Noël Steentjes、Inspectation
ダウンタイムを最少に抑えつつ信頼性と安全性を確保するために、鉄道施設におけるさまざまな電気機械的設備を監視する完全なシステムを開発し、デプロイする。
NI CompactRIOハードウェアとNI LabVIEWシステム開発ソフトウェアを使用して、柔軟性を持ちながらも標準化された監視システムを短期間でデプロイする。そのシステムは、GPSクロックを使用してチャンネルの同期をとることができ、3Gの通信チャンネルを使用してサーバにデータを転送可能なものにする。
鉄道や空港の事業者、送電網運用会社、工業系の企業にとって、信頼性の高い鉄道施設は最大の関心事の1つです。Inspectation社では、計測による定期的な設備点検だけでなく、設備を長期的に監視し、故障を早期に検知するための技術動向に注目していました。そこで、線路やリレー、分岐器、踏み切り、信号機などを監視するために鉄道施設内で使用する独自のオンライン状態監視システムの開発に着手しました。そのシステムの名はFlexMonitoringです。同システムは、堅牢かつ自律的でインテリジェントなシステムであり、数々のイベントのタイムスタンプを記録し、さまざまな信号タイプを計測します。
当社 (Inspectation社) がFlexMonitoringの開発を始めた直後、オランダの鉄道事業者であるProRail社が当社の顧客であるVolkerRail社との間に、広範な地域を対象とした保守契約を結びました。この契約では、VolkerRail社は鉄道施設の最低限の可用性 (稼働時間) を保証することが求められました。VolkerRail社が契約よりも長い稼働時間を達成した場合にはボーナスが支給されますが、逆に、稼働時間が契約した値を下回れば高い罰金が科せられます。要求された稼働時間を実現する方法については交渉の余地がありましたが、最も重要な線路やポイント、踏み切りにオンラインの状態監視システムを設置するのは必須でした。
鉄道網において、特に故障が発生しやすい設備としては次の4つが挙げられます。
最後の3つの設備では、分岐器に置かれた石、リレーや電気モータの老朽化、秋冬に線路上に生じる導電物質といった機械的な要因によって問題が発生します。施設の状態は、さまざまな計測や長期にわたる監視によって把握することができます。その傾向を自動的に解析すれば、実際に故障が発生する前に異常を判別/検出することができ、考えられる根本的な原因を保守部門に報告することが可能になります。それにより、修理のために生じるダウンタイムを削減することができます。
200台以上の監視ユニットを設置するにあたり、当社は最も重要な要件として以下の項目を特定しました。
サーバでは、すべてのデータをデータベースに保存します。また、サーバにはすべてのユニットとチャンネルの構成が格納されます。これは、監視ユニットの更新と構成をリモートで行う必要があるためです。また、データのサブセットは、エンドユーザにシステムへのメインインタフェースを提供する外部サーバでも利用できるようにします。このサーバ上ではクエリが常に実行され、故障発生のパターンの検出、故障に関する傾向の提示、監視部門へのテキスト/SMSによるアラームや警告の送信を行います。
監視ユニットの開発にあたって、当社はCompactRIOハードウェアを採用し、LabVIEWシステム開発ソフトウェアを監視システムの基盤にすることに決めました。他社のデータロガーや監視システムも検討しましたが、大半は高いサンプルレートに対応していませんでした。 最大1 kS/秒のサンプルレートを実現するものもありましたが、3GのUMTS (Universal Mobile Telecommunications System) ネットワークを介して後でデータを転送するために十分なバッファ容量を持っていないことがわかりました。当社が開発するシステムでは、場合によっては5 kS/秒~30 kS/秒でサンプリングを行う必要があります。 これを実現可能なソリューションは、産業用のPCを除けばNI CompactRIOだけでした。CompactRIOは小型かつ堅牢で、多くのI/O信号を統合できます。また、CompactRIO対応の3GモジュールであるSEAと組み合わせれば、GPSを利用した同期機能とUMTSに対応した通信機能を搭載することができます。
当社は、広帯域幅のI/Oモジュールとサブステーション内の厳しいEMC環境に対応するものとして、NIパートナーであるINCAA Computer B.V.社に、I/Oへの入力保護回路とウォッチドッグを備えたインタフェースボードの開発を依頼しました。また、システムを同期し、無線セルラーネットワーク経由でシステムと通信してデータの転送とリモートでのアップグレードを行うために、NI Cシリーズモジュールの他にSEA GPS/GPRSモジュールも採用しました。
すべてのCompactRIOユニットに搭載されているソフトウェアは汎用的なものです。デプロイされたすべてのシステムは同じソフトウェアを共有しています。各チャンネルは、設置場所ごとに、センサの種類や特性、計測のシナリオに応じてリモートで構成されます。すべての計測はイベント駆動型で行われます。デジタル状態の変化や電圧の変化などのイベントが発生するとロギングが始まります。 そして、各データに対して、GPSクロックを使用してタイムスタンプが記録されます。またチャンネルごとに、計測のシナリオがハードウェアの特性に応じて定義されます。一部のイベントについては、そのデータがダウンサンプリングされて送信されます。これにより、ユーザは信号の形状を確認し、イベントをより詳しく把握することができます。
複数のウォッチドッグ機構によって、CompactRIOのシステムヘルスと状態が記録されます。記録される情報には、通信信号やGPS信号の強度、メモリの使用状況、キャビネットの温度などがあります。システムは二重安全機能を備えており、望ましくないエラーが発生した場合には、通信モデムまたはCompactRIOユニットのうちいずれかを完全にリセットします。
サーバ側では、LabVIEWアプリケーションがデータを受信し、それらのデータをSQLデータベースに保存します。このアプリケーションでは、CompactRIOユニットのアップグレードや状態の監視を実行できます。また、ユーザが詳細な解析を行えるように、未処理データを送信することも可能です。
最後に、第2のサーバがデータを受信し、Webサービスによってそれらのデータがユーザに対して表示されます。このサーバは、データの演算を実行する計算機ツールやアラーム機能付きのイベント処理ツールなど、さまざまなツールを搭載しています。これらのツールは常にクエリを実行し、24時間365日体制の監視チームに警告やアラーム状態として表示する必要がある信号を検出します。監視部門や保守部門には、SMS/テキストメッセージまたはEメールで通知することもできます。
FlexMonitoringはすでに稼働中です。当社は、複雑な監視システムを1年以内に200台以上開発し、全国にデプロイできたことに満足しています。当社がCompactRIOとLabVIEWを選択した理由としては、必要なすべての種類のセンサと信号処理のアルゴリズムに対応できる柔軟性を備えていること、短期間でシステム開発が可能なこと、当社がLabVIEWに精通していたことが挙げられます。
当社は現在、水路をはじめとする鉄道施設以外の応用分野についても検討しており、プログラマブルロジックコントローラとの接続機能や画像の集録機能など、他の計測機能の導入も視野に入れています。
Noël Steentjes
Inspectation
Netherlands
info@inspectation.com
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