心理音響学から生まれた一連のアルゴリズムである音質は、音の物理量と人間が聞いた時の主観的印象の関係を定義するのに用いられています。そのようなアルゴリズムは、音圧レベル、周波数、変調度などの物理パラメータを精査して、人間の聴覚と相関させます。音質アルゴリズムは、単なるノイズエミッションの低減から音の品質の向上というより高度なプロセスに重点を移すことで、自動車や家庭電化製品など多くの産業における音響計測に革新をもたらしました。音質は以下のアルゴリズムで構成されています:ISO 532B定常ラウドネス、時間依存ラウドネス、Auresラフネス、Auresシャープネス、Aures調性、強度変動。LabVIEW Sound and Vibration Toolkitには、これらのアルゴリズムを実装できるLabVIEW VIが用意されています。
自動車業界や航空力学業界では長年にわたり、音響計測を利用してタービンやモータなどの音が人体にどのような影響を及ぼすかを検証してきました。近年まで、それらの計測値に対して行っていた解析は、音圧レベル解析、オクターブ解析、FFT解析を実行し、基本の加重フィルタを適用するといういたってシンプルなものでした。そのようなアルゴリズムは、信号のデシベルレベルや周波数成分を表すのには適していますが、信号の品質を決定づけるいくつかの重要事象は解き明かすことができません。簡単なノイズレベル解析だけでなく実用的な環境ノイズ計測を実行するため、人間の耳が音をどのように認識するかを解明する音質アルゴリズムが開発されました。
音質アルゴリズムは、音響学、物理学、情報工学、機械工学、音楽学、マーケティング、生理学、心理学など、多岐にわたる分野における研究の成果です。これらのアルゴリズムは、音響心理、物理、認知の側面から音を分析することで、設計エンジニアに性能の新たな測定基準を設定しました。自動車NVH業界でのアルゴリズムの適用例としては、より快適なエンジン音や心地いいクリック音のドアハンドルなどがあります。音質アルゴリズムは、家庭電化製品の製造にも適用することができます。これらのアルゴリズムにより、エンジニアはより良いサウンドの製品を開発することで、消費者の心をつかむことができます。
音質は以下のアルゴリズムで構成されています:ISO 532B定常ラウドネス、時間依存ラウドネス、Auresラフネス、Auresシャープネス、Aures調性、強度変動。
ラウドネスとは、人間が認識する音量のことです。ラウドネスの単位である1ソーンは、40 dBにおける1 kHzトーンに相当すると定義されています。ラウドネスのスケールでは、ラウドネスは人間の耳に対し線形的に定量化されます。つまり、ソーン値を倍にするとラウドネスも直接倍の値にマッピングされます。
定常ラウドネスとは、定常状態のノイズ、または経時変化しない信号のアルゴリズムです。このアルゴリズムは、1/3オクターブスペクトルを計測し、1/nオクターブ帯域を臨界帯域に統合して、スペクトルマスクを適用します。臨界帯域に対する特定ラウドネスという形でアルゴリズム結果が返されると、特定ラウドネスを統合して総合ラウドネスとラウドネスレベルを計測します。このアルゴリズムは、ISO 532Bラウドネス、またはZwickerラウドネスとも呼ばれ、ISO 532B、DIN 45631、およびISO/R 131に準拠しています。
時間依存ラウドネスとは、非定常ノイズのラウドネス、または経時変化する信号を計算するためのアルゴリズムです。このアルゴリズムは、2 msの時間定数により指数平均を使用して1/3オクターブスペクトルを計測し、1/nオクターブ帯域を臨界帯域に統合して、一時マスクとスペクトルマスクを適用します。それから、このアルゴリズムは臨界帯域レートに対する特定ラウドネスという形で結果を返し、特定ラウドネスを統合して、一時ポストマスクフィルタを適用して時間依存ラウドネスを測定します。このアルゴリズムは、DIN 45631/Aに準拠した時間依存ラウドネスを計算します。
ラフネスとは、音質の主観的評価を特定するのに使用されるアルゴリズムです。ラフネスは、音が人間にとってどの程度顕著か、あるいは耳障りかを示すものです。具体的には、ラフネスは30 Hzを超える変調周波数のように、単独で識別不可能な高周波数におけるラウドネス変調に関連した聴覚感覚のことです。
ラフネスアルゴリズムは、24 barksのエネルギーを計測し、各帯域内の信号のエンベロープを計算しフィルタ処理して、各エンベロープの振幅変調を計測します。次に各帯域の変調指数と周波数に依存する重み関数を使って、その帯域内のレベルを重み付けします。結果は臨界帯域レートに対するラフネススペクトルという形で返され、その後ラフネススペクトルを統合してラフネスを計測します。
シャープネスとは、周波数に関連し、ラウドネスとは無関係の聴覚感覚です。シャープネスは、鋭い耳障りな高周波音の感覚に相当するもので、総エネルギーと比較した高周波エネルギーの量で表します。シャープネスアルゴリズムは、音圧信号波形、25 Hz~12.5 kHzの周波数範囲において計算された1/3オクターブスペクトル、または特定ラウドネスからシャープネスを計算します。
このアルゴリズムは、特定ラウドネススペクトルを総合ラウドネスによって正規化し、周波数に従ってスペクトルを重み付けします。臨界帯域レートに対する特定シャープネスという形で周波数重み付けされた結果が返され、その後特定シャープネスを統合してシャープネスを計測します。信号の高周波成分は、一般にシャープネス計測値が高くなります。
調性とは、音が音成分と広帯域ノイズのどちらで主に構成されているかを特定するのに使用されるものです。このアルゴリズムでは、信号内のトーンの信号全体に対する相対強度を計測します。各時間ブロックについて、まず人間の聴覚の周波数選択性に従って周波数分解能を変化させ、同様のトーンのスペクトルを検索してから、そのトーンのラウドネスを音のラウドネスと比較します。
強度変動とは、個々に認識可能な低周波数におけるラウドネス変調に関連した聴覚感覚のことです。強度変動では、「ラフネス対時間」解析と同様の方法を利用します。異なるのは、極めて低い変調周波数での信号変動に特に重点を置いている点です。
強度変動は、オーバーラップする47 barksのエネルギーを計測し、各帯域内の信号のエンベロープを計算しフィルタ処理して、各エンベロープの振幅変調を計測します。次に周波数に依存する重み関数を使って、その帯域内のレベルを重み付けします。結果は臨界帯域レートに対する強度変動スペクトルという形で返され、その後強度変動スペクトルを統合して強度変動を計測します。このアルゴリズムは0~30 Hzの変調を検証しますが、特に4 Hz付近に重点を置きます。
LabVIEW Sound and Vibration Toolkitは、音質アルゴリズムを実装するためのVIを提供します。LabVIEW Sound and Vibration Toolkitには、これらのアルゴリズムに関する詳細なドキュメントも提供されています。LabVIEW Sound and Vibration Toolkitは、7日間のトライアル版が無料でダウンロードできます。LabVIEW Sound and Vibration Toolkitの音質アルゴリズムを使用するには、LabVIEWをインストールする必要があります。
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