システムオンデマンド飛行船テスト効率最大する

FLYING WHALES社のCTO、Olivier Specklin

 

ユーザ事例ハイライト

 

  • FLYING WHALES社は、NIとコラボレーションすることで、Iron Whale Benchの開発と納品を2四半期以内に完了し、市場投入までの時間を大幅に短縮することに成功しました。
  • モジュール式でカスタマイズ可能なSoDアプローチにより、FLYING WHALES社はテストプロセスを独立して管理し、変化する要件に適応して、機能の肥大化を効率的に軽減することができました。
  • デュッセルドルフにあるExperience Centerの利用をはじめ、NIのサポートを受けたことで、本格導入前のリスクを徹底的に緩和し、早期統合を実現して、すべての統合システムの機能性と信頼性を確保することができました。

「NISoD採用した理由は、今回プロジェクト既存システムアップグレード伴う航空プロジェクトなり、変化する設計要件ニーズ対応ながらから始める必要あっからです。拡張操作性れ、完全制御できるテストベンチ提供できるパートナー必要した。NISoDにより、完璧柔軟性高いテストベンチ実現し、意欲スケジュールIron Whale初期テスト実施することできした。NI多大サポート受けことで、テストベンチ独立管理し、継続かつ将来取り組みシームレス行えるようなりした」

- FLYING WHALES社、Olivier Specklin

課題:

飛行船のテストでは、一連の機能の検証や変化する認証基準の管理など、技術面やスケジュール面の課題があります。FLYING WHALES社は、係留、飛行制御、およびペイロードシステムを統合したLCA60T飛行船でこれらの課題に遭遇しました。変化する要件に適応し、機能の肥大化を防ぐとともに、リスクの軽減やリソースの可用性の確保といった業界のさまざまな課題に対応するために、柔軟性のあるテストベンチを導入する必要がありました。

ソリューション:

FLYING WHALES社はNIと提携してシステムオンデマンド (SoD) を活用し、Iron Whale Benchという飛行船統合テスト施設を開発しました。SoDのモジュール式でカスタマイズ可能なCOTSアプローチにより、FLYING WHALES社はテストプロセスを独立して管理できるようになりました。デュッセルドルフにあるNIのExperience Centerとのコラボレーションにより、迅速な開発が可能になり、Iron Whaleは2四半期以内に完成し、市場投入までの時間が大幅に短縮されました。

18世紀に飛行船の構想に拍車がかかりました。1850年代に推進エンジンが導入されると、業界の成長は加速しました。それにもかかわらず、第二次世界大戦の間、この進歩は突然止まりました。このような歴史的背景を持つ飛行船業界は、現在、技術の進歩と革新的な輸送手段の必要性の高まりに伴い、驚異的な復活を遂げています。市場の動向としては、貨物輸送から緊急救援活動、発電、人道支援、産業、物流、空飛ぶ病院、木材や建設資材の輸送、通常の貨物や大型貨物の取り扱い、高層施設の設置、消防、特殊任務など、さまざまな分野で飛行船への関心が高まっています。

 

飛行船の安全性、信頼性、性能を保証するためには、当然ながら、厳格で徹底的なテスト段階を経る必要があります。飛行船開発のこの段階では特有の課題があり、その解決には、一連の重要な機能を検証し、関連リスクを確実に緩和するための専門的なソリューションが必要です。飛行船のコンポーネントとシステムは非常に重要であるため、専門的なテスト手順が必要です。飛行船テストのスケジュールには制約があり、飛行船システムは複雑であるため、安全性、信頼性、性能を確保するには、時間厳守と厳密な検証が求められます。包括的なテストソリューションは、スケジュールの制約、変更管理、ライフサイクル管理など、技術的な課題や非技術的な課題に取り組むための総合的なアプローチを導入する上で不可欠です。 

 

 

飛行船テスト課題 

飛行船テストでは、技術面やスケジュール面で多くの課題に直面します。これらの課題が生じる主な原因として、主要な一連の機能を実際の運用に統合する前に、事前に検証しなければならないことが挙げられます。さらに、リスクの軽減、適切なテスト設備の利用、テストプロセスの簡素化、必要なリソースの確保に関して、お客様は大きな課題に直面しています。

 

大きな課題の1つは機能の肥大化です。仕様と要件が常に変化することで、飛行船のテスト環境では開発段階全体にわたって大幅な変更や配線の再構築が必要となります。このような変更は、プログラムのスケジュールに影響を及ぼし、コストの増加を引き起こします。拡張不可能なテストシステムは、この課題をさらに悪化させており、柔軟性に優れたモジュール式システムの必要性が浮き彫りになっています。

 

もう1つの大きな課題は、認証プロセスです。固定翼機や回転翼機については認証取得の手順が確立されていますが、飛行船の認証取得の手順ははるかに曖昧であるため、欧州連合航空安全機関 (EASA) や連邦航空局 (FAA) などの国家機関によって新たに策定され、変化し続けるガイドラインに従う必要があります。

 

最後に、飛行船分野における熾烈な市場参入競争には、もう1つの大きな課題があります。FLYING WHALES社が業界の先駆者を目指して取り組む中、LTARE社のPathfinderやHAV社のAirlanderなど、数多くの競合他社が競って飛行船の開発を進めています。これらの主要な競合他社は、安全性と性能を確保するために必要なテストの特定、常に変化する設計要件の管理、そして設計段階で仕様を凍結するまでテストを開始できないという状況への対処など、さまざまな不確実要素に直面しています。このような状況で迅速に進めなければならないという競争圧力にさらされ、ただでさえ要求の厳しい飛行船の開発およびテストプロセスはさらに複雑化しています。

 

SoDアプローチ

システムオンデマンド (SoD) は、モジュール式コンポーネントと標準コンポーネントを利用して、LRUハードウェア、組込ソフトウェアアルゴリズム、HIL (Hardware-in-the-Loop)、統合ラボなどの検証/機能テストシステムを設計、統合、提供するアジャイルなシステム開発プロセスです。モジュール式かつ COTS (商用オフザシェルフ) のアプローチを採用することで、ほとんどの信号タイプに対して事前に構成された設計を活用できます。これにより、互換性と機能を事前に評価できるため、後で設計をカスタマイズする必要がなくなります。信号接続や配線、ラックインフラストラクチャに至るまで、各部品はモジュール式に設計されているため、容易に組み立てたり、適応させたりすることができます。 

 

SoDは、標準化された組み立て済みのCOTSハードウェアの機能にとどまらず、さらに広範な機能を提供します。さらに、モデルベースの設計プロセスを取り入れているため、提案段階からシステムを完全にモデル化することが可能です。信頼できる唯一の情報源 (SSOT) として、このモデルは、ソフトウェア構成 (ドライバ、スイッチ、その他のコンポーネントなど) を含む、システムの構築と構成に必要なすべてのアーチファクトの生成に使用されます。この機能により、アーチファクトを手作業で修正することなく、設計変更に迅速に対応できます。

 

また、SoDは飛行船テストに関連する課題を効果的に解決する、柔軟性と適応性に優れたモジュール式ソリューションを提供します。NIのSoDソリューションは、以下に示す複数の重要な要素で構成されています。 

 

  • デュッセルドルフにあるNIのExperience Center: 最先端のテスト設備と専門技術を提供しています。 
  • モジュール式のCOTSアプローチ: カスタマイズされたテストソリューションを迅速にデプロイします。 
  • 納期の大幅な短縮: 注文から納品までの平均期間が6か月からわずか15週間に短縮されました。
  • お客様の地域のアプリケーションエンジニア (AE) およびフィールドアプリケーションエンジニア (FAE) によるサポート: テストプロセス中に徹底的な支援を提供します。

SoDのモデルベース (MB) アプローチでは、提案段階でシステムを完全にモデル化し、MB以外の環境における一般的なコンセプトではなく、詳細な仕様をお客様に提示することで、プロジェクトのリスクを軽減します。さらに、モデルベースの設計プロセスと高度に標準化されたアーキテクチャにより、変更作業が簡素化され、変更の実装が大幅に迅速化されます。従来の方法では、ウォーターフォール型開発プロセスがよく用いられますが、要件が変更された場合にはリワークによる遅延やコスト増加の原因となります。SoDのアジャイル手法では、統合とテストを継続的に行うことで、リスクを軽減し、納期を短縮できます。他のアプローチは柔軟性に欠け、変化への適応性が低い場合がありますが、SoDは柔軟性に優れ、モジュール式設計を取り入れているため、プロジェクト要件の急速な変化に適応できます。

 

SoD導入したFLYING WHALES事例

 

FLYING WHALES社はフランスのシュレーヌを拠点とする先駆的なスタートアップ企業です。当初は、孤立した地域にフランスの木材を輸送することを目的としていましたが、その後、緊急救援活動や風力ブレードの輸送など、さまざまな用途に応用されていきました。同社のビジョンは輸送にとどまりません。環境への負荷が小さく、低コストで、柔軟性と安全性に優れていることを重視しながら、航空会社としての運営を目指しています。同社の飛行船LCA60Tは、ポイントツーポイント輸送、環境に影響を及ぼすことなく荷物の積み降ろしを行うためのホバリング機能、低い運用コスト、および安全性と可制御性のための複数の推進ポイントを持つ剛構造を備えています。また、EASA認定を取得しており、リアルタイムのフリート監視が可能です。 

 

この拡張には、運用に不可欠なコンポーネントであるLRUの電子制御器の徹底的なテストが必要でした。FLYING WHALES社のテストプロセスの中心は、Iron Whale Benchと呼ばれる電子機器統合テスト施設です。この施設では、飛行および荷物の積み降ろし用のすべての組込コンピュータ、非推進電気システム (NPES)、および電気配線相互接続システム (EWIS) が統合されています。欠陥を再現するための独自の代表的なシミュレーションモデルを活用して堅牢性テストを行い、計測データを入念に記録します。Iron Whale Benchの主な目的は、飛行船の一連の機能を実際にデプロイする前に、統合して検証し、技術面およびスケジュール面でのリスクを軽減することです。 

 

統合してテストするシステムとして、係留、非推進電気システム (NPES)、飛行制御システム (FCS)、アビオニクス、すべてのリモートデータコンセントレータ (RDC)、ナビゲーションセンサ、ビデオ監視システム (VSS)、ペイロードシステム、バラストシステム、およびリフティングシステムが挙げられます。

 

NIとの提携により、FLYING WHALES社はSoDの能力を活用し、積載量60トンの硬式飛行船の統合とテストを実現しました。この飛行船は、低コストで、柔軟性と安全性に優れるとともに、環境負荷を低減するために二酸化炭素排出量を最小限に抑えるように設計されています。2023年10月に始まったNI-FLYING WHALESプロジェクトでは、Iron Whaleの開発および納入が2四半期以内に完了するという著しい進捗が見られました。このコラボレーションにより、すべてのシステムが問題なく機能するようになりました。Iron Whaleは、デュッセルドルフにあるNIのExperience Centerで開発され、Experience Centerの高度な設備と専門技術がプロジェクトの迅速な完了に貢献しました。

 

NIは、いくつかの主要なメリットを提供できます。早期統合の実現により、お客様はより早い段階でテストを行うことができます。SoDのテストアーキテクチャのモジュール性により、共通のスクリプトを使用して既存のシステムにテスト機能を追加できます。デュッセルドルフにあるNIのExperience Centerでは、検査対象ユニット (UUT) にテスト手法を直接適用することで、本格導入前のリスクを徹底的に緩和します。 

 

クローズテストシステムを提供する他のベンダとは異なり、NIはカスタマイズ可能なソフトウェアを中核としたCOTSアプローチを提供することで、お客様が自社のテストシステムを所有することを可能にしています。このオープンシステムにより、テストシステムがどのように設計され、構築されたかについての詳細情報をお客様に提供し、透明性と柔軟性を確保しています。

 

このパートナーシップにより、一連の機能の検証と、技術面およびスケジュール面でのリスクの緩和を迅速に行い、テストリソースの可用性を確保することができました。NIの専門技術とリソースを活用することで、FLYING WHALES社は開発プロセスを迅速化し、市場投入までの時間を短縮できました。この戦略的アプローチにより、すでに相当規模の受注に成功しており、航空輸送に革新をもたらす取り組みにおける重要なマイルストーンとなっています。SoDのモジュール式アーキテクチャを採用することで、FLYING WHALES社はテスト段階を通じて変化する仕様と要件に適応できるようになりました。SoDの適応性は、新しい信号タイプと変更箇所を既存のテストアーキテクチャ内でシームレスに統合し、効率的かつ効果的なテストプロセスを実現できることにより実証されています。

 

要点 

 

NIとFLYING WHALES社のパートナーシップは、SoDが飛行船のテストにどのように革新をもたらしたかを証明しています。SoDは、開発スケジュールの迅速化、リスクの軽減、製造元の課題克服を支援しました。SoDは、飛行船のテストに限らず、システム統合、検証と妥当性確認テスト、および認証テストも実施することを前提としています。モジュール性および迅速な適応という指針により、他の技術の開発プロセスを加速し、コストを削減して、市場投入までの時間を短縮できます。 

 

航空宇宙業界では、複合的な統合作業や検証プロセスに対応するSoD機能を活用することで、より堅牢かつ信頼性の高いシステムを実現できます。ここで紹介するお客様の成功事例は、航空宇宙業界におけるSoDの幅広い用途を明らかにし、テスト手法のパラダイムシフトを示しています。このような企業の取り組みにより、飛行船技術の開発と採用が進展しています。SoDの広範な影響力は、飛行船のテスト以外にも、航空機のさまざまな用途でイノベーションと効率向上をもたらす大きな可能性を秘めています。