Collins Aerospace社、トロメカニカルシステム向け統合テストアーキテクチャ開発により、時間、コスト、工数削減

Collins Aerospace社、Scott Christensen氏

「当社一連モバイル共通フロントエンド実験全体運用できるアーキテクチャ完成した。 これにより、1機能ため1メカニカルテストベッド構築た、老朽てい固定電子機器問題解消できます」

- Collins Aerospace社、Scott Christensen氏

課題:

Collins Aerospace社は、新規や既存プログラムの製品開発サイクルにおいて、さまざまな航空宇宙分野のコントローラやコンポーネントのテストに柔軟に対応することができる、エレクトロメカニカルシステム向けの「ゆりかごから墓場まで」式テストアーキテクチャを作成する必要があった。

ソリューション:

NIのハードウェアプラットフォームであるPXIやCompactRIOとLabVIEWソフトウェアを土台として標準化を行い、簡単に構成、カスタマイズ、保守ができるモジュール式テストアーキテクチャを実現した。ソフトウェアについてはNIアライアンスパートナーであるWineman Technology社、計測器とアクチュエータについては同じくSierra Peaks社と共同で開発を行った。

 

Collins Aerospace社は、最先端技術を活用した航空宇宙/防衛製品を提供する世界有数の企業です。約42,000人の従業員を有し、年間収益は140億ドルを超えます。作動システムビジネスユニットでは、ビジネス用/商用/軍用航空機向けの高揚力作動システムの設計や製造を行っています。 


航空宇宙テストニーズ

航空宇宙向けのLRU (列線交換ユニット)、コンポーネント、コントローラは、厳密なテストが必要です。 そのためCollins Aerospace社のような航空宇宙関連企業では、ビジネス用のジェット機から民間航空機、軍用機にいたるまで、各種OEM輸送機器プログラムの1種類の部品について、さまざまな構成やバージョンをテストしなくてはなりません。Collins Aerospace社は航空飛行システムで使用される多くのコンポーネントを設計しています。作動グループでは、コックピットの制御コマンドを、前縁や後縁の操縦翼面 (フラップ、スラット) の動きに変換するシステムの設計を行っています。このシステムは、スラット/フラップ電子制御ユニット (SFECU)、中央パワードライブユニット (PDU)、関連するトルクチューブやギアボックスなどの動力伝達要素で構成されます。このようなシステムコンポーネントはすべて、システムや航空機レベルでの個別テストと組み合わせテストの実施が必要です。

 

従来テスト方式課題

設計やテストの方法論はコンポーネント間で比較的似ています。しかし、作動グループでは、開発、適格性確認、製造、修理といったさまざまな種類のLRUテスト向けに多くのテストスタンドを運用していました。さらに、大規模なテストシステム (社内用、顧客用の両方) では、再構成にコストも時間もかかる油圧負荷方式を使用していました。製品開発サイクル全体で別のテストを実行するためにアーキテクチャと手順を再構築しなければならず、この方法では時間がかかります。

 

たとえば、既存のスタンドでは油圧負荷を使用して機械的なLRUテストを実施していました。テストシステムを再構成したい場合は油圧システムをつなぎ直して再び配線する必要があり、テスト全体でこういった同じような変更作業が頻繁に行われていました。電子テストですら実際の航空機ハードウェアを必要としたため、テストソリューションは柔軟性に欠けるものでした。自動化されたテストは最小限で、複数構成への対応には限界がありました。「従来型のアプローチ」によるテストはコストと時間がかかります。厳しいスケジュールとリソース制限という課題に直面し、断片化された既存のアーキテクチャでは増え続ける要件を迅速に満たすことができませんでした。また、Collins Aerospace社はコスト削減やスケジュールの短縮を実現して将来のプログラムで他のサプライヤの優位に立つ必要があり、そのためにも新しいテストアーキテクチャの開発を目指しました。

 

 

 

 

設計サイクル全体共通テストプラットフォーム使用することメリット

新しいD3 (確定的、分散型、ダイナミック) アーキテクチャに対して将来を見越して行った作業や投資は、今後数年で回収されます。コンポーネントの設計サイクルで実施されるすべてのテストにおいて、共通のテストアーキテクチャの標準化を行うことで、テストを大幅に最適化できると考えました。D3アーキテクチャに対して実装したテストタイプは次のとおりです。 MIL (model-in-the-loop) テスト/SIL (software-in-the-loop) テスト/HIL (hardware-in-the-loop) テスト、ハードウェアとソフトウェアの検証/妥当性確認 (V&V: Verification and Validation) テスト (欠陥生成)、ライフサイクル耐久性テスト、システム統合のラボテスト (Iron Bird)、航空機レベルのシステム統合テスト、航空機レベルの物理システムテストを含むHLSTR (high-lift system test rig)、性能テスト/耐久性テスト/疲労テストなどを含むSTR (system test rig)、ソフトウェア開発テスト/fly-the-boxテスト/ソフトウェア機能テスト/ソフトウェア回帰テスト/システムテスト/自動生産 (ATP: 受入テスト手順) テストなどを含むSFCR (slat/flap controller rig)、シングルウィングテストや左側の総負荷に基づく「右側」のエミュレートテストなどの物理テスト。

 

そして、複数の目標を達成することができました。まず、「ゆりかごから墓場まで」式テストアーキテクチャと多目的テスタを提供する、単一の共通テストプラットフォームを作成しました。開発、ATP、Iron Birdテスト、SITS (system integration test stand) テスト、完全な生産段階のエレクトロニクスコントローラテスト、完全な生産段階のメカニカルハードウェアテストといった、「V字モデル」の各段階で同じSFECUリグを使用しました。2番目に、保守性が高く再構成可能なモジュール式ハードウェアを組み込みました。これにより、大規模なシステム適格性確認テスト用に拡張したり、別のシステム用に再構成したりすることが簡単にできるようになり、システムコンポーネントの接続のために配線、配管をする必要がなくなります。3番目に、簡単に統合可能なオープンソフトウェアアーキテクチャを実現しました。リフレクティブメモリアーキテクチャでは、メモリの読み書きによりテストスタンドを完全に制御することができます。このアーキテクチャは、個別に使用したり、大型のテストシステムに統合して使用したりすることが可能です。 また、分散制御により、システムの拡張に応じて処理能力を高めることができます。

 

D3アーキテクチャ詳細

D3アーキテクチャは、適応性に優れたモジュール式の多目的テストソリューションです。新設計を最小限に抑え、業界の成熟技術を取り入れています。 このテクノロジには、NIのCompactRIOとFPGAハードウェアの拡張機能をベースとした分散制御機能、Cシリーズドライブインタフェースモジュール、Kollmorgen AKDサーボドライブ、AKMサーボモータを使用したサーボ電気負荷制御へのダイレクトインタフェースが含まれます。

 

SFECUテストリグは、すべて実際のコントローラ、または実際のコントローラとシミュレーションコントローラの組み合わせを備えた、ラックマウント型プラットフォームです。コントローラを1台だけ設置した場合、CANバスを介してもう1台のコントローラをシミュレーションできます。このシステムを使用して、航空機を構成する電気機械部品をシミュレーションします。独自のシミュレーションツールにより、航空機の障害モードをシミュレーションすることができます。このリグは、自動デューティーサイクルや特定の機能テストをすべてプログラムで設定可能です。いかなる場合でも、シミュレーションされたハードウェアを実際のハードウェアに置き換えることができます。 またその逆も可能です。

 

これらのテストラック内のハードウェアは、テストラックのサブシャーシ内にある航空機ハードウェアの実機とトランスデューサのシミュレーションとを切り替えることができます。またテストラックには、航空機コントローラとの間の信号と一緒に、ディスクリート、アナログ、電力の電圧と電流を監視するハードウェアも含まれます。具体的には、AC/DC電源制御/監視シャーシ、ブレーキ負荷シミュレーション/切り替え/監視シャーシ、内部DC電源、リゾルバシミュレーション/切り替え/監視アセンブリ、離散シミュレーション/切り替え/監視アセンブリ、ARINC 429/CAN送受信アセンブリ、緊急停止制御/監視アセンブリ、信号ブレークアウトアセンブリ、データ収集アセンブリ、一般LRUインタフェースからカスタムLRUアダプタのアセンブリ、無停電電源装置を備えたWindows PCを搭載しています。

 

また、テストラックは共有デスクトップワークスペース (ヒューマンマシンインタフェース)、実際の航空機ハードウェアインタフェース、外部ARINC 429ソース/シンク、外部AC/DC電源アセンブリとの外部接続インタフェースを搭載しており、電力品質テストをサポートしています。

 

LabVIEWベースのソフトウェアを使用してSFECUテストリグを動作させているため、手動や自動でテストスタンドを設定、操作できます。また、確定的なリフレクティブメモリデータバスを介してテストスタンド機能を制御、監視することも可能です。

 

さまざまGUIスタンド構成使用

ソフトウェアをカスタマイズ、保存、再構成して、さまざまなGUIやスタンド構成をサポートすることができます。たとえば、スラット/フラップECU SITSでは、テストスタンドで実行しているPDUモデルでコアテストスタンドを使用し、あらゆるトランスデューサや不連続な信号を完全にシミュレーションすることができます。SITSコックピット (航空機ハードウェア) とシミュレーションを使用して、スラット/フラップ制御レバーコマンドをスラット/フラップECUやモデルに送信して、システム、オーバースピード、アンダースピード、表面の欠陥などをリバースできます。スラット/フラップECUにエラーを適用して、エンジン表示とクルーアラートシステム (EICAS) ロジックを検証し、スラット/フラップECUに追加されたリグを使用してメンテナンス画面をテストすることが可能です。 これは、すべての通信、負荷、不連続信号、トランスデューサをシミュレーションできるためです。スラット/フラップECU ATPについては、SFCRを使用して製造施設で実行しているのと同じATPを実行できます。サーキットバイサーキット手法や航空機ソフトウェアによるフルシミュレーション (fly-the-boxテスト) など、さまざまなATPメソッドから選択できます。また、最小限のカスタムGUIやPythonスクリプトを実行するテストシーケンサにより、テストを自動化することも可能です。

 

この他にも、D3アーキテクチャは次の構成を提供します。 統合システムテスト認証リグ (ISTCR)、スラット/フラップECUの再稼働 (ラッチエラーを引き起こした故障状態の診断など)、ロギングと表示 (リフレクティブメモリデータロギング構成ユーティリティを使って、リフレクティブメモリから200 Hzで値を記録)、CANとARINCのデータロギング、データ表示 (航空機のGUIには各リゾルバ、電流、電圧などの計測値が表示され、標準のカスタムブロックの構成単位に基づいてGUIを構築、カスタマイズ、保存可能)、自動化 (TestStand、Python、その他ソケットやJSONのシリアライゼーションによる言語を用いたスクリプト作成、RFMにアクセス可能な外部アプリケーション/システムからの自動化、カスタムLabVIEWコードでコントローラを実行するための刺激プロファイル、マクロの記録と再生、自動ソフトウェア機能、自動ATP)。


 

Collins Aerospaceによるコスト、時間、工数削減

NIの分散型計測/制御製品を使用することで、テストの再構成に要する時間を数週間から1日に短縮することができました。D3アーキテクチャは、多目的 (システム、ATP、Iron Birdで同じ負荷テーブルを使用、開発、ATP、Iron Bird、SITS、ESIMで同じSFECUリグを使用)、かつモジュール式 (ハードの配線や配管接続なし、ソフトウェアとハードウェアは複数の航空機に共通の設計で構築) で、簡単に統合でき (オープンソフトウェアアーキテクチャ、さまざまな言語によるスクリプト作成、テストスタンドを分離モードまたは統合モードで実行できる実績のあるRFMアーキテクチャ)、保守しやすく (プリント配線板を広く使用し、従来型のハーネス構成を除去)、将来を見据えた設計 (特許を取れる設計) になっています。

 

HIL、V&V、システム統合、製造テストのニーズに対応する共通のテストプラットフォームを、さまざまなプロジェクトや航空機アーキテクチャで開発したことにより、テスト装置の開発時間を短縮し、デジタル実験室の増加といった将来のニーズに対応できるようになりました。新しいプラットフォームを使用することで開発時間を数か月短縮し、数十万ドルのコスト削減と実験室の工数削減に成功しました。当社は一連のモバイル共通フロントエンド上で実験室全体を運用できるアーキテクチャを完成させました。 これにより、1つの機能のために1つのメカニカルテストベッドに構築された、老朽化していく固定電子機器の問題を解消できます。現在、この新しいアーキテクチャを日常の技術やビジネスシステムに統合し、完全に自動化された実験室を実現できるよう努力しています。 これが実現すれば、人件費に悩まされることなく、将来の革新に向けて自由に設備投資できるようになります。

 

著者​情報:

Scott Christensen
Collins Aerospace

図1. Collins Aerospace社の高揚力作動システム
図2. 作動システムの接続と通信
図3. 物理システムテストで使用する、LabVIEWで開発したシステムテストリグとGUI
図4. Collins Aerospace社のシステムテストリグでは、負荷制御にNIのハードウェアとソフトウェアを使用。
図5. このテストソリューションは物理テストとシミュレーションの両方に対応。設計サイクル全体で同じコントローラとソフトウェアを使用して製品のテストを行う。
図6. 一般的な2チャンネルのSFECUテストリグ
図7. シミュレーションハードウェアと実際のハードウェアの切り替えを可能にする柔軟性に優れたアーキテクチャ。各モジュールはリフレクティブメモリを介して通信を行う。
図8. このテスト構成とGUI管理画面は、この共通アーキテクチャで扱える検査対象デバイスと、サブシステムレベルでアプリケーションを構成する方法を示している。
図9. 航空機GUIの例

UTC Aerospace Systems社、システムテストアーキテクチャ構築

ビデオ1.NIのプリンシパルソリューションマネージャであるNate Holmesが、シミュレーションからハードウェアの検証、適格性確認、MRO (保守、修理、オーバーホール) まで、エンドツーエンドのプログラムテストニーズに対応する、Collins Aerospace社 (元United Technologies Aerospace Systems (UTAS) 社) のD3 (確定的、分散型、ダイナミック) テストアーキテクチャについて説明する。