負荷に関する注意事項、電源・負荷変動、電源出力のカスケード接続、電源信号の切り替えなど、特定のプログラマブルDC電源アプリケーションについて学びます。このチュートリアルは、計測器の基本シリーズの一部です。
安定した電源出力を維持するには、入力電圧、接続デバイス、または負荷の変化に関係なく、所定の出力を維持できることを確認する必要があります。電源変動とは、入力電圧の変化に応じて出力電圧を維持する電源の能力を意味します。この能力は、電源の入力ソースが不安定な状況や、電源がライン調整されていない場合には特に重要です。このような場合、大規模な出力スイングの原因となることがあります。
DC電源はAC入力電源を、求められるDC出力レベルに変換します。一部のDC電源は、求められる出力レベルを達成するために補助電源からの追加電力を必要とします。電源変動は通常、補助電源を必要とする電源について公開されますが、それ以外の場合は指定されていません。したがって、特定の電源が電源変動仕様を公開していなくても心配する必要はありません。
電源変動は、入力電圧に対する電源の安定性を示します。一方、負荷変動は、負荷の変化に応じて一定の出力レベルを維持する電源の能力です。たとえば、10 Wの電源が定電圧モードで10 V出力するように設定されている場合、出力している電流が1 mAでも1 Aでも10 Vを維持する必要があります。負荷変動は、電源の出力能力全体で想定される出力の変動量を表す尺度です。一方、定電流モードでは、負荷変動は、電圧降下の変化に応じた出力電流の変動量を表します。
上述のとおり、負荷条件の変化が、プログラマブルDC電源が想定どおりに機能する能力に影響を及ぼす可能性があります。電力を容量性負荷、誘導性負荷、および逆電流負荷に供給する場合は注意が必要です。不適切に使用すると、出力信号のリンギングの発生や電源の損傷につながるおそれがあります。電源信号のリンギングとは、電流の突然の変化を原因とする過渡から電源が回復しようとするときに発生する出力電圧の不要発振です。リンギングはシステムの安定化能力に影響を与え、測定時間が長くなります。変動のピークが非常に高い場合は、接続回路が破損することもあります。下に、さまざまな負荷条件の一般的なガイドラインを示します。しかし、疑問がある場合は、電源のドキュメントで詳細を確認してください。
図1. 過渡応答が不安定であるか過度に遅い場合、測定時間と確度に影響を及ぼす可能性がある。
一般に、電源は容量性負荷を駆動する場合は安定していますが、デバイスの過渡応答でリンギングが発生する負荷があります。電源のスルーレートは、時間に対する出力電圧変化の最大レートです。これは過渡応答に直接関連しています。電源を使用してコンデンサを駆動するとき、スルーレートは負荷キャパシタンス全体の値で除算した出力電流制限になります(以下を参照)。
スルーレートの式を使用すると、負荷キャパシタンスが高いほど、出力電圧の変化は遅くなります。過渡応答が遅すぎる場合、正確な測定を行うにはシステムが安定化するのを待つ必要があるため、測定に時間がかかる可能性があります。一方、スルーレートが高すぎると、リンギングが発生する可能性があります。さらに、他の負荷条件では、通常コンデンサを使用してリンギングを低減します。
定電圧モードで誘導性負荷を駆動する場合、通常、電源は安定した状態が維持されます。誘導性負荷が定電流モードで動作する電源によって駆動される場合、特に高電流範囲では、電源が不安定になることがあります。このような状況では、出力キャパシタンスを増やすとシステムの安定性の向上に役立ちます。
一部の電源には、ユーザがプログラムできる出力キャパシタンスオプションがあり、キャパシタンス設定を高くして、リンギングの発生を抑えることができます。負荷に平行した外部キャパシタンスを提供して、リンギングを低減することもできます。誘導性負荷を駆動する際にリンギングを低減するために使用される一般的なコンデンサは0.1~10 µFです。ただし、前のセクションで説明したとおり、キャパシタンスが大きいほど、出力応答は遅くなります。したがって、リンギングの影響を抑えるために必要な最小のキャパシタンスを使用する必要があります。通常、過渡から可能な限り早く回復して、回路が望ましくない電圧レベルを受け取る時間を抑えられる出力電圧が必要です。システムが安定した出力レベルに戻るのが速いほど、測定を迅速に行うことができ、結果的に全体的なテスト時間が短縮されます。詳細については、電源のドキュメントを参照してください。
能動負荷では、まれに逆電流を電源に流してしまうことがあります。逆電流が出力端子に適用された場合、第四象限での操作を目的として設計されていない電源が破損する可能性があります。逆電流により、電源が非調整モードに切り替わることがあります。逆電流を回避するには、ブリードオフ負荷を使用してデバイスの出力をプリロードできます。ブリードオフ負荷は、能動負荷が電源に流す同じ量の電流をデバイスから引き込む必要があります。
図2. ブリードオフ負荷を使用して、逆電流によって発生する可能性のある電源の破損を防ぐ。
たとえば、電源が定電圧モードで作動し、30 mAの逆電流を発生する可能性のある能動負荷に10 V供給しているとします。この場合、並列抵抗はブリードオフ負荷として機能し、電源出力をプリロードします。ブリードオフ抵抗の値は、電源出力から流出する電流が能動負荷によって生成される逆電流以上でなければなりません。10 Vを30 mAで除算すると、333 Ωのプリロード抵抗を使用すれば、逆電流に効果的に整合し、電源の破損を防止できることがわかります。
前のセクションで説明したとおり、装置およびテスト環境の負荷条件を理解することが重要ですが、問題が発生した際に投資の保護に役立つハードウェアを選択することもできます。 NI PXIプログラマブル電源は、チャンネル出力保護、補助電源入力保護、加熱保護などの機能を搭載しています。
出力電圧および電流は、マルチチャンネル電源または複数の電源出力をカスケード接続して増やすことができます。アプリケーションによっては、電源の単一チャンネルで出力可能な電圧よりも多くの電圧と電流を必要とする場合があります。電源チャンネルをカスケード接続すると出力の電圧および電力能力を拡張できますが、正しく行わないと電源の破損やユーザの怪我につながるため、特に注意する必要があります。
使用する電源が絶縁出力を備えている場合や複数の絶縁電源を使用できる場合は、チャンネルを直列にカスケード接続して最大出力範囲を簡単に拡張することができます。単一の電源または複数の電源から複数の絶縁チャンネルをカスケード接続するには、図3に示すように、チャンネルを直列で接続します。負荷に供給される最終的な電圧は、個々のチャンネル電圧の合計と等しくなります。
図3. 絶縁電源チャンネルをカスケード接続して出力電圧を増やす。
重要: 電源チャンネルをカスケード接続する場合は、各ピンとデバイスの接地間の電圧が、絶縁電圧の指定最大値より低いことを確認してください。たとえば、デバイスの絶縁仕様で各チャンネルが接地から最大60 VDC絶縁されると記載されている場合、各ピンと設置間の電圧は60 VDCより低くなければなりません。この仕様に従わないと、デバイスの破損やユーザの怪我につながるおそれがあります。
NI PXIプログラマブル電源は絶縁出力のチャンネルを備えているため、複数のチャンネルを直列でカスケード接続してより大きな出力電圧を生成できます。出力チャンネルの組み合わせ方に関する詳細と推奨事項については、ドキュメントと仕様書を参照してください。
使用する電源が絶縁出力を備えている場合や複数の絶縁電源を使用できる場合は、チャンネルを並列接続して電流の最大出力範囲を簡単に拡張することができます。単一の電源または複数の電源から複数の絶縁チャンネルをカスケード接続して電流出力を増やすには、図4に示すように、チャンネルを並列で接続します。電源から負荷に供給される最終的な電流は、個々のチャンネル電流の合計と等しくなります。
図4: 絶縁電源チャンネルをカスケード接続して出力電流を増やす。