3U PXI速度、電力、精度実現したNI PXI-4110プログラマブル電源アーキテクチャ

概要

プログラマブル電源が自動テストシステムの主流コンポーネントへと進化したのは、20~30年前のことです。当時デバイスの設計は、スイッチング電源とリニア電源という2つの基本アーキテクチャのいずれかにほぼ限られていました。どのような製品開発においてもそうであるように、各設計を選択する際にはトレードオフが必須となります。スイッチング電源とリニア電源の選択においても、両方式それぞれの特徴を考慮する必要があります。ただし、3U PXIのサイズで電源を作成する場合には、革新的なアプローチを迫られます。ここでは、NI PXI-4110トリプル出力プログラマブルDC電源の設計における新しい特長、そして小型パッケージでの設計を可能にするスイッチング電源、リニア電源、およびソフトウェアを中核としたハードウェア固有の組み合わせについて説明します。

内容

リニア電源スイッチング電源

初期のプログラマブル電源の設計では、全ての焦点がリニア電源に絞られ、安定した出力電圧を提供することが重視されていました。この初期の設計においては、電力トランジスタは線形 (A級) モードで動作し、出力特性を調整するフィードバックを返します。極めてシンプルな設計概念を基にしたリニア電源には、確度の非常に高い調整、低リプルと低ノイズ、および負荷の変化に対する優れた応答性というメリットがあります。しかし、同時にPXIベースの電源設計にとっては好ましくないデメリットもあります。サイズが大きく、低効率 (5~60パーセントの範囲) であるため、結果として電力を大幅に損失してしまうことです。PXI仕様では1スロットあたり約20 Wの冷却が可能ですが、これはATEシステムに従来必要な電力を供給するには足りません。

テストシステムで正確な電力を供給する方法として最近受け入れられるようになったのが、スイッチ電源を使用する方法です。スイッチング電源では、トランジスタが迅速に整流を切り替えて、デューティサイクルが出力電圧を決定します。その結果、トランジスタのタイミング調整によって、出力電圧の精度が決まります。この方法は、リニア電源の場合よりもはるかに効率が良いというメリットがあり、65~90+パーセントが実現するため、より冷却機能に優れた設計が可能になります。各コンポーネントもずっと軽くなり、サイズも小さく抑えられます。しかし、最適な過渡応答性能を実現することはより難しくなり、スイッチコンポーネントからの電磁妨害に対処する必要があります。結局のところ、上記のメリットを考えても、リニア電源を使用した設計で実現可能な低出力のノイズおよび速度にはやはり勝てません。

3U PXIモジュール使用した設計

では、顧客の期待どおりの性能を実現しながら、極めて限られたスペースで効率の良い電源を設計するという課題は、どのように克服すればよいでしょうか。高精度電源用の単一スロットのPXIモジュールにはスペースの制約があり、大きなヒートシンクや鉄損がある大型変圧器を収容するには無理があります。NIでは、従来のリニア出力アプローチを新しいFPGA制御によるプリレギュレータ回路と組み合わせる方法で、設計上の制約を改善しました。この方法についてもう少し詳しく見てみましょう。

最新のスイッチング電源技術は、かつては10 kg以上の重量があった電源を劇的に小型化しました。技術的には、電源のサイズは、スイッチング速度によって大きく左右されます。原則として、スイッチング速度が速いと、磁性コンポーネントは小さくなります。1980年代半ばから後半にかけてマサチューセッツ工科大学などの研究者達が行っていたのは、1 MHzのスイッチ変換器、アンプ、およびレギュレータを使用するコンセプトを基にした実験でした。過去5年間で、このテクノロジはこうした期待をも上回りました。しかし、その研究成果にも限界があります。それはスイッチング回路の電力損失が大きい場合、ヒートシンクが必要になり、コンポーネントサイズの縮小化に限界があるからです。そこで再び、テクノロジは過去10年間でさらに大きな進歩を遂げました。新しい電源コントローラ集積回路と組み合わせることにより、従来の大型電源と同じ機能を持ちながらも、効率良く、高電力で、なおかつ静音の電源が開発されることになります。

しかし、ここまでの技術進歩では、ある程度の品質の電力しか供給できません。設計の課題には、0 Vにプログラム設定する機能、マイクロアンペアからアンペアまでの電流の検出、負荷およびプログラミングされた入力に対する迅速な応答といったものがまだ残されています。こうした問題を解消し、優れたノイズ性能を実現する最適な方法の鍵は、従来のリニア電源にあります。したがって、最適な総合的ソリューションは、リニア電源とスイッチング電源の両方のテクノロジを結合させることです。

余談ですが、商用のクラスDアンプは、高性能電源設計の一つのオプションでもあります。残念ながら、NIのエンジニアの判断としては、これらは効率的に駆動するスピーカなど、オーディオアプリケーションにとっては革新的なデバイスではあるものの、高確度DC出力が必要になるといった制約を抱えています。結論として、こうした制約から得られる利益は小さいと判断しました。

リニア電源スイッチング電源組み合わせ電源

NI PXI-4110トリプル出力プログラマブルDC電源では、スイッチをトラッキングレギュレータとして設定することによって、従来のリニア電源とスイッチング電源の電力テクノロジが組み合わされています。このモジュールには、2つの絶縁チャンネルが付いており、一つは0~+20 V、もう一つは0~-20 Vの出力が可能です。さらに0~6 Vの出力が可能な非絶縁電源も1つ付いています。いずれもチャンネルあたり最大1 Aの電源出力が可能です。これらの基本的な電源出力仕様に加えて、優れた分解能と低ノイズを特長とするNI PXI-4110は、電圧または電流ソースとして最適です。

PXI-4110の線形出力制御は、図1に示したとおりです。線形ステージの中心となるテクノロジは、Linear Technology社のLT1970可変高精度電流制限付きパワーオペアンプです。LT1970には、PXI電源を実装するためのメリットが複数あり、それらはサイズが小さいことや「オンザフライ」の電流制限だけにはとどまりません。これらは特にATEアプリケーションにとって役立つ特長です。従来、出力が定電圧または定電流を制御できるため、これは「VI制御ブロック」と呼ばれていました。入力設定および出力負荷に基づいて、ディスクリートオペアンプ、ダイオード、および抵抗によって実装されていました。このVI制御ブロックが従来のソースメジャーユニット (SMU) の中核をなしています。そのため、LT1970 VI制御ブロックを使用すると、NI PXI-4110 SMU同様の動作が可能になります。



図1:Linear Technology社のLT1970はNI PXI-4110電圧/電流制御ブロックの核である。


LT1970で供給できる以上の出力電圧/電流が必要となったので、出力範囲に対処できるよう、アナログ「変換」回路を設計しました。この方式で出力制御と計測の両方がスケーリングできることが必要でした。図2は、この双方向変換を表す基本要素を示しています。この変換を可能にする設計には、重要点がいくつかあることを覚えておく必要があります。

  • 出力を0 Vに設定することが必要である。
  • サブマイクロアンペア単位のリーク電流で、電圧および電流の両方を0 Vまで計測できる必要がある。
  • 任意の負荷またはキャパシタンスから電流をシンクさせて、0 Vに近い出力でも優れた応答時間を維持する必要がある。
  • 過電圧入力という状態を許容できる必要がある。

 



図2: 線形調整ステージは非常に低い電圧および電流を供給/計測するように設計する。


LT1970はオペアンプとして動作して、ディスクリート出力デバイスを駆動し、必要な出力電圧への変換を行います。各チャンネルにディスクリートMOSFET出力を使用すると、出力電流はLT1970の3倍以上の電圧コンプライアンスで、LT1970の10倍以上に上がります。同様に、高速オペアンプ/FETの組み合わせを電流検出変換器として使用して、電流シャントを通過する電圧をLT1970レール内にまで引き戻します。その結果として、高速制御ループが実現し、幅広い負荷範囲に対して優れた過渡応答および安定性が実現できます。この電流検出変換器は、ダイナミックレンジとノイズにも最適化されているため、0 Vまでの電圧とマイクロアンペア以下のレベルの電流を検出することができます。

非絶縁チャンネル0では、スイッチ変換器としてLinear Technology社のLT1773ブーストバックコンバータが使用されており、出力の動的調整が行われます。チャンネル0の制御出力は、信号調整を使用してLT1773にフィードバックされ、結果として、LT1773の出力はチャンネル0の出力に対して0.数ボルト程度高くなります。したがって、線形レギュレータの全てのメリットを持った極めて電力効率の良いスイッチ設計が実現します。

トラッキングレギュレータを上記のような出力アンプと直接組み合わせることで、非絶縁チャンネルに対応できるようになります。絶縁チャンネル1と2を持ったスイッチレギュレータは、約200 kHzで動作する比較的シンプルな高電力DC-DC変換器から構成されています。変換器の入力ドライブは、スイッチとなるMOSFETに適用されるドライブ信号のデューティサイクルを変更できるFPGAによって合成されます。FPGAのメリットである自動制御のソフトスタート/ランプアップにより、PXIバックプレーンから引かれる過渡電流を緩やかに増加させて、NI PXI-4110をPXI仕様の範囲内で動作させることができます。

絶縁チャンネルでは、ガルバニック絶縁 (図3) のため、スイッチレギュレータ制御に対して直接的なアナログフィードバック経路はありませんが、こうしたチャンネルには絶縁A/D変換器 (ADC) とデータ経路がすでに存在しているため、電流と電圧のリードバックが可能です。このADCは、常に出力電圧および電流を監視しています。したがって、線形出力アンプに供給する入力レールを監視するように切り替えることが可能な場合、この信号を絶縁フィードバックとして使用することが可能です。こうして、FPGAを使用してFETドライブのデューティサイクルをDC-DC変換器に対して変調することができます。これにより、デジタル制御のソフトウェアインザループPIDアルゴリズムを効果的に提供して、事前に調整した入力を線形ステージに対して管理します。これら全ては、これら以外の理由から既に設計に必要とされているコンポーネントを使用して行うことができます。このようにして、3U PXIモジュールを使用したコスト効率の高い柔軟な設計が完成します。この設計は、電源要件が追加された際には拡張が可能です。


図3:NI PXI-4110の非絶縁チャンネルはA/D変換器 (ADC) を利用して、電流/電圧測定リードバック機能として同じデータパスを使用し、スイッチの事前調整要素を制御する。


ソフトウェアで構成可能なこの制御ループを使用すると、複数のメリットがあります。まず、出力アンプを組み合わせる前に、プリレギュレータが必要な場所を予測することができます。図4はこれを正しく実装することの重要さを示しています。次に、応答はシステムの効率を最適化するように調整することができます。最後に、電力がPXIバックプレーンと外部ソースのどちらから入力されるのかによって、制御アルゴリズムを調整して性能を最適化できます。重要なのは、PXIバックプレーンから入力される電力を注意深く管理して、製品全体のPXI電力仕様を満たすようにすることです。



図4:NI PXI-4110のFPGAに実装されたPID制御アルゴリズムは、負荷または入力電力に生じる全ての変化に対して解析と修正を行って、プリレギュレータの出力電力を線形ステージに対して不足のないようにする。


NIでは、電圧のみの調整では不足であるという結論に達しました。その代わり、最適な応答は、線形レギュレータで消費される電力を調整することによって得られると判断しました。この根拠が図5に示されています。負荷が少なく、低いデューティサイクルで実行されるとき、DC-DC変換器は、電圧ソースというよりは電流ソースのように動作する傾向にあります。電流ソースの出力に突然負荷が生じると、出力は急速に低下します。つまり、PID制御が応答するための時間を与えるために、電圧ヘッドルームがさらに必要になります。これに対処するには、電力調整を使用して、負荷が軽い状況下で出力電圧ヘッドルームがはるかに大きくなるように自動で調整します。



図5:電圧とは対照的に、電力はNI PXI-4110で調整され、負荷の急激な変化に対して補正する。十分なヘッドルームが常に維持され、プリレギュレータレールと出力電圧の間の「クラッシュ」を防ぐ。


このような柔軟性を示す別の例として、入力電源 (この場合はPXIバックプレーン) からの電力の最適化があります。PXIシャーシから得られる電力は制限されているため、9 Wを超えるアプリケーションには補助電源を供給する必要があります。しかし、多くのアプリケーションは9 W未満の電源で対応できますので、こうした状況では、PXIバックプレーンを補完する必要は生じません。このアプローチを使用して、FPGAにある異なるPID定値を使用して、補助電源の代わりにPXIバックプレーンからの電力を供給します。PXIバックプレーンから得られる以上の電力が必要な場合、PID定値を変更して、効率とステップ応答の間でのトレードオフをさらに最適化します。

NI PXI-4110の設計では、LabVIEWグラフィカルプログラミング言語を大いに活用して、ソフトウェアPIDをシミュレーションし、コードをVHDLに変換して、FPGA上に実装しました。こうすることにより、あらゆる使用例および出力負荷状況が確認できしだい、すぐにそれらのアイデアを試すことができるという大きな柔軟性が生まれました。例えば、事前調整された出力が入力ステップ変更のリクエストに確実に応じるように、1 Aのフル出力負荷がクロックサイクルのプリセット値に対して対応できるようなデューティサイクルにPIDをデフォルト設定しました。つまり、リクエストされた出力状態と出力負荷の組み合わせがフル電流を必要とする場合、線形出力ステージには対応に必要なヘッドルームが常にあるということになります。制御ブロックダイアグラムとその例外は、LabVIEWをシミュレータまたは「サンドボックス」として使用しなければ、まとめることが困難だったといえます。

確度ソースアプリケーションため20 mA電流範囲

電源メーカに対するユーザの切実な要望の一つに、サブマイクロアンペア単位の電流の計測感度がありました。従来、電源は数mA未満は計測しません。こうした計測には、SMUなどの計測製品の購入を強いられることになりますが、コストは電源の2~3倍にはね上がります。それに加えて、追加の高確度製品 (おそらくスイッチなどのコンポーネント) をシステムに統合するという課題が生じ、システムのコストはさらに膨れ上がります。NIのエンジニアは、NI PXI-4110にサブマイクロアンペア単位の感度を持たせ、20 mA範囲を追加することによって、こうしたニーズを満たすことを選択しました。その結果、従来の電源の100~1000倍の出力分解能/計測リードバックの感度が実現します。これによって、システムにかかるコスト、計測を開始するまでの時間、および必要なベンチスペースを大幅に削減します。高精度の電流測定アプリケーションには、半導体機器の特性評価、IV測定、バッテリ電源システムのリーク電流テストなどがあります。

NI PXI-4110入力電力供給

NI PXI-4110の市場調査によると、アプリケーションの多くは、数ワットの出力電力しか必要でないことがわかりました。この程度であれば、PXIバックプレーンからの直接供給で間に合います。こうしたアプリケーションにわざわざ外部電源を供給するのは面倒です。一方、単一PXIスロットで得られる電力では、約10 Wを超える電力が必要なアプリケーションでは不足です。こういった理由から、NI PXI-4110でどちらのニーズも満たせるようにしました。NI APS-4100補助電源は、高電力アプリケーションに対応するため、NI PXI-4110用のアクセサリとして開発されたものです。

初期の実験では、このデバイスで2つの電源をサポートすることは簡単ではないことがわかっていました。例えば、外部電源から電力を供給しているときに、この電源が突然消失した場合、PXIバックプレーンからの電力サージがPXI仕様を超えてしまい、保護ヒューズまで作動してしまいます。こうした場合は、適切なハードウェアおよび制御ソフトウェアによって、PXIバックプレーンから供給される、またはPXIバックプレーンに適用される超過電力の原因となり得るこの状態を「ロックアウト」する必要があります。図7に示したのは、この概念です。



図7: NI PXI-4110の入力電力は、PXIバックプレーンまたは11~15.5 Vの外部電源から供給される。

NI PXI-4110入出力保護

ATEシステム、および教育機関などの研究室におけるセッティングには、プログラマブル電源の堅牢性が不可欠です。ATEシステムのデバッグ中には、電源の出力を不注意から間違った場所に接続する可能性があります。実験環境では、ノードが偶然短絡したり、不適切に接続されることも少なくありません。つまり、NI PXI-4110は、数多くの過負荷状態に対応することを考慮して設計されています。NI PXI-4110の主な保護要素を以下にまとめました。

  • チャンネル出力保護 - 各チャンネルは当然、プログラミングによって電流および電圧が制限されています。さらに、各出力は逆極性電圧アプリケーションから保護されています。また、出力ヒューズによる保護がさらに追加され、致命的な障害を最後のラインで防げるようになっています。必要であれば、ボードの予備ヒューズでダウンタイムを最小限に抑えることができます。
各出力は、外部アプリケーションの過剰電圧からも保護されており、チャンネルの最大入力電圧から、更に15 V上乗せして保護されます。したがって、例えば、20 Vチャンネルは、モジュール外部のアプリケーションからの最大35 Vの電圧を許容します。6 Vチャンネルの保護レベルはさらに高くなっています。出力が6 Vに制限されているので、チャンネル0に加わる過剰電圧は全ての出力をシャットダウンし、ユーザに対して警告を発します。
  • 補助電源入力保護 - 補助電源入力を使用すると、チャンネル1および2 (+20および-20 V) はそれぞれ最大20 Wを供給できるようになります。NI PXI-4110は補助電源として、外部電力デバイスが使用できるため、モジュールの保護には適切なステップを踏む必要があります。
補助電源入力に対する動作電圧範囲は、11~15.5 Vです。こうした制限を超える電圧が検出された場合、モジュールは供給される入力電圧が範囲内になるまでシャットダウンします。20 Vを超過する電圧が入力チャンネルに加えられると、入力のクローバ保護がオンになり、ほとんどの場合、入力ヒューズが飛んでしまいます。これによって、入力ソリッドステートスイッチングデバイス (およびプリレギュレータ電源) が過電圧による障害から保護されます。
  • 過熱保護 - NI PXI-4110の設計は従来のものであり、内部の公称温度が上昇すると出力デバイスのインテリジェントPID制御によって動作します。ただ、障害 (極度に汚れたシャーシのファンフィルタ、吸気口のつまり、シャーシのファン障害など) が発生した場合、出力チャンネルはシャットダウンして、警告が表示されます。過熱状態は、ユーザのソフトウェアによるリセットを必要とします。このようにして、システム障害が発生した場合でも、極度の高温による過熱からモジュールを保護します。

プログラミング高速

自動テストシステムでは、どのような計測器でも最も重要な性能の特性の一つに速度が挙げられます。NI PXI-4110の場合、プログラミングの速度と通信バスが主な差別化ポイントとなります。

NI PXI-4110がPXIバスを中心に構築されているということが、プログラミング速度の高速化に大きく貢献しています。設定パラメータの送信およびデータの取得は、132 MB/秒のPXIバス速度により高速化されます。3つの電源チャンネルそれぞれに対して、電圧/電流のプログラミングおよび測定パラメータ、またステータス情報 (コンプライアンスリミット、警告、エラー、温度など) が必要となるため、データを双方向に転送するには、従来のバスソリューションでは速度面で不都合が生じる場合があります。PXIによって、このデータは、従来の計測器バスアーキテクチャ (GPIBまたはRS232) で必要とされた数ミリ秒または数十ミリ秒単位と比較して、マイクロ秒単位のタイムフレームで転送できます。つまり、ソフトウェアとデータ経路のオーバーヘッドがNI PXI-4110では事実上無視できるレベルになったということです。

NI PXI-4110の測定アーキテクチャは、従来の測定アプローチに対してフィードバック速度の面でもメリットがあります。ADCアーキテクチャの統合は従来から行われており、電源回路内部の測定に使用されています。これらのADCはノイズ面ではメリットがありますが、速度を最大限に高められるような柔軟性はありません。高精度電源やSMUなどのダイナミック刺激応答デバイスに搭載された場合では特にそうです。多チャンネル電源の場合、速度の遅いADCでは、出力状態を表示するのに必要な複数のパラメータを取得するための大きなオーバーヘッドが生じます。

図8は、NI PXI-4110に採用されたアーキテクチャを示しています。NIの高速データ収集システムに採用された測定エンジンと同様のエンジンが基になっています。ADCは、200 kS/秒、16ビット、広帯域幅を持つ変換器で、一つは非絶縁チャンネル用、もう一つは2つの絶縁チャンネル用です。前述のとおり、ADCは、測定リードバックとPID制御の両方に使用できます。計測器の実質のループ速度は、3 kS/秒範囲内です。言い換えれば、計測器エンジンは300 µ秒ごとに6つの測定データを返すということです。つまり、3つのチャンネルそれぞれに対して電圧および電流出力、またPIDループデータを返します。これは、全てのチャンネルの整定時間を同時に監視するのに十分な速度であり (ミリ秒単位の立ち上がり時間)、ユーザが必要とする任意の刺激応答ステップ波形に必要な速度を上回ります。



図8: NI PXI-4110の測定アーキテクチャでは、各チャンネルの電圧/電流の高速リードバックを行ってから、PXIバックプレーンを通してユーザにデータを送信することが可能である。


複数の測定データの平均値を用いて制御することで、測定ノイズの影響を抑えています。デフォルトでは10個のデータの平均を取りますが、このデフォルトはアプリケーションの必要に応じて選択または変更することができます。絶縁データは、高速MEMSベースのデジタル絶縁を使用して、10 Mb/秒シリアルデータパス経由で高速転送されます。

結論

現在、自動テストシステムは設置面積がますます制限され、かつ高性能が求められるようになっており、遅れを取らないためには画期的な電源設計が必要です。NI PXI-4110トリプル出力プログラマブルDC電源は、スイッチング電源とリニア電源の両方の電源設計の長所を採用して、単一スロットの3U PXIモジュールに収まる小型の高分解能ソースを実現します。この製品をPXIモジュールなどの世界最高水準のモジュール式計測器と組み合わせて使用すれば、いかなる業界におけるいかなる問題にも対処可能な、柔軟かつ効率的なテストシステムをより開発しやすくなります。


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