ATRX, Inc.共同創設者兼社長、John Bergmans
ATRXは、2週間足らずで既存のソフトウェアを新しい小型スラスタテストスタンド用にカスタマイズし、VeriStandの適応性と迅速な開発能力を実証しました。
VeriStandのユーザフレンドリーなインタフェースにより、お客様は最小限のサポートでテストシーケンスとUIを素早く変更でき、運用の柔軟性と使いやすさを確実にすることができました。
ATRX社では、リアルタイム式のテストアプリケーションを構成、運用可能なテストシステムで、新しい推進技術をテストする必要がありました。テストソリューションは、テストシステムを短期間で完成させ、変化するテスト要件に対応しながら開発者の高い生産性を確保するために、使いやすく、学習期間の短いものである必要がありました。
VeriStandは、ATRX Inc社がエンジニアリングの課題を克服する上で貢献しました。このソリューションには、簡単に構成できるユーザインターフェース、UI、システム構成、テストロジックをシームレスに統合するモジュール式アーキテクチャ、NIの大半のリアルタイムコントローラとの互換性が備わっています。また、分散システムをサポートしており、NI LabVIEWを使用してカスタム拡張が可能なため、推進システムのテストにも最適です。
VeriStandベースのテストソフトウェアシステムには、以下の3つの主要コンポーネントがあります。
図1:VeriStandシステムの主要コンポーネント
図2で見られるように、VeriStandの特筆すべき特徴は、複数のユーザと複数のリアルタイムハードウェアプラットフォームへの拡張に簡単に対応できるということです。
図2:複数のコントローラとユーザオペレータステーションを備えた分散型VeriStandシステム
VeriStandエンジンの下位機能は、システム定義ファイル (SDF) によって決定されます。このファイルは、システム動作の開始時にリアルタイムコントローラにデプロイされます。
VeriStandシステムエクスプローラを使用して構成されるSDFには、アラームや簡単な自動化手順などの機能が記述されており、そこからレッドライン監視などのより複雑な応答を実装することができます。SDFは、データ処理 (例えば、ローパスフィルタリング) やデータロギングなど、その他の機能も定義しています。チャンネル間のマッピングもSDFで設定されます。
図3:VeriStandプロジェクトウィンドウ (左) とシステムエクスプローラウィンドウ (右)
リアルタイムシーケンスは、推進システムまたは他の検査対象デバイス (UUT) をテストする際のシステムの動作を定義するロジックの追加レイヤです。推進テストの場合、リアルタイムシーケンスは推進システムを始動、実行、および停止するロジックを定義します。リアルタイムシーケンスには中断ロジックも含まれ、正常状態から外れた場合のシステム応答を定義することができます。
図4:リアルタイムシーケンスで追加できるシステムロジック
リアルタイムシーケンスは、刺激プロファイルエディタから作成され、起動します。
図5:刺激プロファイルエディタを使用してリアルタイムシーケンスを作成、起動する
VeriStandには、テストシステムの機能を大幅に拡張するために使用できるLabVIEW APIが含まれています。VeriStandを開発者プラットフォームにインストールすると、このAPIへのアクセスを提供するVIのセットがLabVIEWツールパレットに追加されます。VeriStandチャンネルを読み書きするVIはAPIに含まれています。
このAPIは、構成ファイルデータの読み書きやUI要素のプロパティ制御など、VeriStandに存在しない、または実装が困難な機能を備えたLabVIEW VIの開発に役立ちます。
図6:ツールパレットのVeriStand用LabVIEW API
図7:LabVIEWにおけるVeriStandチャンネルを読み書きするVI
アラバマ州ハンツビルのATRX, Inc.社では、ロケットモーターとジェットエンジンの技術を組み合わせたエアターボロケットと呼ばれる独自の推進システムを開発しています。VeriStandは、エンジンテストのすべての段階でテストスタンドをリモート制御するために使用します。各フェーズは、エンジンの発射準備時のテスト前動作、自動エンジン制御に使用されるホットファイアテスト (図8a)、そして最後にエンジンとテストスタンドの安全性を確保するためのテスト後動作です。自動テスト制御器は、VeriStandアラーム、プロシージャ、およびリアルタイムシーケンスを組み合わせて実装されます。
ATRユーザインタフェース (図8b) は3つの画面で構成されています。最初の画面には、スタンドのフローネットワークを表すP&IDダイアグラムが含まれます。P&IDに重畳されたブール型制御器により、ユーザはバルブを切り替えたり、スタンド上の他のデバイスを制御できます。P&IDの数値制御器には、圧力や温度などの重要な計測データが表示されます。この画面は、リアルタイムのテストシーケンスの起動にも使用され、Sequencer機能のソフトウェアインターロックも装備されています。
2番目の画面はホットファイアテストパラメータの構成に使用され、3番目の画面はリアルタイム計測データを表示します。
CompactRIO cRIO-9030コントローラと4つのcRIO I/Oモジュールは、このテストスタンドのデータ収集システムハードウェアの中核をなしています。
a) エアターボロケットホットファイアテスト |
b) オペレータコンソール |
図8:VeriStandを使用したエアターボロケットテスト
VeriStandで実現できる生産性の例として、ATRX社では最近、民間のNewSpace社から小型スラスタをテストするためのターンキーテストスタンドの開発を依頼されました。このスラスタとこのスタンドの推進剤供給システムは、エアターボロケットシステムとは大きく異なるものでしたが、既存のATRテストスタンドのソフトウェアを改良することで、このスラスタテストスタンドのソフトウェアは約2週間で開発できました。LabVIEW APIの使用を例示するこのシステムの1つの特徴は、スタンドアロンのLabVIEWベースの自動シーケンス制御ウィンドウです (図9)。このウィンドウには、オペレータが一意なPINコードを入力するまでホットファイアオートシーケンス開始ボタンを無効にするソフトウェアインターロックが装備されています。
VeriStandの拡張性と使いやすさは、お客様がこのシステムを使用し始めたときから明らかでした。数日足らずで、システムを使いこなせるようになり、ユーザインタフェースをニーズに合わせて変更できるようになりました。また、ATRX社のサポートをほとんど受けずに、リアルタイムホットファイアシーケンステストの要件を変更することができました。
図9:LabVIEWに実装されたソフトウェアインターロック
ATRXの姉妹会社であり、NIのパートナー企業でもあるBergmans Mechatronics, LLC (BML) 社は、VeriStandを数多くの追加推進テストシステムに使用してきました。BMLの特筆すべきプロジェクトの1つは、NewSpace社の顧客のために、推進テスト用の2つのラックマウント型モジュール式データ収集と制御システム (M-DACS) を開発したことです (図10)。どちらのシステムも、VeriStandとCompactRIOハードウェアを使用しています。
ATRX小型スラスタテストスタンドと同様、BMLの顧客はVeriStandにすぐに慣れ、これらのシステムの操作や修正にサポートをほとんど必要としませんでした。
図10:モジュール式データ収集と制御システム (M-DACS)