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オシロスコープ選択する考慮すべ10項目

概要

今日のデジタルストレージオシロスコープは、ドイツの物理学者カール・フェルディナント・ブラウンが1897年に発明した陰極線オシロスコープとは大きく異なります。技術の進歩が新しい機能を生み出し続け、オシロスコープはエンジニアにとって使いやすく改良されてきました。そういったオシロスコープの変遷において最も重要な改良の1つは、デジタル領域への移行です。これにより、デジタル信号処理や波形解析といった強力な機能が実現されました。今日のデジタルオシロスコープには、高速低分解能 (通常8ビット) ADC、定義済みの制御/表示機能、一般的な計測に使用されるソフトウェアアルゴリズムを実行する内蔵プロセッサが備わっています。

オシロスコープはPCベースのため、計測機能をソフトウェアで定義できるというメリットがあります。その結果、オシロスコープを使用すれば、一般的な計測だけでなく、カスタム計測を実行することができ、さらには、スペクトラムアナライザ、周波数カウンタ、超音波計測器としても利用することができます。オープンアーキテクチャとソフトウェアの柔軟性は、オシロスコープに従来のスタンドアロンのオシロスコープにはない複数のメリットをもたらしています。オシロスコープを選ぶ際には、計測器の選定に関する多くのポイントを考慮し、用途に合ったものを選ぶ必要があります。

このホワイトペーパーでは、新しいオシロスコープを検討する際に考慮すべき10の条件を解説します。

内容

帯域幅

帯域幅は、入力信号が最小の振幅損失でアナログフロントエンドを通過できる周波数の範囲で、プローブの先端またはテスト装置からA/D変換器 (ADC) の入力までの間を指します。帯域幅は、-3 dBポイントとして知られる、正弦波入力信号が元の振幅の70.7%に減衰する周波数が仕様とされています。

一般的に、信号の最も高い周波成分の2倍以上の帯域幅でオシロスコープを使用することが推奨されます。

オシロスコープがよく使用されるのは、デジタルパルスなどの鋭角な信号の立ち上がり時間を計測する場合です。こうした信号は高周波からなります。信号の正しい形状を集録するには、高帯域オシロスコープが必要です。例えば、10 MHzの方形波は、10 MHzの正弦波と無数の高調波からなります。この信号の正しい形状を集録するには、これらの高調波を複数集録できるだけの帯域幅を持つオシロスコープを使用する必要があります。使用しなかった場合、信号が歪み、正しい計測結果が得られません。

 

 

NI PXI-5152オシロスコープの20 MHzノイズフィルタをかけて集録した5 MHz方形波

 

NI PXI-5152オシロスコープの300 MHz帯域幅で集録した5 MHz方形波

図1.高周波成分の波形を集録する場合、高帯域オシロスコープが重要な役割を果たす

 


大まかですが、次の公式を使用すると、信号の立ち上がり時間 (信号の振幅が10%から90%に変化するのに要する時間として定義する) を基にした信号の帯域幅を求めることができます。

 

立ち上がり時間 = 0.35÷帯域幅

図2.立ち上がり時間は、信号がフルスケール値の10%から90%になるまでにかかる時間を指します。  立ち上がり時間と帯域幅は直接関係しており、上記の公式を使用して一方から他方を計算できます。

 


上記の公式で求められる信号の帯域幅の3~5倍の帯域幅を持つオシロスコープを使用するのが理想的です。言い換えれば、オシロスコープの立ち上がり時間が、信号の立ち上がり時間の1/5~1/3であると、信号集録時のエラーが最小限に抑えられるということです。次の公式を使用すれば、いつでもバックトラッキングして信号の正しい帯域幅を算定できます。



= 計測した立ち上がり時間、 = 信号の実際の立ち上がり時間、 = オシロスコープの立ち上がり時間

 

サンプルレート

ここまでは、帯域幅の説明をしてきました。帯域幅はオシロスコープの最も重要な仕様の1つです。ただ、高帯域幅は、サンプルレートが不十分な場合、それほど有用であるとは言えません。


帯域幅が最小の減衰でデジタル化できる最高周波数の正弦波であるとすれば、サンプルレートは単純に、オシロスコープのADCが入力信号をデジタル化する際の記録タイミングのレートです。サンプルレートと帯域幅には直接関連がないことにご注意ください。ただ、これら2つの重要な仕様に望ましい関連性を持たせる経験則があります。

 

オシロスコープのリアルタイムサンプルレート = オシロスコープの帯域幅の3〜4倍

 

ナイキスト定理では、エイリアスを防ぐために、オシロスコープのサンプルレートが、計測中の信号の最高周波数成分の2倍以上の速さである必要があると定義しています。しかし、サンプリングが最高周波数成分の2倍の速さであるというだけでは、時間領域信号を正確に複製することはできません。入力信号を正確にデジタル化するには、オシロスコープのリアルタイムサンプルレートはオシロスコープの帯域幅の3~4倍以上である必要があります。その理由を理解するには、下の図にあるデジタル化された信号を見て、どちらがオシロスコープで見たいと思うか考えてみてください。

 

 

図3.右の図が表しているのは、信号を正確に複製するのに十分高いサンプルレートを持ったデジタイザです。これを使用すると、より正確な計測結果を得ることができます。

 

フロントエンドアナログ回路を通過する実際の信号が同じでも、左の図では、サンプリング数が少なく、デジタル化された信号が歪められています。一方、右の図では、信号を正確に複製するのに十分な数のサンプリングがあるため、より正確な計測結果が得られます。エラーのない信号の表示は、立ち上がり時間、オーバーシュート、その他のパルス計測など、時間領域のアプリケーションでは重要です。したがって、高いサンプルレートを持つオシロスコープはメリットとなるのです。

 

 

サンプルモード

主なサンプルモードは2種類あります。リアルタイムサンプリングと等価時間サンプリング (ETS) です。

リアルタイムサンプルレートは上記でも述べたADCのクロックレートで、シングルショットで集録できる入力信号の最大レートを指します。一方、ETSは、1つ1つをシングルショットモードで集録したトリガ波形の連続を基にした信号の複製方法です。ETSのメリットは、より高い有効サンプルレートを得られることです。しかし、デメリットとして、より時間がかかることと、繰り返し信号の場合でしか適用できないことが挙げられます。注意していただきたいのは、ETSはオシロスコープのアナログ帯域幅を拡張するわけではなく、高いサンプルレートで信号を複製する必要がある場合にのみ便利であるという点です。ETSを実装した一般的なものがランダムインタリーブサンプリング (RIS) で、下の表に記載されたナショナルインスツルメンツのオシロスコープのほとんどで採用されています。

 

分解能ダイナミックレンジ

上記で述べたとおり、デジタルオシロスコープはADCを備えており、信号をアナログからデジタルへ変換します。ADCから返されるビット数がオシロスコープの分解能です。ある入力範囲に対して、信号のデジタル表示に使用される離散準位は、2bです。bは分解能を表します。この入力範囲は2bステップに分割されるため、オシロスコープで検出できる最も小さい電圧は、(入力範囲/2b) で示されます。例えば、8ビットオシロスコープが、10 Vppの入力範囲を39 mVの準位28 = 256にそれぞれ分割するところ、24ビットオシロスコープは、同じ10 Vppの入力範囲を596 nVの準位224 = 16,777,216に分割します (8ビットの場合より、約65,000倍小さい)。

高分解能のオシロスコープを使用する目的の1つには、小さい信号を計測することが挙げられます。低分解能の計測器を使用して、小さい入力範囲で信号に「ズームイン」する方法で小さい信号を計測してはいけないのか、という質問がよくあります。 しかし、信号の多くは大小両方の信号成分を含んでいます。入力範囲が大きいと、大きな信号は計測できるかもしれませんが、小さな信号は大きな信号のノイズにさらされます。一方、入力範囲が小さいと、大きな信号をクリップすることになり、正しい計測結果は得られません。したがって、ダイナミック信号 (大小の電圧成分を持つ信号) を含むアプリケーションの場合、広範なダイナミックレンジを持つ高分解能の計測器が必要となります (つまり、大きな信号に混じって小さい信号を計測できるオシロスコープの能力が必要となります)。

 

トリガ

通常、オシロスコープを使用するのは、一定のイベントに基づいて信号を集録する場合です。この計測器のトリガ機能は、このイベントを分離しイベントの前後の信号を集録します。ほとんどのオシロスコープには、アナログエッジトリガ、デジタルトリガ、およびソフトウェアトリガ機能が備わっています。その他のトリガ機能には、ウィンドウ、ヒステリシス、およびビデオトリガ機能があります。

ハイエンドオシロスコープでは、トリガ間の再構成時間が短いため、複数レコード集録モードを使用できます。オシロスコープは任意のトリガに対して指定した回数の集録を行い、すばやく再構成し、次のトリガを待機します。再構成時間が短いと、オシロスコープがイベントまたはトリガを逃すことがありません。複数レコードモードは必要なデータのみを集録し、保存する場合に非常に便利です。これにより、オンボードメモリの使用状況を最適化し、PCバスの動作を制限することができます。

 

オンボードメモリ

多くの場合、データはオシロスコープからPCに転送され、計測と解析が行われます。これらの計測器は数GS/秒に及ぶ最大レートでサンプリングできますが、PCへのデータ転送レートは、PCI、LAN、GPIBといった接続バスの帯域幅によって制限されます。現在、こうしたバスで数GS/秒のデータ転送レートを維持することはできませんが、PCI ExpressおよびPXI Expressが進化して数GB/秒のデータレートに対応すれば、それが可能になります。

インタフェースバスが、集録時のサンプルレートでの連続データ転送を維持することができない場合、計測器のオンボードメモリを使用すれば、最大レートで信号を集録してから、データをPCに転送して処理することが可能です。

 

大容量メモリは集録時間だけでなく、周波数領域でもメリットがあります。最も一般的な周波数領域計測は、高速フーリエ変換 (FFT) で、信号の周波数成分が表されます。FFTの周波数分解能が高いと、離散周波数がより簡単に検出されます。

 

 

上記の公式では、周波数分解能を向上させるのに2つの方法があります。サンプルレートを低減する、またはFFTのポイント数を増やすという方法です。サンプルレートの低減は、周波数スパンをも低減してしまうため、理想的なソリューションとはいえない場合があります。この場合の唯一の解決策は、FFTのポイントを増やす方法で、これには大容量のオンボードメモリが必要になります。


 
図4.オンボードメモリを増やすと、高いサンプルレートで長時間サンプリングし、より多くのポイントを収録できます。  FFTの計算時に、より多くのポイントを使用すると、周波数分解能が向上します。

 

チャンネル密度

オシロスコープを購入する際に重要な要素となるのは、計測器のチャンネル数、または同期させる複数の計測器によってチャンネルを追加できる機能です。ほとんどのオシロスコープには、2~4個のチャンネルがあり、全てのチャンネルにおいて一定のサンプルレートで同時に集録が実行されます。全チャンネルを使用した場合に、サンプルレートにどのような影響があるのかを考慮するのは重要です。その理由は、よく使用される時間インタリーブサンプリングと呼ばれる技術にあります。これは、複数のチャンネルをインタリーブして、高いサンプルレートを実現する技術です。オシロスコープにこの方式が採用されていて、全てのチャンネルを使用した場合でも、最大レートでの集録が可能とは限りません。

必要となるチャンネル数は、アプリケーションによって決まります。従来の2~4個のチャンネルでは、アプリケーションによって十分でない場合がよくあります。そういった場合の選択肢は2つあります。1つは、チャンネル密度の高い製品を使用する方法です。例えば、NI PXIe-5105オシロスコープ (8チャンネル (同時サンプリング)、12ビット、60 MS/秒、60 MHz) などです。 分解能、速度、帯域幅の要件を満たす計測器が見つからない場合は、緊密な同期によってテストシステムが拡張できて、トリガおよびクロックの共有が可能なプラットフォームの使用を検討します。GPIBまたはLANを使用して複数の箱型オシロスコープを同期させるのが、高遅延、スループットの限界、外部ケーブルの利用といった理由により、実質不可能なのに対し、PXIは優れたソリューションとなります。PXIは業界標準であり、PCIやPCI Expressといった既存の高速バスに対して、優れた同期技術をもたらします。

図5.同期技術を使用すると、多チャンネルのオシロスコープを作成できます。  上の画像は、最大68チャンネルを提供するシステムを示しています。  複数のシャーシを同期すれば、チャンネル数をさらに増やすことができます。

 

複数のデバイスの同期は、多くのアプリケーションで重要な要件となります。ソフトウェア開発時間にも関わってくる可能性が大いにあります。 しかし、NIオシロスコープは、SMC (Synchronization and Memory Core) アーキテクチャで構築されており、NI-TClkを利用することができるため、最も短い開発時間で正確な同期を取ることができます。 NI-TClkのAPIを使用して、複数のNIオシロスコープ、任意波形発生器、および高速デジタルI/Oデバイスを同期させるためのプログラミングを行うことができます。 さらには、こういった同期を行うためのあらゆるサンプルプログラムも用意されているため、計測を迅速かつ簡単に開始することができます。 下記に示したのは、LabVIEW環境でプログラミングした、複数のPXIオシロスコープにおける同期を実行するのに必要な3つの機能 (niTClk同一トリガを構成、niTClk同期、niTClk開始) です。

  

複数計測同期

ほとんど全ての自動テストおよび多くのベンチトップアプリケーションには、オシロスコープ、信号発生器、デジタル波形アナライザ、デジタル波形発生器、スイッチといったように様々な計測器を使用します。

PXIおよびNIモジュール式計測器が本来備えているタイミング/同期機能を使用すると、外部ケーブルなしでこれらすべてのタイプの計測器を同期させることができます。 たとえば、PXIオシロスコープPXI波形発生器を統合すると、パラメータスイープを実行でき、検査対象デバイスの周波数や位相応答の特性評価をする場合に役立ちます。スイープ全体を自動化することができるため、オフライン解析の前にスコープや発生器のパラメータを手動で設定する必要がなくなります。PXIのモジュール式アプローチは、桁違いの速度の向上と、煩わしい作業なしで結果のみに集中できるという効果をもたらします。

ミックスシグナル機能

前述のように、このT-Clk機能を使用すれば、1つのPXIシャーシで最大136個のチャンネルを同期させるシステムを構築できたり、複数のシャーシで最大5000チャンネルのシステムを構築できたりします。さらには、異なるタイプの計測器を同期させることもできます。例えば、NIオシロスコープは、T-Clk機能を使用して、信号発生器、デジタル波形発生器、およびデジタル波形アナライザと同期させることができ、ミックスドシグナルシステムを構築できます。

 

 
図6.上記のVIは、ミックスドシグナルオシロスコープ (アナログおよびデジタル入力) 機能用に構成されたアプリケーションを示しています。 デジタルまたはアナログ出力機能をアプリケーションに追加しても、全ての計測器を同期できます。


デジタル機能に制限のあるミックスドシグナルオシロスコープで妥協するのではなく、モジュール式PXIオシロスコープを任意波形発生器およびデジタル波形発生器/アナライザと共に使用して、完全なミックスドシグナルアプリケーションを構築すれば、オシロスコープとロジックアナライザの両方のメリットを活用できます。

 

ソフトウェア、解析機能、カスタマイズ性

ソフトウェアおよび解析機能の選択は、モジュール式オシロスコープとスタンドアロンのオシロスコープのどちらをアプリケーションに使用するかを決定する場合に鍵となります。

スタンドアロンのオシロスコープはベンダ定義ですが、モジュール式オシロスコープはユーザ定義のため、柔軟性があり、アプリケーションの幅が広がります。箱型オシロスコープが提供する標準機能の多くは、大半のエンジニアに共通するニーズに対応しています。ご想像のとおり、こうした標準機能では、全てのアプリケーションの問題、特に自動テストアプリケーションの問題には、対応しきれません。オシロスコープによる計測を定義する必要がある場合、モジュール式オシロスコープを選択すると、スタンドアロンのオシロスコープの固定機能と違って、PCのアーキテクチャを活用しながら、ニーズを満たすようにアプリケーションをカスタマイズできます。

ナショナルインスツルメンツのオシロスコープ全製品は、無料のNI-SCOPEドライバソフトウェアを使用してプログラミングします。このドライバには、NIオシロスコープのフル機能を活かすサンプルプログラムが50以上含まれており、付属のNI-SCOPEソフトフロントパネルは、オシロスコープに似た、使いやすいインタフェースを持っています。また、NI LabVIEW、LabWindows/CVI、Visual Basic、.NETなどのプログラミング言語を使用したプログラミングにより、1つのハードウェアで一般的な計測とカスタム計測の両方を実現することができ、アプリケーションの幅を広げることができます。このドライバにより、Express関数をNI LabVIEWで利用することもできます。

 

図7.NIオシロスコープをNI LabVIEW Jitter Analysis (ジッタ解析) ツールキットと組み合わせて、NI LabVIEW内で信号整合性を計測できます

 

  

オシロスコープデジタイザ違い

インラインFPGA処理を行う場合など、高いカスタマイズ性が必要な場合は、オシロスコープよりもデジタイザの方がアプリケーションに適している場合があります。たとえば、FlexRIOデジタイザは高性能のアナログ/デジタル変換器を備えていながら、より詳細なカスタマイズが可能です。オシロスコープは、柔軟なフロントエンド、および選択可能な入力レンジや入力設定を備えた汎用テスト装置として使用されますが、デジタイザは通常、科学計測器や医療計測器の設計または試作など、特定の用途を対象としたソリューションとして使用されます。

モジュール式オシロスコープとは異なり、FlexRIOデジタイザは、固定式のアナログフロントエンドを備えており、購入してすぐに使用できるソフトウェア機能はわずかしかありません。また、NIST認定製品と異なり、標準/計測仕様を備えています。一方で、FlexRIOデジタイザでは、通常、複数の集録速度を使用できるほか、FPGAを使用して多くのカスタマイズやインライン信号処理を行うことができます。

ステップへ

モジュール式オシロスコープとスタンドアロンのオシロスコープはどちらも電圧を集録するために使用されますが、それぞれのメリットは異なります。 ただし、どの製品を購入する場合でも、本稿で取り上げた項目について検討することが重要です。  アプリケーションの要件、コストに関する制約、性能、将来の拡張性を事前に検討しておくことにより、全てのニーズに最も適した計測器を選定することが可能になります。