このドキュメントでは、人体振動加重フィルタと、LabVIEW Sound and Vibration Toolkit(NI音響/振動計測ソフトウェアパッケージ)によるその実装について説明します。
人体振動とは、人体に対する機械振動の影響を意味します。人体は、機械振動に過度にさらされると、悪影響を受ける場合があります。たとえば、稼働中の機械から全身に振動を受けると、脊椎疾患などの原因となる可能性があります。人体振動信号の測定と解析をすることによって、機械振動が人体に及ぼす悪影響を制限することができます。測定/解析の対象となる人体振動信号には、たとえば以下の3つがあります。
以下の図は、ISO 5348:1986で定義されている手腕人体振動を測定する際の座標系を示しています。
以下の図は、ISO 2631:-1:1997で定義されている全身人体振動を測定する際の座標系を示しています。
NI音響/振動計測ソフトウェアパッケージでは、加重フィルタを人体振動信号に適用することができます。人体振動信号に加重を適用することで、注目するべき方向コンポーネントを隔離したり、さまざまなタイプの人体振動を解析することができます。
NI音響/振動計測ソフトウェアパッケージでは、以下の加重フィルタを人体振動信号に適用することができます。
手腕振動信号にはWh加重フィルタを使用します。全身振動信号にはWb、Wc、Wd、We、Wj、Wk、Wmを使用します。低周波数全身振動信号には、Wf加重フィルタを使用します。
メモ NI音響/振動計測ソフトウェアパッケージの人体振動加重フィルタは、DSAデバイス使用時にISO 8041:2005 (E): Human Response to Vibration – Measuring Instrumentationに適合します。
人体振動信号の時間領域および周波数領域に加重を適用するには、「SVT Human Vibration Weighting Filter (Fixed Rates)」VI、「SVT Human Vibration Weighting Filter (frequency)」VI、「SVT Human Vibration Weighting Filter (octave)」VIを使用します。
時間領域信号に加重を適用するには、「SVT Human Vibration Weighting Filter (Fixed Rates)」VIを使用します。以下の図は、手腕振動の時間領域信号に加重(Wh)を適用する例を表しています。
上の図では、「SVL Scale Voltage to EU」VIによって時間領域信号をスケールしています。また、「SVT Human Vibration Weighting Filter (Fixed Rates)」VIを使用してスケール後の信号に加重Whを適用しています。さらに、「SVL RMS Level」VIによって加重信号の振動レベルを計算しています。
「SVT Human Vibration Weighting Filter (Fixed Rates)」VIは、時間領域信号への加重適用時に、固定サンプルレートをサポートします。サポートされるサンプルレートは、以下の表のとおりです。
アプリケーション | 加重フィルタ | サポートされるサンプルレート(Hz) |
手腕 | Wh | 8,000; 10,000; 12,500; 12,800; 16,666.666; 20,000; 25,000; 25,600; 33,333.333; 50,000; 51,200 |
全身 | Wb, Wc, Wd, We, Wj, Wk, Wm | 1,000; 2,000; 3,200; 4,000; 5,000; 6,400; 8,000; 10,000; 12,500; 12,800; 16,666.666; 20,000; 25,000; 25,600; 33,333.333; 50,000; 51,200 |
低周波数全身 | Wf | 1,000; 2,000; 3,200; 4,000; 5,000; 6,400; 8,000; 10,000; 12,500; 12,800 |
周波数領域信号に加重を適用するには、「SVT Human Vibration Weighting Filter (frequency)」VIと「SVT Human Vibration Weighting Filter (octave)」VIを使用します。
FFTベーススペクトルに加重を適用するには、「SVT Human Vibration Weighting Filter (frequency)」VIを使用します。以下の図は、手腕振動のFFTベーススペクトルに加重(Wh)を適用する例を表しています。
オクターブスペクトルに加重を適用するには、「SVT Human Vibration Weighting Filter (octave)」VIを使用します。以下の図は、手腕振動のオクターブスペクトルに加重(Wh)を適用する例を表しています。
「SVT Octave Spectrum Conversion」VIは、加重が適用されたオクターブスペクトルの単位をパワーから振幅に変換します。
人体振動信号に加重を適用する例については、labview\examples\Sound and Vibration\Vibration Level Measurementsの「SVXMPL_Human Vibration (DAQmx)」サンプルVIを参照してください。