ASAM ODSは、テスト、評価、シミュレーションアプリケーションで収集されたデータの一般的な解釈方法を簡素化する目的で策定された規格です。 この規格が現在普及しているのは、さまざまな要件を持つ多彩なテスト/計測アプリケーションに適用可能な、安定性と順応性を兼ね備えた拡張可能なモデルが採用されているからです。 NIは、モデル駆動のUSI (Universal Storage Interface) テクノロジを介して、ASAM ODS規格で定義された、データの保存や回収を目的とするインタフェースの複雑さと詳細の一部をユーザに対して抽象化します。USIは、すべてのデータソース (一般的なファイルやデータベース形式を含む) に共通の入力および出力ルーチンをまとめてグループ化する、基盤となるデータ通信レイヤです。 NI DIAdem 2010で導入されたASAM ODSブラウザは、USIの力を活用して刷新され、ASAM ODSデータソースに対応する強力なクライアントツールとなりました。これにより、科学者やエンジニアは、ASAM ODSを適用することで、柔軟性の高いソリューションを実現することができます。ASAM ODSの詳細については、入門向けホワイトペーパーASAM ODS 101をご覧ください。
ASAM ODS規格は、データの保存や回収を目的としたインタフェースを定義します。 ただし、データの保存や回収を目的としたインタフェースの標準化は、ASAM ODSに限られたものではありません。実際、多くのデータベースやファイル形式でも、似たようなアプリケーションプログラミングインタフェース (API) が定義されています。これらのインタフェースは、物理的な記録媒体にデータを読み書きする際に必要な処理を明確に規定するものです。 NIは、さまざまな形式をまたいだデータの保存や回収を目的とした標準定義インタフェースを基に、多くのNIソフトウェア環境にみられるデータ通信用の基盤となるソフトウェア抽象化レイヤであるUSI (Universal Storage Interface) テクノロジを構築しました。 USIは、データの保存や回収に必要な低レベルのプログラミングからASAM ODSを含むほとんどの形式でユーザを抽象化します。 たとえば、USIを使用すれば、ユーザは、オペレーティングシステムのコマンドに関する基本的な知識を持っていなくても、ディスク上でASCIIファイルを作成することができます。同様に、USIは、ユーザからのデータの保存や回収を目的として、ASAM ODSアクセス関数の複雑な詳細を抽象化します。
DIAdemは、USIの力を余すことなく活用できるASAM ODSデータソース用のブラウザを提供します。 DIAdemは、ASAM ODS規格に対する将来の追加や変更にも対処できる拡張性を備えた通信インタフェースを提供します。また、ASAM ODS AOPサーバに保存されたデータだけでなく、標準 (Classic) ファイルとXML ASAM ODS Transport Format (ATF) ファイルの両方と簡単にやり取りすることができます。 ASAM ODSの抽象化レイヤとファイルベースのデータストアとしてUSIを使用することで、これらの共通データソースからデータの検索、参照、およびロードをシームレスに実行できるようになります。
DIAdem NAVIGATORは、ASAM ODS規格に準拠して格納されているデータを参照するための、シンプルで直観的なユーザインタフェースを提供します。 ASAM ODSデータベースに接続するかATFファイルを選択すると、DIAdemにはデータストア内に含まれるデータ階層 (AoTest, AoSubTest、AoMeasurement、およびAoMeasurementQuantityノードを含む) が表示されます。 階層をすばやく拡張および折りたたんでASAM ODSデータ構造内を移動したり、AoMeasurementQuantityベースモデル要素にマッピングする項目を選択して、符号でデータをプレビューしたりできます (図1を参照)。
図1. 符号をプレビューするには、AoMeasurementQuantityベースモデル要素から派生したデータ階層内のノードを選択します。
ASAM ODSデータ構造を手動で閲覧する方法は、アプリケーションの規模が大きくなった場合は特に、必要なデータを見つける最も効率的な方法とはいえません。 関心のある正確なデータセットを識別するため、DIAdemを使用して詳細なクエリを作成し、ASAMデータストア内で関連データを分離できます。 DIAdemはデータベースとASAM ODS規格の両方に対する必要な知識をすべて抽象化し、インタラクティブかつ直感的にクエリを構築できるようにします。 たとえば、検索対象となるASAM ODS階層の要素からプロパティを選択すると、DIAdemには、利用可能なすべてのオプションが表示されます (F図2を参照)。
図2. DIAdemは、検索対象で利用可能なプロパティのリストを表示し、簡単にクエリを構築できるようにします。 この場合、リストされているプロパティは、AoMeasurement要素から派生した項目を示しています。
検索対象となるプロパティを選択すると、DIAdemには選択したプロパティに使用可能なすべての値がリスト表示 (図3を参照) されるため、クエリ条件の精度を確保できます。 クエリ条件は連続して追加されるため、DIAdemは先に指定された条件に基づいて、利用可能な結果を自動的にフィルタ処理します。
図3. DIAdemには、検索対象として選択したプロパティに使用可能なすべての値がリスト表示されるため、検索の精度を確保できます。
検索条件を作成して仕上げたら、ブール論理を使用して、個々のクエリ条件が検索結果に与える影響を決定できます。 たとえば、図4では、ブール値の論理積 (AND) を使用して4つの検索条件 (C1、C2、C3、C4) をすべて組み合わせています。この場合は、4つの条件がすべて「True」になる場合が、該当結果として返されます。 ブール値の論理和 (OR) を使用すると、返された検索結果に用いた論理式を変更できます。
ASAM ODSデータソースでDIAdemを使用して検索を実行すると、テスト、測定値、または測定数量を返すよう選択でき、クエリから返されるデータの詳細レベルに柔軟性を持たせることができます。 たとえば、検索結果を「テスト」と選択すると、信号エラーを1つ以上含むすべてのテストを、即座に確認できます。「計測量」を選んだ場合は、すべての「計測」および「テスト」から、実際に異常が発生した信号そのものを正確に表示できます。 ASAM ODSデータブラウザを使用すると、NI DataFinderを使用してファイルを検索する場合と同じくらいシンプルにASAM ODSデータを検索できます。
図4. 結果を測定数量として返すよう選択すると、指定した検索条件を満たす符号のみ (さまざまなテストや測定のデータを含む) を表示できます。
DIAdemを使用して詳細なクエリを構築する際は、指定した検索条件を満たすデータのみが閲覧中のビューに表示されるよう、ASAM ODSデータブラウザに表示されるテスト、測定値、および測定数量を絞り込むことができます。
データセットを表示または検索した後、さらに視覚化、解析、レポートが必要な場合は、データをDIAdem環境にドラッグアンドドロップするだけのシンプルな操作でロードできます。 ASAM ODSデータソースまたは検索結果ディレクトリからDIAdem Data Portalに直接テスト、測定値、または測定数量をドラッグアンドドロップし、データをすばやく読み込むことができます。 DIAdemに搭載されているカスタムロード構成を指定すると、Data Portalに読み込むASAM ODSデータストアのプロパティをパラメータ化して、データストアから情報を読み込む方法を詳細に制御できます。
図5. さらに視覚化、解析、レポートが必要な場合は、データをData Portalにドラッグアンドドロップするだけのシンプルな操作で、データをDIAdem環境にロードすることができます。
DIAdem環境にロードされたデータは、環境内の他のパネルによって完全にアクセスでき、操作を継続することができます。 DIAdemには、データの参照および検索するだけに留まらない、堅牢な機能セットがあります。 DIAdemを使用すれば、インタラクティブにデータを視覚化および検査、複雑な分析を実行、WYSIWYG (What-You-See-Is-What-You-Get) エディタを使って公開用レポートを作成、および反復タスクを自動化できます。 DIAdemの機能の詳細に関する短い紹介ビデオを視聴するには、DIAdemとは?をご覧ください。
図6. DIAdemでは、インタラクティブな検査、複雑な解析、テンプレートをベースにしたWYSIWYGレポートの作成やエクスポートも可能です。
ASAM ODSデータソースに対応する、フル機能を備えた直感的なソフトウェアクライアントがなければ、ASAM ODS規格が有する柔軟性や、同規格の採用に費やした労力が完全に失われてしまいます。 DIAdemは、ASAM ODSデータソース (サーバとトランスポートファイルの両方) の強力なクライアントであり、データの管理、処理、レポート生成に役立つさまざまなツールを搭載しています。