。ピンマップの保存先およびロード先となる計測器の台数に制限はありません。複数のピンマップファイルを管理することで、プログラム的に構成可能な環境が生み出され、アプリケーションコードの修正を最小限に抑えながら多種多様なDUTに対応することができます。
デジタル波形計測器では、計測器を中心としたアプローチで電圧レベルを定義します。たとえば、VIHとVILはデジタル波形計測器への入力電圧を比較する際のしきい値であるHighとLowの定義であり、VOHとVOLは計測器が駆動する電圧出力レベルの定義です。
図6.デジタル波形計測器のチャンネルドライバやコンパレータが使用するレベルは、計測器をテストプログラムの中心とみなしています。
デジタルパターン計測器では、計測器の電圧レベルの定義方法を、DUTを中心とする方法へとシフトしています。NI-Digital Pattern DriverおよびDigital Pattern Editorでは、VIHとVILによってDUTのしきい値を定義し、計測器から駆動されるHighとLowを決定します。同様に、VOHとVOLはDUTから出力されるHighとLowの電圧を定義し、デジタルパターン計測器によってこのデータが予測値と適切に比較されます。DUTを中心とするアプローチによって、ユーザはDUTのデータシートと計測器の構成の間で一貫した定義を保つことができます。こうして、テストエンジニアはDUTデータシートに記載されているVIH、VIL、VOH、VOLの各値をそのまま利用できるため、計測器を中心とする定義に変換する必要がありません。
図7.デジタルパターン計測器のチャンネルドライバやコンパレータによって利用されるレベルは、計測器ではなくDUTを参照します。
デジタル波形計測器では、スクリプトを使って非線形、動的、または反復的なI/Oを実行します。スクリプト言語の利用によって、複数の波形をシーケンス化してモジュール性を高め、反復可能な波形を循環させてメモリを最適化し、論理とトリガに基づくダイナミックな動作による柔軟性を実現します。ただし、スクリプトは波形とは別に定義されるため、結果としてデジタル波形計測器でサポートされる動作が制約を受ける場合があります。
図8.デジタル波形計測器は、スクリプトを使用して論理ループによるデジタル波形を生成します。デジタルパターン計測器ではオペコードの使用によって、論理パターンのバースト実行能力が大幅に拡張されています。
デジタルパターン計測器は、スクリプトではなくオペコードを使用することで高度なI/O動作を実現します。オペコードを使えばループ、リンク、条件付き分岐、ハンドシェイク (シーケンサフラグとレジスタ) などを実行できます。さらに、デジタルソースオペコードは動的な波形スクリプト機能に代わる拡張機能です。オペコードはベクトル単位で構成できるため、デジタル波形計測器のスクリプトと比較して、より柔軟性の高い高機能のI/O制御が可能です。
デジタル波形計測器では、生成と集録という2つの処理を通じてすべてのデジタルI/Oを実行します。生成セッションは波形ファイルに基づいて計測器からさまざまな値を出力し、集録セッションは計測器が受信したデジタルデータを解析または保存します。刺激/応答テストなどの双方向処理では、生成セッションと集録セッションの両方をアプリケーションに構成する必要があります。
デジタルパターン計測器の場合、計測器からの入力と出力の両方とも1つのセッションで管理されます。計測器の動作は、ピンごとにベクトル単位で構成したパターンデータによって定義されます。このパターンには、ドライブ値 (0、1、D) または比較値 (L、H、M、V、X) を格納できます。ドライバおよびパターンファイルで事前に構成したキャプチャ波形を使って、実行時にデータをキャプチャすることもできます。
Digital Waveform Editor (DWE) アプリケーションでは、テキストの編集やプログラムによる作成ではなく、ユーザインタフェースを使用して波形ファイルを作成および編集します。Digital Waveform Editor (DWE) は単純な波形を編集することが目的であり、DWEからユーザが直接ハードウェアを操作することはできません。したがって、ユーザはDWEから波形をエクスポートし、NI-HSDIO APIを使って開発環境にこの波形をロードする必要があります。
図9.Digital Waveform Editorを使ってユーザは、グラフィカルな環境でデジタル波形データを構築し、そのデータをNI-HSDIOドライバで利用可能なファイル形式にエクスポートすることができます。
デジタルパターン計測器には、DWEよりも包括的な機能を持つアプリケーションソフトウェア環境としてDigital Pattern Editor (DPE) が付属します。DPEでは、パターンデータの編集だけでなく、以下のようなさまざまなコードを開発し、デバッグすることが可能です。
図10.Digital Pattern Editorは、構成ファイルを開発し、編集するための統合ソフトウェア環境です。構成ファイルには、ピンマップをはじめ、仕様やレベル、デジタルパターンデータ、タイミングシートなどがあります。このほかにも、デジタルスコープやShmooなどのデバッグおよびマージニング用ツールが付属します。
デジタル波形計測器は、複数のファイル形式で波形データをインポートおよびエクスポートできます。階層型波形ファイル (.hws)、テキストファイル (.txt)、バイナリファイル (.bin) などのファイル形式が利用可能です。こうした形式には一貫性がなく、多くの場合、タイミング情報などのメタデータを抽出するのが困難です。
デジタルパターン計測器では、パターンデータを単一のコンパイル済みデジタルパターンファイル (.digipat) に保存します。このファイルはDigital Pattern Editorで直接編集することも、NI-Digital APIを使って計測器にロードすることもできます。Digital Pattern Editorは可読性の高いASCIIテキスト形式 (.digipatsrc) でのインポートとエクスポートも可能ですから、プログラムによる柔軟なパターン作成や他のテキストベース形式からの移行に便利です。
TSSI社のTD-SCANツールを使用すれば、業界標準のWGLおよびSTILパターンファイルを変換してNI-HSDIOドライバで利用することが可能です。ただし、PXIe-6555/6556は設計上、柔軟なタイミングフォーマットを持たないため、こうした変換には制限がありました。
NI-Digitalドライバはテキストベースの.digipatsrcファイルをインポートできるため、いくつかのデジタルパターンファイル形式をNIデジタルパターン計測器で使用できるように変換するサードパーティ製コンバータやEDAツールを開発することが可能です。
Digital Waveform Editorで作成した波形ファイル (.hws、.bin、.txt) をアプリケーションですでに使用中であれば、以下のツールを使ってDigital Pattern EditorおよびNI-Digitalドライバで使用できるファイルにこれらを変換することができます。
ここではPXIe-6555とPXIe-6556、PXIe-6570の主な仕様を比較します。
仕様 | PXIe-6555および PXIe-6556 | PXIe-6570 |
ピンエレクトロニクス | DCL: -2~+7 V、35 mA PPMU: -2~+7 V、32 mA 能動負荷:24 mA | DCL: -2~+6 V、32 mA PPMU: -2~+6 V、32 mA 能動負荷:24 mA |
チャンネル数 | 24チャンネル | 32チャンネル (STS-Dxで最大256チャンネルをキャリブレーション可) |
クロックレート1 | 200 MHz | 100 MHz |
データ周波数2 | 100 MHz | 100 MHz (RL、RH、NR)、50 MHz (SBC) |
タイミング | 800 Hz~200 MHz <0.1 Hzの周期分解能 固定タイムベース 5 ns (ナノ秒) のエッジ配置分解能 | 25 kHz~100 MHz 38 fs (フェムト秒) のベクトル周期分解能 31のタイミングセット、サイクルごとの調整 39.0625 ps (ピコ秒) のエッジ配置分解能 |
パターンフォーマット | Non-Return (NR) | Non-Return (NR)、Return-to-Low (RL)、Return-to-High (RH)、Surround by Complement (SBC) |
メモリ深度3 | チャンネルあたり最大64 Mbit | チャンネルあたり128 Mベクトル |
PPMUセンス | ローカルおよびリモートセンス | ローカルセンス |
PFIライン | PPMU対応2ライン、高速2ライン、クロック用2ライン、高駆動強度8ライン | なし |
1 クロックレートは、計測器に構成可能な最大クロック周波数です。
2 データ周波数は、計測器のチャンネル/ピンから出力されるデータの物理周波数です。6556では最大データ周波数はクロックレートの半分です。6570ではデータフォーマットにより異なります。Return-toデータフォーマットであれば、100 MHzのデジタル信号をバーストできますが、Non-Return (NR) やSurround by Complement (SBC) データフォーマットではクロックレートの半分のレートでデジタル信号をバーストすることになります。
3 6556のメモリ深度はサンプル数を単位としていますが、データ幅構成と計測器購入時のメモリオプションによって異なる場合があります。6570のメモリ深度はベクトル数を単位としており、すべてのオプションおよび構成で常に128 Mベクトルです。
デジタル波形計測器用の既存のケーブルやアクセサリは、デジタルパターン計測器とも電気的な互換性があります。 この電気的な互換性により、既存のSHC68-C68-D4ケーブル、フライングリード、端子台アクセサリなどをアプリケーションで再利用できます。 メモ:各アクセサリのラベルは、お使いのデジタルパターン計測器上のピンと完全に一致しない場合があります。
ポゴピンケーブル (例外): NI半導体テストシステム (STS) では、PXIe-6556 DXポゴピンケーブルとPXIe-6570 DXポゴピンケーブルの間に互換性がありません。PXIe-6570モジュールにはPXIe-6570 DXケーブルを使用する必要があります。
DUTインタフェースボード (DIB):以下の2つの条件を満たせば、PXIe-6556 STSアプリケーションのDIBをPXIe-6570で使用することが可能です。