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機能レーダーため4画期的基盤テクノロジー

概要

電磁スペクトルは、急速に議論が高まりつつある軍事分野です。電子妨害手段は洗練の度を加え、第5世代の戦闘機の探知はますます困難になっています。世界のほとんどの主要国では、スペクトルの支配を可能にするサイバー軍事テクノロジへの投資が行われています。さらに携帯通信業者による5Gの導入開始、自動車メーカーによるV2X通信の推進、IoT (モノのインターネット) での無数のデバイスへのワイヤレス接続により、スペクトルの商用利用は指数関数的に拡大しつつあります。

このような進化に伴い、ISR (情報収集、監視、偵察) システムを設計、テストする研究者やエンジニアに新たな課題が浮上しています。これらの課題により、エンジニアは費用対効果と時間効率がより優れた方法を使用して一層複雑なシステムを開発するよう求められるため、イノベーションの機会が生じます。

一方で、これらの課題に対応するため、これらの高度なシステムを可能にする基盤テクノロジも進化しています。レーダの設計とテストに使用する計測器およびテスト装置のプロバイダであるNIは、次に示す最新の4つの技術革新が今後数年間、レーダテクノロジを実現する上で最大の促進効果をもたらすものと考えています。

内容

フロントエンドコンポーネントガリウム

窒化ガリウム (GaN) はシリコンの登場以来、半導体分野における最大の技術革新と考えられており、従来の半導体材料よりもはるかに高い電圧で動作が可能な材料です。電圧が高いほど効率が良いので、GaNを使用するRFパワーアンプやアッテネータは消費電力が低く抑えられ、発熱も少なくなります。生産準備を終えた信頼性の高い製品を携えて、多くのGaNベースRFコンポーネントのサプライヤが市場に参入するにつれ、GaNベースのアンプの利用が増加しています。

このテクノロジは、AESA (アクティブ電子走査アレイ) レーダシステムの進化にとって重要な意味を持ちます。AESAは数百から数千のアンテナを備えた完全にアクティブな配列で、各アンテナは独自の位相とゲインの制御機能を備えています。このようなレーダシステムは送受信機のフェーズドアレイを使用して、物理的にアンテナを動かすことなく電子的にビームステアリングを行います。この種のレーダシステムは、従来の他のレーダと比較して、ターゲットの捕捉能力、空間分解能、堅牢性が向上しているため、人気が上昇しています。たとえば、配列の1つの素子で障害が発生した場合でもレーダは動作を継続します。AESAレーダーでのGaNアンプの利用が増加することでパフォーマンスが向上し、より小さいフォームファクタで同等の出力電力を達成でき、冷却の必要性も少なくて済みます。

AESAレーダーアーキテクチャ

図1:AESAレーダアーキテクチャ

GaNテクノロジを用いたアプリケーションやソリューションが高度化するにつれて、コンポーネントレベルとシステムレベルそれぞれのテスト結果を関連付けることがますます重要になります。ベクトルネットワークアナライザを使用する従来のコンポーネントテスト方法では、順方向および反射のゲインと位相の、正確かつ狭帯域のビューが得られます。しかし、この一般的な方法での連続波 (CW) の刺激信号では、コンポーネントが最終的に使用される実際の信号環境を正確には反映することはできません。その代替案としてベクトル信号アナライザとベクトル信号発生器の柔軟な広帯域を活用すれば、現実世界のアプリケーションとその環境をより忠実に表したパルスと変調された刺激信号を生成できます。この機能とSパラメータ解析の組み合わせは、コンポーネントレベルでのテストのより戦略的な手法となりつつあります。

送受信高速データコンバータ

変換器のテクノロジは毎年進化し続けています。今日の大手半導体メーカーのA/D変換器 (ADC) およびD/A変換器 (DAC) のサンプルレートは、同等の分解能で比較すると、5年前の旧バージョンと比べて桁違いに進歩しています。こうした高速ADCで分解能が向上することで、レーダのダイナミックレンジと瞬時帯域幅がより広くなります。ダイナミックレンジは動作範囲を最大化するための重要な要因です。たとえば、F-35などの第5世代戦闘機ははるかに離れた距離からターゲットを識別することが可能です。瞬時帯域幅が広がることで、パルス圧縮による空間分解能の向上、低被探知 (LPI) レーダなどの高度な技術の実装など、さまざまな利点がもたらされます。広い帯域幅によって可能となるもう1つのトレンドに、1つの信号チェーンを複数の機能に割り当てられるセンサフュージョンがあります。たとえば、複数の周波数帯域に複数の波形タイプを分割することで、広帯域センサを通信システムおよびレーダの両方の用途に同時に使用することができます。

また、多くの半導体メーカーは、最大6.4 GS/sのデータ収集が可能なTI ADC12DJ3200など、「ダイレクトRFサンプリング変換器」と呼ばれるADCおよびDACを販売しています。このようなサンプルレートで12ビットの分解能を持つRFサンプリング変換器は、アップコンバージョンやダウンコンバージョンなしにRF入力信号をCバンドまで直接変換することができます。変換器が進化を続ければ、将来的にレーダはCバンドとXバンドの両方でダイレクトRFサンプリングを行えるようになるでしょう。 

図2:ヘテロダインアーキテクチャとダイレクトRFサンプリングアーキテクチャの比較

たとえば、NIのPXI FlexRIO IFトランシーバはAESAレーダに革命をもたらすものです。完全にアクティブな配列では、各アンテナエレメントは独自のADCおよびDACを必要とします。これは、ADCおよびDACがレーダの動作周波数で直接サンプリングできない場合、各送受信モジュール (TRM) も独自のアップコンバージョン/ダウンコンバージョンステージが必要になることを意味します。これにより、設計コスト、サイズ、性能のばらつきが増加します。ただし、ダイレクトRFサンプリングアーキテクチャを使用することで、ミキサや内部発振器 (LO) が不要となりRFフロントエンドアーキテクチャが簡素化されて、コスト、サイズ、複雑さが低減します。このような送受信機の大規模配列により、ダイレクトRFサンプリングアーキテクチャのチャンネル密度は大幅に向上し、チャンネルあたりのコストを削減することができます。

計測に対するモジュール式のアプローチにより、NIは商用計測器で普及する前に最新の変換器を迅速に市場に提供します。たとえば、NIの最新のFlexRIOトランシーバはダイレクトRFサンプリング変換器を使用して最大6.4 GS/sでサンプリングを行います。これは、実世界のI/Oを使用してすばやく試作を行い、今日のレーダの最先端の性能に適合したテストベンチを開発する研究者やエンジニアに役立つことでしょう。また、これらのデバイスには、PXIの上級タイミングおよび同期用バックプレーンを活用して、1つのシステムにおける数十から数百のチャンネル間で位相コヒーレンスを達成する能力があります。

コグニティブ技術向け進化するFPGAテクノロジ

FPGAテクノロジもまた、進歩し続けています。最新のFPGAは非常に多くのロジック機能を持ち、ワットあたりの演算能力も向上しています。また、専用IPブロックにより最大150 Gb/sという高速データストリーミングをサポートしています。現在、FPGAの演算能力が向上したことで、5年前にはまず不可能だった革新的な技術への扉が開かれています。

新しいFPGAテクノロジがもたらす技術革新の1つとして、コグニティブレーダでの機械学習技術の応用が挙げられます。この技術によりレーダは環境への応答性が向上するとともに、より実用的な洞察を提供できるようになります。あらかじめプログラムされた操作モード (探索モード、追尾モードなど) ではなく、レーダは機械学習により動作周波数や波形タイプなど、最も適した動作パラメータに自動的に適応します。機械学習はまた、自動ターゲット認識 (ATR) などの機能への門戸を開き、知識支援型動作を促進します。

コグニティブレーダー内のFPGAに実装された機械学習技術

図3:コグニティブレーダ内のFPGAに実装された機械学習技術

航空宇宙/防衛関連組織でFPGAテクノロジが長年使用されてきた中で、もう1つの進化としてハイレベルのFPGA設計ツールの進歩が挙げられます。ハイレベルツールを使用すると、ホストベースのアルゴリズムからFPGAへの移行の簡素化、および設計におけるローレベルHDLの統合を通じて開発効率を向上させることができます。LabVIEW FPGAの場合、PCI Express、JESD204B、メモリコントローラ、クロックなどのボードインフラストラクチャの抽象化を通じて、NIのハードウェアとソフトウェアの緊密な統合によるメリットも受けられます。こうしてFPGA開発の焦点をボードサポートからアルゴリズム設計にシフトさせることで、性能面で妥協することなく、開発の労力を削減することができます。抽象化の度を加えたFPGAツールは開発サイクルを短縮する上でゲームチェンジャーになるかもしれません。その影響は、これまでのVHDLやVerilogの専門知識がないソフトウェアエンジニアや研究者、厳しいスケジュールに追われるハードウェアエンジニアにまで及びます。

センージョン帯域データバス

もう1つの重要なトレンドとして、高帯域幅センサデータを集中処理装置に戻して演算を行うため、高帯域幅データバス、つまりPCI Express Gen 3、40/100 GbE、ファイバチャンネル、Xilinx Auroraなどへの依存度が増大することが挙げられます。たとえば、F-35の統合コアプロセッサは、複数のISRセンサのデータを集約してデータセット全体で処理することができます。これにより、パイロットの状況認識が向上します。このトレンドの中心には、高速シリアルトランシーバテクノロジ (マルチギガビットトランシーバまたはMGTとも呼ばれる) の進化があります。このテクノロジは近年急速に進歩しており、現在のラインレートはレーンあたり32 Gbpsに達し、PAM4では56 Gbpsの達成も見えてきました。FPGAは主に処理リソースとして考えられていますが、非常に高度なMGTを搭載するものもあり、そのようなFPGAはセンサ開発の格好の目標となっています。

図4:複数のISRセンサからセンサデータを集約し、高速データバスを使用して集中処理を実行

モジュール式計測器を使用する利点は、時間の経過とともに急速に増加する処理能力や帯域幅に合わせて、システムを簡単に進化させることが可能である点です。PXIプラットフォームは特に、高帯域幅のデータストリーミング、およびタイミングと同期機能の統合を必要とするシステムに適しています。

モジュールCOTS計測による連携

基盤テクノロジの急速な進化に伴い、レーダ技術とアーキテクチャは複雑化と機能向上が同時進行しています。テクノロジの継続的な進歩に合わせて、テストシステムも進化し続ける必要があります。設計能力と詳しい知識の両方を社内で確保できるという前提で、要求されるカスタマイズと性能を実現するための実行可能な選択肢としては、レーダの試作およびテストシステム向けにフルカスタムのハードウェアとソフトウェアを社内で開発するしかないと思われるかもしれません。しかし、このようなソリューションには長期間の保守業務と機会費用も必要になります。

FPGAの出現と、モジュール式フォームファクタで実現された新しい変換器テクノロジおよびストリーミングテクノロジの急速な普及に伴い、COTSソリューションは仕様要件を満たすだけでなく、システムの寿命を延ばし長期稼動を達成するための柔軟性も提供します。NIは、これらのテクノロジをモジュール式のCOTSフォームファクタに迅速に取り込みました。これでエンジニアは、厳しいスケジュールと予算の中で進化する高機能レーダシステムの要件を満たすことができます。