Hyundai Motor社、自動車ノイズ探査ポータブルサウンドカメラ開発車両品質向上実現

Kang-Duck Ih、Hyundai Motor Group

「NIハードウェアソフトウェア使用することで、当社競合他社よりはるかに早い時期ポータブルサウンドカメラ開発しました。これによって、お客様さらに上質車両届けできるもの考えます。」

- Kang-Duck Ih, Hyundai Motor Group

課題:

Hyundai社製車両のために、BSR (Buzz, Squeak, Rattle) と呼ばれる不快な過渡ノイズの発生源を視覚化し、特定するためのポータブルシステムを製作する。

ソリューション:

NI LabVIEWシステム開発ソフトウェアを使って、ハンドヘルドサウンドカメラを開発する。このサウンドカメラは、MEMS (微小電気機械システム) とFPGAテクノロジを利用してノイズの発生源をリアルタイムで特定し、表示することで、画像アップデートレートの向上と、デバイスの軽量化を実現した。

作成者:

Kang-Duck Ih - Hyundai Motor Group
Youngkey K. Kim - SM Instruments Co., Ltd.

 

 

BSR (Buzz, Squeak, Rattle) として知られる可聴領域の過渡的なノイズがあります。消費者は、こうしたノイズが自分の自動車からは発生しないことを望んでいます。J.D. パワーの初期品質調査 (IQS) などでも明らかなように、これらのノイズは顧客満足度に影響を与えます。この調査で、Hyundai社製自動車のいくつかの車種は最高の評価を受けています。これらのノイズの原因は、可動部品間の衝突や摩擦です。ブーンという音 (Buzz) は、衝撃によって誘発された短いノイズで、共振による高周波成分を伴います。キーキーという音 (Squeak) の多くは、金属と金属が接触して直線運動が起こったとき、またはゴムが金属製プーリに押しつけられたときに発生します。ガタガタという音 (Rattle) が起こるのは、車両が動いているとき、またはエンジンがかかったまま停車しているときです。このガタガタという音は、オーディオスピーカが低周波で強力な音を発するときに生じる場合があります。このような問題の解決に向けて採るべき最初のステップはノイズ源の特定ですが、難しい場合があります。 

 

 

音響ビームフォーミングでは、音響アレイを使ってノイズ源をマッピングします。これは、サウンドカメラなどのマイクロホンアレイを音が通過する際に生じる遅延時間を利用して、音の発生方向を判別するものです。サウンドカメラは、色彩化した等高線によって音を視覚化します。これは、サーマルカメラが温度を視覚化する方法と類似しています。ビームフォーミング方式を採用するマイクロホンアレイは、ノイズ源の位置を視覚的に判定します。このため、BSRノイズの検出用デバイスとして最適です。市販のビームフォーミングデバイスのなかには、アレイからの信号をノイズの大小によって等高線に変換するものがいくつかあります。これらのデバイスは複数のカメラを統合し、等高線を光学画像に重ね合わせることにより、ノイズ源の位置を簡素化して表示します。また、1秒あたり複数枚のノイズ画像を撮影して、ノイズ動画を作成します。通常、ノイズの画像や動画は、周波数レンジが高いほどその品質が向上します。撮影パフォーマンスがノイズの波長に反比例するからです。

 

 

デバイスによっては、ノイズ源の特定は難しい課題です。まず、デバイスは過渡ノイズをキャプチャするために高速で応答する必要があります。ほとんどの場合、BSRノイズの発生は不規則かつ急速です。発生後、数ミリ秒で消滅するノイズもあります。次に、このアプリケーションでは軽量のデバイスを必要としていました。対象となるBSRノイズのほとんどが、乗用車の内部で発生し、体感されるものです。そのため、車内での使用に適した小型で携帯可能なデバイスを求めていたのです。ただ、マイクロホンアレイのサイズは、特に低い周波数レンジにおいて、画像の解像度に比例して大きくなるため、小型ビームフォーミングデバイスの製作は簡単ではありませんでした。そこで、当社はこのポータブルビームフォーマをBSRノイズ向けに最適化しました。BSRノイズの大半は300 Hz~8 kHz帯で発生するため、高い周波数レンジで小型アレイを利用することが効果的であったので、携帯に適したものにすることができたのです。 

 

 

ノイズ源の特定用に開発した最初のシステムは、アナログマイクロホンが30~48チャンネルあるスパイラル型アレイで、直径は最大85 cm (34 in.) でした。データ収集には、30チャンネルバージョンの場合、NI 9234ダイナミック信号収集 (DSA) モジュールをNI CompactDAQシステムで使用し、48チャンネルバージョンの場合、NI PXIe-4497 DSAモジュールを使用しました。サウンドカメラアプリケーションの開発には、LabVIEWと、リアルタイム表示が可能な音質測定機能付きのNI Sound and Vibration Measurement Suiteを使用しました。大型のアレイは、50 Hzまでの、BSRノイズ源とノイズ/振動/ハーシュネス (NVH) の特定の両方に適していました。サウンドカメラは、これまでもさまざまなアプリケーションで利用されてきました。たとえば、通過時タイヤ騒音の視覚化やスピーカに起因するドアパネルノイズの視覚化があります。

 

 

信号処理デバイスの進歩が目覚ましいことから、当社のビームフォーミングシステムも狭い空間でのBSRノイズの検出に適した軽量化を目指して再設計し、MEMSマイクロホンとFPGAテクノロジを使って、Hyundaiのニーズに応えました。  MEMSマイクロホンの性能は、携帯電話などの家電製品での利用によって向上しています。現在では大変信頼性が高く、価格も手頃であり、300 Hz~8 kHzという人間の声が属する周波数レンジでの平坦な応答が可能です。この300 Hz~8 kHz帯は、BSRノイズで主に対象とする周波数レンジです。デジタルMEMSマイクロホンは、音響トランスデューサ、プリアンプ、シグマデルタ型コンバータを単一のチップに統合したものです。このチップは、アナログ信号をデジタルパルス列に変換します。そのため、私達は計測機能から多くの部分を取り除き、システムのサイズと重量を減らした上で、高いレベルのパフォーマンスを維持することができました。 

 

当社は、LabVIEW FPGAモジュールを使ってアプリケーションを移植し、演算負荷の高いビームフォーミングアルゴリズムを変換してNI Single-Board RIOコントローラのFPGA上で実行しました。この結果、さらにサイズ、コスト、携帯性を最適化することができました。また、これにより、信号調節、データ収集、フィルタ処理、ビームフォーミングを1つのチップに統合し、データ収集ハードウェアをFPGAの処理装置に直接接続できるようになったため、レイテンシも最小限に抑えることができました。このFPGAは超並列処理によって、サイクルあたり数百個の処理を実行できます。これはPCの演算能力を上回る性能です。 

 

 

重さ2 kg (5 lb) 未満のこのシステムは、携帯性と耐久性が向上しています。マイクロホンアレイとサウンドカメラを一体型の筐体にまとめ、背面3箇所にハンドルを付けたデザインのため、片手でも両手でも安定した操作が可能です。本体にすべてのセンサを搭載してケーブル配線を統合したため、従来のシステムと比べると、サイズが60パーセント縮小され、重量が70パーセント軽くなっています。

 

コンパクトで軽量という、このシステムの特長を生かして、ユーザは狭い空間でも車内と車外で発生するさまざまなノイズ源を対話的に探索できます。また、統合型の設計によって、セットアップの時間も大幅に短縮されています。秒あたりの画像アップデートレートが高いため、このシステムは過渡ノイズを効果的にキャプチャして表示します。BSRノイズが許されないヒュンダイ・ジェネシスなど、数種類の新型高級車のテストで使用されています。

 

 

 

作成情報:

YoungkeyK.Kim
SM Instruments Co., Ltd.
DIREC 302, Taplipdong 697, Yusunggu
大田 (テジョン) 305-701
韓国
youngkey@smins.co.kr

 

作成情報:

Kang-Duck Ih
Hyundai Motor Group

 

 

NIパートナーは、日本アライアンスプログラムに参加しているシステムインテグレータを中心としたパートナー企業で、代理店の関係は有していません。

 

 

図1. SeeSVサウンドカメラを使って、ヒュンダイ・ジェネシス車両のエンジンカバーの効果を確認
図2. 通常のエンジンノイズよりも高い周波数スペクトルで発生するBSRノイズ
図3. 車両のドアと窓で検出されるノイズ源
図4. BSR用アレイと比較して、NVHのアプリケーションではより大型のマイクロホンアレイを使用
図5. 人間工学的な設計によって操作が容易なハンドル
図6. システム重量は2 kg (5 lb) 未満。