Alekhya Datta、インド資源エネルギー研究所 (TERI)
特にエネルギー資源が枯渇しているインドのような新興経済国において、エネルギーのセキュリティとアクセスを強化し、効率の良いインテリジェントな発電を実現することは、国家レベルで重要な課題である。
最先端のパワーエレクトロニクス装置で駆動し、CompactRIOハードウェアとLabVIEWシステム開発ソフトウェアをベースとした超高速デジタルテクノロジによって制御することにより、インドでこれまでになかったスマートミニグリッド(SMG:Smart Mini Grid) システムを開発した。その結果、より優れた柔軟性、信頼性、効率性、安全性を実現し、電力システムの完全性を高めた。
Alekhya Datta - The Energy and Resources Institute (TERI)
Mukesh Gujar - The Energy and Resources Institute (TERI)
Parimita Mohanty - The Energy and Resources Institute (TERI)
ユーティリティにおける変化と課題に対処するため、インドの電力会社の多くがスマートグリッドテクノロジの実装を計画しています。SMGシステムは、スマートグリッドのサブセットです。一般的には、11 kV以下で稼動し、地域社会に電力供給を行う、インテリジェントな電力分散ネットワークとして定義されます。この電力は、ディーゼル発電機などの小型の従来型発電機と、マイクロ水力発電、風力タービン、バイオマス、太陽光発電などのさまざまな再生可能発電による電力を組み合わせた、さまざまな分散型エネルギー資源 (DERs:Distributed Energy Resources) により供給されます。SMGは、従来の配電網に接続されるか、隔離され、ある地域の電力需要に対してのみ電力供給を行います。SMGは、デジタル情報通信技術 (ICT:Information and Communication Technology) によるアプリケーションで、高度なセンシング、通信、および制御技術を駆使して、マイクログリッド領域内の発電、電力供給、電力の最終用途を最適化するものです。SMGは、電力ネットワークのダイナミックな通信とバランス調整を行うことで、電力の喪失を最小限に抑え、グリッドの安定性を向上します。
SMGのメリットは次のとおりです。
Asia Pacific Partnership for Clean Development and Climate(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)のプログラム支援を受けて、The Energy and Resources Institute(TERI:インドのエネルギー資源研究所)はMinistry of New and Renewable Energy(インドの新・再生可能エネルギー省)に対して、また、Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization(オーストラリア連邦科学産業研究機構)はCommonwealth of Australia Department of Environment(オーストラリア連邦環境・水・遺産・芸術省)に対して、資金調達の申請を行いました。これは、分散発電ベースのSMGシステムと、インドの現場に適用可能で、なおかつインドのSMGのデプロイメントに役立つ制御技術の開発と実証を行うための資金です。複数の発電資源と負荷のバラつきへの対応を最適化するため、TERIはインドのハリヤーナー州のTERI Retreatにある研究施設の1つにて、SMGシステムの設計・開発を行いました。
TERI SMGモデル独自の特徴には次のようなものがあります。
TERIのSMGシステムは次のDERsも統合しました。
TERI Retreatは、カンファレンスホール、公的建物および宿泊施設、研究室、運動場といった近代的な設備を備えた、多目的複合施設です。この複合施設の電力需要は、季節、宿泊施設の占有率、開催されているカンファレンスの数、その他複数の要因によって、大きく異なります。
SMGシステムの基盤となっているのは、CompactRIOプラットフォームを使用して開発されたスマートコントローラです。NI cRIO-9022は、NI 9227電流入力モジュール、NI 9225アナログ入力モジュール、NI 9481リレーモジュール、NI 9211熱電対入力モジュール、NI 9205アナログ入力モジュール、およびNI 9403双方向デジタルI/O Cシリーズモジュールとともに使用して、さまざまなソースから電気データや気象データを収集し、制御を行います。
NIのCシリーズモジュールを使ったデータロギング
計測 | 出力信号 | NI Cシリーズモジュール |
太陽光発電 | ストリングDC電流、電圧 | NI 9227 (電流)、NI 9225 (電圧) |
バッテリ | DC電流、電圧 | NI 9227 (電流)、NI 9225 (電圧) |
風力発電 | 位相電流、電圧 | NI 9227 (電流)、NI 9225 (電圧) |
バイオマスガス化発電 | 位相電流、電圧 | NI 9227 (電流)、NI 9225 (電圧) |
負荷電力消費 | AC電流、電圧 | NI 9227 (電流)、NI 9225 (電圧) |
グリッド電力 | AC電流、電圧 | NI 9227 (電流)、NI 9225 (電圧) |
インバータ | AC電流、電圧 | NI 9227 (電流)、NI 9225 (電圧) |
表1.電気パラメータの計測
計測 | 典型的なトランスデューサ | 典型的な信号 | NI Cシリーズモジュール |
全天日射量 | 全天日射計 | アナログ電圧 | NI 9205 |
風速 | 風速計 | パルス列 | NI 9205 |
風向き | 風速計 | アナログ抵抗 | NI 9205 |
周囲温度 | 熱電対 | アナログ電圧 | NI 9211 |
モジュール温度 | 熱電対 | アナログ電圧 | NI 9211 |
バッテリ温度 | 熱電対 | アナログ電圧 | NI 9211 |
屋内/屋外湿度 | 相対湿度センサ | アナログ電圧 | NI 9205 |
表2.気象/物理パラメータの計測
SMG用SCADA (Supervisory Control and Data Acquisition) システムは、次のLabVIEWモジュールを含めたNI Developer Suiteを使って開発しました。
SCADAシステムとスマートコントローラの間の通信
他社製GSM/GPRS SA 1802 Cシリーズモジュールが、CompactRIOとSCADAシステム間の通信媒体として使用されました。さまざまなデータノードから収集されたデータは、Modbusプロトコルを使ったイーサネット、TCP/IPを使ったGSMモデム経由で送信されました。
LabVIEW DSC、LabVIEW Real-Time、およびLabVIEW FPGAモジュールを含むNI Developer Suiteを使って、SMGシステム用ダッシュボードを開発しました。このダッシュボードに、電気および気象パラメータや日々のエネルギー消費などのリアルタイム情報すべてが供給されます。SMGシステム用ダッシュボードは、イーサネット (Modbusプロトコル) 経由のSMG SCADAシステムとの通信に使用しました。
SMGシステムは次の分野で使用できます。
NIのプラットフォームを使って開発したSMGシステムは、信頼性と一貫性に長けたソリューションで、国の電力セクターの強化を目的として導入されました。このソリューションでは、分散型電力を最適に使用できるプラットフォームを構築すると同時に、地方の電力供給システムの性能を向上します。このシステムは、インド政府の主要プログラムである「Jawaharlal Nehru National Solar Mission」 (ジャワハルラール・ネルー国家ソーラーミッション) や「Rajiv Gandhi Grameen Vidyutikaran Yojana」 (ラジーヴ・ガンディー農村電化計画) などの一環として導入することが可能です。この設備は、新・再生可能エネルギー大臣のDr. Farooq Abdullah、電力大臣のShri Sushil Kumar Shinde、TERIの所長Dr. R.K.Pachauriによって執行され、無事稼動開始されました。
Alekhya Datta
インド資源エネルギー研究所 (TERI)
TERI (インド資源エネルギー研究所) CDG (分散型発電センター)、EETD (エネルギー環境技術開発) 部門、Darbari Seth Block、India Habitat Centre (IHC) Complex、Lodhi Road
New Delhi 110 003
India
電話l: +91 11 4150 4900 (内線:2146)
alekhya.datta@teri.res.in