NIのMシリーズデータ収集デバイスに関して、以下の質問がよく寄せられます。
1. 一般
Q:NI Mシリーズデバイスにはどのような機能がありますか。
Q:Mシリーズがマルチファンクションと呼ばれる理由
Q:Mシリーズデバイスのラインナップとその仕様
Q:Mシリーズデバイスと従来のEシリーズデバイスの違い
Q:Mシリーズデバイスを既存のEシリーズデバイスの代替品として使用できますか。
Q:Mシリーズでは、どんなプラットフォームとバスが使用できますか。
2. 性能
Q:NI-STC 2システムタイミングコントローラとは何ですか。
Q:MシリーズデバイスにDMAチャンネルが6個あるのはなぜですか。
Q:RTSIバスとその動作
Q:位相ロックループ (PLL) とは何ですか。どのように動作しますか。
Q:NI信号ストリーミングとは何ですか。
3. アナログ入力
Q:Mシリーズデバイスのキャリブレーション方法
Q:NI-PGIA 2アンプとは何ですか。
Q:温度ドリフトとは何ですか。
Q:プログラム可能なローパスフィルタとは何ですか。どのように機能しますか。
Q:絶縁とは何ですか。
Q:どのような信号調節デバイスがセンサ計測でMシリーズデバイスと互換性がありますか。
4. アナログ出力
Q:複数のアナログ出力レンジがあることで、どのように確度が向上しますか。
Q:アナログ出力用のプログラム可能なDCオフセットとは何ですか。
Q:相関デジタルI/Oとは何ですか。どのように動作しますか。
Q:工業用デジタルI/Oとは何ですか。
Q:プログラム可能な電源投入時の状態とは何ですか。
Q:ソフトウェアタイミングとハードウェアタイミングのデジタルI/Oの違いは何ですか。
Q:オンボードの80 MHzクロックのメリットは何ですか。
Q:32ビットカウンタと低分解能カウンタの違いは何ですか。
Q:カウンタ/タイマ入力ラインでのフィルタ処理が重要なのはなぜですか。
6. ソフトウェア
Q:Mシリーズデバイスには、どんなアプリケーションソフトウェアが付属していますか。
Q:Mシリーズデバイスには、どんなドライバソフトウェアが付属していますか。
Q:Mシリーズは、どのOSに対応していますか。
Q:Mシリーズで使用できるアプリケーション開発環境は何ですか。
Q:EシリーズのデバイスをMシリーズのデバイスに置き換えた場合、プログラムコードの変更が必要ですか。
Q:Mシリーズで使用できるリアルタイムツールは何ですか。
7. サービス/サポート
Q:Mシリーズデバイスの技術サポートを受ける方法
Q:Mシリーズデバイスに関して、どのようなトレーニングがありますか。
Q:OEM製品の場合は、どのようなオプションがありますか。
Q:Mシリーズデバイスには、どのような保証が付属していますか。
Q:NI Mシリーズデバイスにはどのような機能がありますか。
A:NI Mシリーズマルチファンクションデータ収集 (DAQ) では、アナログ入力、アナログ出力、デジタルI/O、カウンタ/タイマが1つのデバイスに統合されています。新しい革新的なアナログおよびデジタル設計により、Mシリーズデバイスは、性能、I/O機能、安全性、および価格において新たな基準を確立しました。NI-MCalテクノロジは、セルフキャリブレーション中に非線形誤差を補正することで、すべての信号範囲で正確なアナログ測定を実現します。NI-PGIA 2カスタム計測器クラスのアンプでは、1 MS/sのスキャンレートで16ビット分解能を実現し、整定時間を短縮します。NI-STC 2システムタイミングコントローラは、同じシステム内のオンボードサブシステムとその他のデバイスとの間のタイミングと同期を制御します。また、工業用Mシリーズデバイスは、新しく高速デジタルアイソレータを搭載することで、グランドループを取り除き、高コモンモード電圧を除去することで、確度と安全性が向上しています。
* 新しいタイミングコントローラとNI-STC2の詳細については、「アナログ入力」セクションを参照してください。
* 新しいキャリブレーション方法については、「アナログ入力」セクションを参照してください。
確度の向上については、「アナログ出力」セクションを参照してください。
Mシリーズがマルチファンクションである理由
A:1台のMシリーズDAQデバイスで、周波数測定用のデジタルマルチメータ (DMM)、オシロスコープ、任意波形発生器、高速デジタルI/Oデバイス、およびカウンタ/タイマデバイスという最大6種類の計測器の機能を実現できます。 Mシリーズには、DC計測用に5.5桁を超える分解能を提供する最大18ビットのアナログ入力があります。ダイナミック計測の場合、Mシリーズデバイスは16ビットの分解能で1秒あたり125万サンプル (複数チャンネルをスキャンする場合は1 MS/s) の頻度でサンプリングできます。デジタル信号は、最大10 MHzのオンボードまたは外部クロックで入出力できるため、専用の高速デジタルI/Oデバイスは必要ありません。相関DIOによって、デジタル機能とアナログ機能をハードウェアで正確に同期させることができます。最大6つのDMAチャンネル (PCI/PXI) と最大4つのNI信号ストリーミングチャンネル (USB) が搭載されており、これらのすべての機能を同時に実行することができます。 システムに追加の機能が必要な場合、Mシリーズデバイスを他のPCIまたはPXI計測器と同期させることができます。
Mシリーズデバイスのラインナップとその仕様
A:Mシリーズには、低コスト、高性能、高確度、工業用の5種類のデバイスがあります。 すべてのMシリーズデバイスには、80 MHzで動作する32ビットカウンタが搭載されています。 表1は、デバイスシリーズごとに固有の情報を示しています。
ファミリ | アナログ入力
| アナログ出力 | デジタルI/O | プラットフォーム | 信号調節 | ||
速度 | 分解能 | 速度 | 分解能 | ||||
低コスト | 最大250 kS/s | 16ビット | 833 kS/s | 16ビット | 1 MHz、TTL、CMOS | USB、PCI、PXI | N/A |
バスパワー | 最大400 KS/s | 16ビット | 250 KS/s | 16ビット | スタティック、TTL、CMOS | USB | N/A** |
高速 | 最大1.25 MS/s | 16ビット (1 MS/sスキャン) | 2.8 MS/s | 16ビット | 10 MHz*、TTL、CMOS | USB、PCI、PXI | N/A |
高確度 | 最大625 kS/s | 18ビット (500 kS/sスキャン) | 2.8 MS/s | 18ビット | 10 MHz*、TTL、CMOS | PCI、PXI | ローパスフィルタ |
産業用 | 最大250 kS/s | 16ビット | 最大250 kS/s | 16ビット | TTL、CMOS、24 V | PCI、PXI | 絶縁 |
表1.Mシリーズデバイスファミリ
*USBデバイスのデジタルI/Oの最大レートは1 MHzです。
*対応する信号調節プラットフォームについては「アナログ入力」セクションを参照してください
Q: Mシリーズデバイスと従来のEシリーズデバイスの違い
A:以下の表は、DAQデバイスのEシリーズとMシリーズの比較を示します。
| 機能 | Mシリーズ | Eシリーズ |
アナログ入力 | アナログ入力チャンネル | 8、16、32、80 | 16または64 |
サンプリングレート | 最大1.25 MS/s (16ビット) | 最大1.25 MS/s (12ビット) | |
入力分解能 | 16または18ビット | 12または16ビット | |
入力信号タイプ | 電流または電圧 | 電圧 | |
キャリブレーション方法 | NI-MCal (全レンジ) | 線形、2ポイント (単一レンジ) | |
キャリブレーション間隔 | 1年または2年 | 1年 | |
プログラム可能なローパス入力フィルタ | あり1 | なし | |
アナログ出力 | アナログ出力チャンネル数 | 0、2、または4 | 0または2 |
アナログ出力レート | 最大2.8 MS/s、16ビット | 最大333 kS/s、16ビット | |
アナログ出力分解能 | 16ビット | 12または16ビット | |
アナログ出力レンジ | プログラム可能/チャンネル1 | ±10 V、0~10 V | |
アナログ出力オフセット | プログラム可能/チャンネル1 | 0 V | |
デジタルI/O | デジタルI/Oライン数 | 24または48 | 8または32 |
デジタルI/Oレート | ソフトウェアタイミングまたは最大10 MHz | software-timed | |
デジタルレベル | TTL/CMOSまたは24V2 | TTL/CMOS | |
相関DIO | はい | いいえ | |
デジタルライン保護 | 過電圧/不足電圧 (±20 V)、過電流保護 | - | |
カウンタ | カウンタ/タイマ | 2つ、32ビット | 2つ、24ビット |
カウンタタイムベース | 80 MHz | 20 MHz | |
位相差出力エンコーダ入力 | はい | いいえ | |
カウンタデバウンシングフィルタ | プログラム可能/ライン | なし | |
システム | クロック同期 | PLL、RTSI | RTSI |
DMAチャンネル数 | 63 | 1または3 | |
コネクタタイプ | VHDCI (高密度) または37ピンDSUB | SCSI II | |
絶縁 | 60 VDC連続バンク絶縁、1,400 Vrms/1,950 VDCチャンネル/バス間絶縁、耐電圧 (5秒)2 | - |
表2.DAQデバイスのMシリーズとEシリーズの機能の違い
1 高確度Mシリーズデバイスに搭載
2 Mシリーズ工業用デバイスに搭載
3 MシリーズUSBデバイスには、信号ストリーミングテクノロジが搭載されています。 信号ストリーミングテクノロジの詳細については、「性能」セクションを参照してください。
Q:Mシリーズデバイスを既存のEシリーズデバイスの代わりにそのまま使用できますか。
A:Mシリーズデバイスは、同じ68ピン形式を採用しており、Eシリーズのアクセサリおよび端子台との下位互換性を維持しています。MシリーズデバイスのコネクタはEシリーズデバイスのコネクタとは異なりますが、ピン数とピンマッピングは類似しているため、既存のテストシステムの配線を変更したり、改修することなく使用できます。NIでは、Mシリーズデバイスを既存の端子台や信号調節アクセサリに接続するためのケーブルを低価格で提供しています。レガシーEシリーズDAQデバイスを使用しているアプリケーションの場合、Mシリーズデバイスに既存のアクセサリをそのまま使用することで、システムの速度と確度を向上させることができます。 また、Mシリーズデバイス用に設計されているケーブルは、Eシリーズ用のケーブルよりもシールド性が優れています。
ソフトウェアの互換性に関する情報は、このドキュメントの「ソフトウェア」セクションを参照してください。
Q:Mシリーズが使用できるプラットフォームとバス
A:Mシリーズデバイスは、32ビット、33 MHzユニバーサルPCI、PCIe、PXI、PXIe、CompactPCI、USB 1.1およびUSB 2.0*で利用できます。ユニバーサルPCIデバイスは、すべてのマザーボードトポロジで動作します。
PCMCIAおよびIEEE 1394(FireWire)用のAQデバイス(Mシリーズ以外)もあります。
* USB 2.0 MシリーズデバイスをUSB 1.1ホストまたはハブに接続した場合は、これより遅いUSB 1.1の転送速度で実行されます。
Q:NI-STC 2システムタイミングコントローラとは何ですか。
A:NI-STC 2チップとは、マルチファンクションDAQ動作の(ボード間とボード内の)同期とタイミングを制御するためにカスタム設計する特定用途向け集積回路 (ASIC) です。 NI-STC 2の特長
MシリーズデバイスにDMAチャンネルが6個あるのはなぜですか。
A:多くのプラグインDAQデバイスは、収集レートやアップデートレートではなく、PCメモリに転送できるレートによって制限されます。MシリーズデバイスにはDMAチャンネルが最大で6個搭載されているため、、1つのデバイスでアナログ入力、アナログ出力、デジタル入力、デジタル出力、および2つのカウンタ/タイマ操作を同時に実行することができます。また、PCのプロセッサには負荷がかからないため、PCで他の処理を実行することができます。従来型の多くのDAQデバイスに搭載されているDMAチャンネルは1つであるため、コンピュータのプロセッサに割り込みをして、複数の操作を同時に実行してデータを転送する必要があります。 このため、PCで実行すべき他の処理が妨げられ、効率が低下します。データ転送レートが高速になり、同時に実行される処理が増加すると、PCのCPUが独占され、システムの速度が低下して、最終的には誤差が発生してしまいます。NI-STC 2を搭載したMシリーズDAQデバイスは、データ損失やバッファオーバーフローによる誤差の発生を最小限に抑えつつ、最大6つの処理を同時に実行することができます。
図1.6つのDMAチャネルを搭載したNI STC 2がデータスループットを大幅に改善
このベンチマークでは、PCI-6229 Mシリーズデバイスで、プログラムによって、使用するDMAチャンネルを1つにしたデバイスと3つにしたデバイスを使用してデータを取得しました。このテストは、Windows XP、512 MB RAM、30 GBハードドライブを搭載した2 GHzのDell DimensionデスクトップPCで実施しました。
Q:RTSIバスとその動作
A:すべてのMシリーズデバイスに、RTSI(Real-Time System Integration)バスが搭載されており、リボンケーブルまたはPXIバスを使用して同一システム内の複数のデバイスにタイミング機能を提供し、信号をトリガすることができます。RTSIバスを利用すると、アナログ入力、アナログ出力、デジタルI/O、カウンタ/タイマ処理を同期させることができます。たとえば、RTSIバスでは、3つのアナログ入力デバイスで同時にデータをキャプチャし、それらのデバイスの1つのマスタクロックに同期することができます。
RTSIバスは、IMAQおよびCANハードウェアの他に、Mシリーズ、Eシリーズ、およびその他のDAQデバイスで使用することができます。
Q: 位相ロックループ (PLL) とは何ですか。どのように動作しますか。
A:プラグインMシリーズデバイスに搭載されている位相ロックループ (PLL) 機能は、別のデバイスから受け取る10 MHz信号に同期 (位相ロック) させる形で80 MHz信号を生成することができます。これにより、同一システム内の複数のデバイスが80 MHzで動作しながらマスタータイムベースを共有することが可能になります。 また、PLLの機能により、PXI MシリーズデバイスはPXI CLK 10クロックソースに同期することもできます。
Q: NI信号ストリーミングとは何ですか。
A:NI信号ストリーミングテクノロジは、USBの性能を最大限に活用し、複数の双方向高速データストリーミングを維持するために開発されました。 このテクノロジにより、デバイスサイドのインテリジェンス、カスタムデータ管理ハードウェア、合理化されたデータ制御も追加されるため、アナログ入力は最大1,600%、アナログ出力は最大250%向上します。
図2. シングルポイントアナログ入力/アナログ出力の性能比較表
Q:Mシリーズデバイスのキャリブレーション方法
A:ADCなどの電子部品には、時間と温度による非線形性とドリフトが発生します。このような原因による誤差を補正するには、デバイスのセルフキャリブレーションが必要です。レガシーデータ収集デバイスは、1つの測定レシピで2点キャリブレーションを実行するためにオンボードの高精度電圧基準を使用します。この方法では、局所的な部品の非線形性は保護されず、デバイスの測定確度が低下します。さらに、この方法は1つの入力レンジのみを校正するため、異なる入力レンジで複数のチャンネルをスキャンする測定の確度は、抵抗ネットワークの許容範囲により制限されます。
Mシリーズデバイスには、NI-MCalテクノロジが搭載されています。このテクノロジは、すべてのレンジで非常に安定した基準を使用して、ゲイン、オフセット、および線形性誤差の特性評価を行うため非常に安定した基準を使用するためにカスタム設計された線形化およびキャリブレーションエンジンであり、正確な読み取りのためにソフトウェアで適用するレンジ固有のキャリブレーション係数を算出します。NI-MCalテクノロジを実装することで、計測確度がレガシーDAQデバイスと比較して最大で5倍向上します。また、高性能および高確度Mシリーズデバイスでは、確度が向上したことで推奨キャリブレーション間隔が1年から2年に延長され、デバイスの保守コストを抑えることができます。
Q: NI-PGIA 2アンプとは何ですか。
A:NI-PGIA 2アンプとは、マルチプレクスDAQアプリケーションの重要な仕様である整定時間を短縮して確度を向上させるために特別に設計されたテクノロジです。 整定時間とは、増幅された信号が一定の確度に到達するまでに必要な時間を指します。 アンプの整定時間が足りないと、測定信号のデジタル化が正確に行われません。整定時間は、一定時間後の誤差として指定します。任意の分解能 (または確度) について、整定時間は短ければ、確度を犠牲にせずにサンプリングレートを高速化できるので、整定時間が短いことが重要な要素です。 市販のプログラマブルゲイン計装用アンプ (PGIA) は、異なる電圧レベルで複数のチャンネルを1つのデバイスでスキャンするためには最適化されていません。
以下のグラフに、NI-PGIA 2、従来のNI-PGIA、市販のPGIAについて、20 V間隔の整定時間誤差を示します。
図3. NI-PGIA 2の整定時間は、従来のPGIAテクノロジや市販のPGIAテクノロジの整定時間より短い
Q: 温度ドリフトとは何ですか。
A:DAQデバイスの確度はデバイスの温度によって変化します。Mシリーズデバイスでは、以下のような、複数のテクノロジを使用して温度ドリフトによる誤差を減少させています。
プログラム可能なローパスフィルタとは何ですか。どのように機能しますか。
A:ローパスフィルタは、カットオフ周波数を超える信号を減衰させ、カットオフ周波数未満の信号を通過させます。カットオフ周波数とは、出力振幅が3 dB下がる周波数です。ローパスフィルタは、ナイキスト周波数 (サンプリング周波数の1/2) を超える信号のノイズを減衰させ、エイリアシングを減らします。
一般に、プラグインDAQデバイスで測定するアナログ入力信号では、高周波ノイズをフィルタリングするための外部信号調節が必要です。高確度Mシリーズデバイスはオンボードのプログラム可能なフィルタを搭載しているため、このフィルタリング機能を提供する外部ハードウェアは不要です。このローパスフィルタは、40 kHzのカットオフ周波数でプログラム的に適用したり、解除したりすることができます。
Q: 絶縁とは何ですか。
A:絶縁とは、高電圧過渡やノイズにさらされる可能性のあるセンサ信号を、計測システムの低電圧バックボーンから電気的、物理的に切り離すことです。 絶縁を行うと、以下のようなメリットがあります。
絶縁された計測器では、アナログ/デジタルフロントエンドの地板とデバイスのバックプレーンの地板が切り離されており、センサ計測部分をシステムの他の部分から分離されています。絶縁機能付きフロントエンドのグランド接続は、接地グランドとは異なる電位で動作可能な浮動ピンです。 グランドと計測システムグランドの間に存在するコモンモード電圧は、(デバイスの動作電圧仕様内で)すべて拒否されます。 また、グランドループが形成されるのも防ぐため、計測信号内のノイズを減らすことができます。
図4.バンク絶縁型のアナログ入力回路
産業用Mシリーズのデータ収集デバイスは、アナログ・デバイセズ社のiCouplerデジタルアイソレータを使用して、複数のアナログおよびデジタルチャンネル間で5秒間、60 VDCの連続絶縁と1,400 Vrms/1,900 VDCのチャンネル間絶縁を実現し、最大250 kS/sのサンプリングレートをサポートします。
絶縁の詳細については、「工業計測に必要な高い信頼性を実現する絶縁技術」を参照してください。
Q: どのような信号調節デバイスがセンサ計測でMシリーズデバイスと互換性がありますか。
A:プラグインMシリーズデバイスは、すべて、SCCとSCXIの両方の信号調節に対応しています。 68ピンUSB MシリーズデバイスはSCC信号調節に対応しています。SCCとSCXIは、どちらも低レベルセンサ信号を増幅し、ローパスフィルタで電源からの50/60 Hzのノイズなどのノイズソースを除去することにより、計測確度を向上させます。さらに、SCCとSCXIには、熱電対用のCJCなど、特定のセンサ用の信号調節機能があり、また、歪みゲージやRTDなどのセンサに励起電力を提供します。
Q: 複数のアナログ出力レンジがあることで、どのように確度が向上しますか。
A:マルチファンクションDAQデバイスは、バイポーラ(±10 V)またはユニポーラ(0~10 V)という2つのアナログ出力レンジを提供してきました。この制限により、デジタルアナログ変換器 (DAC) の分解能のビットは全レンジにわたって均等に配分されます。216 = 65,536を表現できる分解能を備えた16ビットDACの場合、±10 Vの最小出力単位は305 μV(20 V÷65,536)になります。この場合、DACは、305 μV未満の電圧変化を出力できません。
高確度MシリーズDAQデバイスは、より細かい電圧レンジにビット数を配分するプログラム可能な出力レンジ機能を備えています。たとえば、±1 VレンジでDAC分解能が16ビットの場合、31 μVの変化を出力できます。
Q: アナログ出力用のプログラム可能なDCオフセットとは何ですか。
A:アプリケーションの中には、特定のDCオフセット値に対してアナログ出力レベルを変化させる必要があるものがあります。たとえば、5 V電源のノイズをモデル化するには、5 VDC信号で少量のノイズ (ミリボルト未満) をシミュレーションできるアナログ出力が必要です。信号出力レンジにオフセットのない従来のマルチファンクションDAQデバイスでは、レンジを0~10 Vに設定する必要があります。分解能が16ビットの場合でも、デジタルアナログ変換器 (DAC) は153 μVの変化しか表現できません。
高確度Mシリーズデバイスには、には、指定されたオフセット値を中心にしてより細かい変化を検出できるプログラム可能なアナログ出力オフセット機能があります。プログラム可能なオフセット機能とプログラム可能なレンジ機能を組み合わせて使用すると、Mシリーズボードは4~6 Vレンジ(5 Vオフセット±1 Vレンジ)に16ビットすべてを使用することで、5 V電源のノイズをモデル化することができます。これにより、最小計測単位が31 μVまで向上します。
Q:相関デジタルI/Oとは何ですか。どのように動作しますか。
A:相関I/Oによって、オンボードデジタルI/Oラインをクロック基準に同期させることができます。
同じデバイスの複数のデジタルラインを共通のクロックに同期することで、マルチビットパターン検出が可能になります。 最大10 MHzまでクロックを使用したデジタル波形生成/収集も可能です。
Mシリーズでは、アナログI/O、デジタルI/O、およびカウンタ/タイマにより、さまざまな処理を時間相関させることができます。 たとえば、AIクロックをデジタルI/Oクロックのソースとして共有すると、デジタルサンプリングとアナログサンプリングの時間を同期させることができます。カウンタで必要なクロックを生成するよう構成したり、外部信号をDIサンプリングクロックのソースとして使用することで、AI、AO、DO処理とは独立してデジタル信号をサンプリングすることもできます。
Q: 工業用デジタルI/Oとは何ですか。
A: 工業アプリケーションでは、一般的な計測デバイスでは提供できない機能が要求されることが少なくありません。たとえば、多くの工業用センサやアクチュエータでは、24 Vのロジックレベルが必要ですが、異なる電位差で動作しグランドループを引き起こすことがあります。測定/制御システムへの安全性とユーザ/オペレータへの安全性は、同等に重要です。最大30 Vの電圧レベル、高電流ドライブ、および絶縁を備えたNI Mシリーズデバイスは、工業用ポンプ、バルブ、モータなどのセンサ/アクチュエータに直接接続することができ、その上、高い安全性と信頼性を確保できます。
Q: プログラム可能な電源投入時の状態とは何ですか。
A:コンピュータの電源がオンになると、さまざまなコンポーネントで電源投入動作が開始され、既知の状態が確立されます。機械装置や工業プロセスを制御するためにコンピュータの内部でデジタル出力を使用する場合、デジタル出力も同様に既知の状態に初期化されていることが重要です。出力を変更するには、通常、アプリケーションが実行されている必要がありますが、アプリケーションを開始する前にモジュールを数分間オンにしなければならない場合もあります。
電源投入時の状態をプログラミングで設定する機能を使用すると、ポンプやバルブ、モータ、リレーなどの工業用アクチュエータに接続した場合でも初期のデジタル出力状態をソフトウェアで設定することで、誤作動のない操作が行えます。 工業用Mシリーズデバイスは、電力が供給された後、これらの出力状態が保持されるので、コンピュータが起動したら、ソフトウェアアプリケーションを開始することができます。プログラム可能な電源投入時の状態にはグリッチがありません。つまり、電源投入時に出力が不正な状態になる可能性がありません。各デジタルラインをHIGH出力またはLOW出力として構成できます。各Mシリーズ工業用デバイスはオンボードの不揮発性メモリに設定を保存し、電源が投入されるとすぐに電源投入時の状態を適用します。
Q: ソフトウェアタイミングとハードウェアタイミングのデジタルI/Oの違いは何ですか。
A:ソフトウェアタイミングのデジタルI/Oはシステムに依存し、速度はホストPCの処理能力に応じて変化します。これは「スタティック」DIOとも呼ばれます。クロック式デジタルI/Oは、ハードウェアタイミング型なので、アップデートレートやサンプリングレートが安定したクロックソースによって制御されます。このクロックは使用するシステムに依存しません。 Mシリーズデバイスでは、デジタルタイムベースとして、オンボード10 MHzクロックまたは外部信号を使用できます。
Q: オンボードの80 MHzクロックのメリットは何ですか。
A:80 MHzタイムベースは、32ビット汎用カウンタ/タイマへのソース入力として使用できます。そのため、EシリーズDAQデバイスの20 MHzタイムベースに比べて、周波数計測と周波数生成の機能が強化され確度が向上します。タイムベースが高いほど、パルス幅とパルス周期の計測確度は向上し、より高速のパルス列信号を生成できます。
図5.シングルポイント周波数測定
Q:32ビットカウンタと低分解能カウンタの違いは何ですか。
A:カウンタは、リセットする前にカウントできるイベント数によって指定されます。たとえば、32ビットのカウンタは232、つまり40億以上のイベントをカウントできます。これは、他のDAQデバイスに搭載されている16ビットのカウンタ/タイマの65,000倍以上です。動作中にカウンタ/タイマが最大カウント容量を超えると、レジスタがリセットされ、データが失われてしまいます。
Q: カウンタ/タイマ入力ラインでのフィルタ処理が重要なのはなぜですか。
A:周波数センサを使用するプロセス制御アプリケーションおよびリレー監視アプリケーションでは、特にメカニカルリレーでセンサの出力を駆動している場合に、センサがバウンスすることがあります。Mシリーズデバイスのカウンタ/タイマラインで入力フィルタを有効にすると、フィルタクロックの各立ち上がりエッジで入力をサンプリングします。フィルタクロックによって連続したN個のエッジでHIGH信号がサンプリングされると、LOWからHIGHへの遷移は回路の他の部分に伝播します。Nの値は、フィルタの設定によって異なります。図6では、Nの値が5に設定されています。
Q: Mシリーズデバイスには、どんなドライバソフトウェアが付属していますか。
A:多くのDAQデバイスには基本的なデバイスドライバが付属しています。しかし、基本機能を使用する場合でもドライバソフトウェアを別途購入しなければならないデバイスもあります。Mシリーズのすべてのデバイスには、NI-DAQmx計測サービスソフトウェアとドライバソフトウェアが付属しています。
NI-DAQmx計測サービスソフトウェアは、構成、プログラミング、低レベルオペレーティングシステムデバイス制御など、DAQシステムのあらゆる部分を制御するソフトウェアです。NI-DAQmxソフトウェアを使用することで、計測をすばやく構成して、収集を実行できます。NI-DAQmxには、生データを工学単位に自動的にスケーリングする仮想チャンネルがあります。 NI-DAQmxには、DAQアシスタントが付属しています。DAQアシスタントは、プログラミングなしでDAQアプリケーションを構成して自動的にコードを生成できるユーティリティです。
NI-DAQmxソフトウェアは、基本的なデータ収集ドライバよりも、極めて高い生産性および性能を実現します。DAQシステムを購入する際には、以下のソフトウェア条件を検討する必要があります。
計測サービス機能 | NI-DAQmx計測サービス | 基本的なDAQドライバ | |
生産性 | コードの自動生成 | * | — |
構成管理 | * | — | |
アナログ、デジタル、カウンタテストパネル | * | o | |
実世界の工学単位への変換 | * | — | |
すべてのハードウェアとI/Oタイプに共通のAPI | * | — | |
計測用サンプルプログラム | >3000 | <20 | |
精密な誤差診断 | * | — | |
性能 | 最適化されたマルチスレッドI/O性能 | * | — |
最適化されたシングルポイントループ | * | o | |
リアルタイム機能 | * | — | |
高度なキャリブレーション | * | — |
表3. NI-DAQmxと基本的なDAQドライバソフトウェアの比較
凡例:* 最適、 o 可、— なし
DAQmxドライバの詳細については、「LabVIEWで従来型NI-DAQからNI-DAQmxへ移行する」を参照してください。
A: 「NIハードウェアおよびソフトウェアのオペレーティングシステムの互換性」ページでMシリーズデバイスの互換性を確認してください。古いオペレーティングシステムとの互換性については、ページに記載されているように完全な表をダウンロードする必要があります。
Q: Mシリーズで使用できるアプリケーション開発環境は何ですか。
A:MシリーズDAQデバイスは、NI-DAQmxと互換性のあるすべての開発環境で使用できます。
*USBデバイスには対応していません
Q: EシリーズのデバイスをMシリーズのデバイスに置き換えた場合、プログラムコードの変更が必要ですか。
A:Eシリーズデバイス用に作成した既存のNI-DAQmxアプリケーションは、そのままMシリーズデバイスで動作します。ただし、Mシリーズの高度なタイミング/同期機能を利用するには、新たにプログラミングしなければならない場合があります。
Q: Mシリーズで使用できるリアルタイムツールは何ですか。
A:すべてのPCIおよびPXI Mシリーズのデバイスは、 LabVIEW Real-TimeおよびNI-DAQmxとともに使用して、ユーザによる操作を必要とせず、かつ、信頼性と確定性のあるスタンドアロンアプリケーションを構築することができます。NI-DAQmx APIは、従来のリアルタイムオペレーティングシステムに比べ、短期間でリアルタイムアプリケーションを開発して簡単に実装できるように最適化されています。
USB MシリーズデバイスはLabVIEW Real-Timeには対応していません。
Q: Mシリーズデバイスの技術サポートを受ける方法
A:NIは、ni.com/supportを通じて充実したサポートオプションを提供しています。NIの技術者が電話、Eメール、オンライントラブルシューティングによるサポートを提供します。また、ni.comではMシリーズのスタートアップユーザから、DAQのエキスパート向けまであらゆる情報を提供しています。NIが提供しているオンラインリソースには、以下のものがあります。
Q: Mシリーズデバイスに関して、どのようなトレーニングがありますか。
A:データ収集 (DAQ) の概念を地域セミナーやカスタマートレーニングコースで、解説しています。また、地域のフィールドエンジニアが定期的に開催するトレーニングセミナーでは、無料の演習チュートリアルを受講できます。お住まいの地域で開催される無料セミナーについては、ni.com/eventsをご覧ください。
NIでは、3日間のデータ収集コースも提供しています。このコースでは、マルチファンクションDAQ、信号調節、およびNI-DAQmxソフトウェアを使用した実践的な演習を行います。コースの詳細および登録については、ni.com/trainingをご覧ください。
Q: OEM製品の場合は、どのようなオプションがありますか。
A:7日間の無料評価キットと優れた技術サポートに加え、認定されたOEMアプリケーションには割引価格をご用意しています。このようなアプリケーション用に設計されているデバイスが複数あります。Mシリーズは、MIOのチャンネル密度で市場をリードし、コストとスペース要件を低く抑えてあります。Mシリーズデバイスは、最大80のアナログ入力、4つのアナログ出力、および48のデジタルI/Oラインを装備しています。さらに、32ビットカウンタ/タイマにより、複数のチャンネルをカスケード接続しなくても、長いパルスを生成したり、測定したりすることができます。NI-DAQmxソフトウェアを使用すると、設計の反復を迅速に実装およびテストできるため、開発にかかる時間とコストを大幅に削減できます。
ハードウェアとソフトウェアのカスタマイズの詳細については、お問い合わせください。
Q: Mシリーズデバイスには、どのような保証が付属していますか。
A:すべてのMシリーズデバイスには、製品の発送日から1年間、製造上の欠陥に対する保証が付属しています。2年以上にわたり定額で保証を受けられる延長保証オプションもございます。詳細については、NI営業担当者までお問い合わせください。