PXI/PXIe-2593およびSCXI-1193 RFスイッチ使用したアドバンス信号経路設定

概要

PXI/PXIe-2593およびSCXI-1193 (総称してxx93) 50 Ωスイッチモジュールは、500 MHzを超える高周波信号を伝送するように設計されています。これらのモジュールは、RF信号の整合性を保持しながら外部ケーブルを追加することもなく、さまざまなサイズのマルチプレクサや疎行列に構成することが可能です。

本ドキュメントでは、カスタム構成でxx93を使用する方法について説明します。

  • 非終端3x1、17x1、35x1
  • 終端4x1、8x1、16x1
  • 可変次元疎行列

内容

 

表1.PXI-2593およびSCXI-1193スイッチモジュールの可能な構成

 

標準トポロジ

xx93スイッチは、Measurement & Automation Explorer (MAX) で構成するか、NI-Switch 2.0以降のniSwitch初期化 (トポロジ指定) 機能を使用してプログラム的に構成できます。xx93の定義済みトポロジには、非終端マルチプレクサとして8x1、16x1、32x1があります。これらのトポロジのRF性能については、各モジュールの仕様に記載されています。すべてのNIスイッチ製品の仕様シートは、NI-SWITCHドライバと一緒に設置されます。また、ni.comからオンラインで入手できます。


図1.PXI/PXIe-2593に実装された8x1非終端マルチプレクサ

 

カスタム構成

xx93スイッチは標準の非終端マルチプレクサに比べて、より多くの構成が可能です。革新的なxx93のトポロジには内部信号パスがあり、RF性能を保持しながら任意の端子ペア (チャンネルまたはコモン) を接続することができます。カスタム構成は独立トポロジを使用して行います。このトポロジは標準トポロジと同じように、MAX で選択することも、niSwitch初期化 (トポロジ指定) 機能を使用してプログラム的に利用することもできます独立トポロジでは、スイッチモジュールをNI-SWITCH 2.0以降の接続/切断機能またはniSwitchリレー制御を使用して制御することができます。NI Switch Executiveは、接続/切断機能を使用してこれらの構成を実装することもできます。次のセクションでは、チャンネルを選択し、さまざまなカスタム構成でxx93を制御する方法について説明します。



図2.独立トポロジでの各リレーの「開」位置

 

接続/切断機能呼び出しは、2つの「チャンネル」を入力パラメータとして使用します。これらのチャンネルは外部端子 (COM0やCH15など) やリレー間の内部経路 (A0B0やB0B1C0など) です。xx93の内部チャンネル名は、接続しているリレー名に由来します。チャンネルで接続されているすべてのリレーの名前をアルファベット順に結合し、「K」を削除します。たとえば、KA0とKB0を接続するチャンネルはA0B0です。

niSwitchリレー制御機能は、「開く」および「閉じる」コマンドを使用してモジュール内の各リレーを作動させます。図2は、独立トポロジにおけるスイッチの初期状態を示します。各リレーは「開」位置とみなされます。

 

 3x1非終端マルチプレクサ

4チャンネル (0:3、4:7、8:11など) で構成された各グループは、独立した非終端3 x 1マルチプレクサとして構成することができます。1つのチャンネルを「コモン」として選択し、それを他の3つのチャンネルに経路接続します。

たとえば、CH0を3x1コモンとして選択し、以下のコマンドオプションを使用してCH1、CH2、CH3を経路設定します。

*高周波数
性能を向上するために、使用していないリレーを信号パスから離します。詳細については、スタブの影響を削減するセクションを参照してください。

表2.3x1構成のNI-SWITCH経路設定オプションの例

 



図3a.CH0->CH1経路




図3b.CH0->CH2経路




図3c.CH0->CH3経路

 

 
PXI/PXIe-2593は、16個の使用可能なチャンネルを使用して、COMを使用せず、クワッド3x1マルチプレクサトポロジとして構成できます。SCXI-1193には、最大8つの3 x 1マルチプレクサに分割できる32個のチャンネルがあり、4つのCOMを一緒に経路設定して、以下に示すように9番目の3 x 1マルチプレクサを作成できます。経路設定機能のオプションは表3に記載されています。


図4.SCXI-1193の4つのCOM端子を3x1マルチプレクサとして使用可能

 

 

 17x1および35x1非終端マルチプレクサ

16x1非終端マルチプレクサトポロジでは、チャンネル0:15をCOM0に経路設定します。同様にチャンネル16:31はCOM2に経路設定します。その他の2つのCOM端子 (COM1とCOM3) は使用しません。32x1トポロジでは、すべてのチャンネルをCOM0に経路設定します。他の3つのCOM端子は使用しません。独立トポロジでは、これらのCOM端子を追加チャンネルとして使用し、17x1および35x1非終端マルチプレクサを作成できます。

 
*高周波数
性能を向上するために、使用していないリレーを信号パスから離します。詳細については、スタブの影響を削減するセクションを参照してください。

表3.3x1、17x1、35x1構成でCOM端子を接続するためのNI-SWITCH経路設定オプション

 

 終端マルチプレクサ

スイッチを介して負荷に接続されていない場合、信号ソースを無効にできない場合があります。スイッチが非終端の場合、信号は開いたリレーから反射してソースに戻ります。これにより伝送ラインの電圧が倍になり、クロストークが増えるためソースを破損する場合があります。xx93スイッチには終端が内蔵されていませんが、NI P/N:761930-01のように、チャンネルの半分を外部負荷で終端するように構成できます。以下の図は、4x1終端マルチプレクサとして構成された8x1非終端バンクを示します。


図5. 終端4 x 1マルチプレクサとして使用される8 x 1非終端バンク



メモ:終端マルチプレクサとしても、xx93スイッチは「ブレークビフォアメイク」リレーを使用します。リレー作動中、チャンネルは短時間非終端となります。動作中チャンネルの過渡反射で破損する恐れがあるため、アクティブなソースは切り替えないようにします。

上記の4x1終端済マルチプレクサでは、リレーの多くを前もってスイッチ設定することができ、チャンネルの接続または終端に必要なコマンド数を最低限に抑えることができます。

 
*高周波数
性能を向上するために、使用していないリレーを信号パスから離します。詳細については、スタブの影響を削減するセクションを参照してください。

表4.4x1終端構成の経路設定オプションの例

 

 可変次元行列

従来のスイッチマトリクスでは、行端子と列端子間の接続が可能です。NIスイッチマトリクスなどの最新のマトリクスでは、行から列、行から行、列から列の接続など、任意の入力間の接続が可能です。マトリクストポロジではすべての行と列の交点にリレーが存在します。このトポロジは柔軟性に富み、小さな行や列次元で同時に経路をいくらでも作成できますが、すべての交点にリレーがあるためコストが上がります。さらに、使用していない部分の接続されたトレースによって伝送ラインに容量性負荷とRFスタブが追加されるため、完全マトリクスは高周波数信号の転送には不向きです。これにより、反射が起こって信号に歪みおよび減衰が生じます。


図6. 4x8フルマトリクス

 


完全行列の代わりに疎行列を使用できます。このトポロジでは、制限された数の行/列同時接続しか使用できず、通常1度に1つの接続だけです。疎行列は通常それぞれのCOM端子が結束された2つのマルチプレクサで構成されます。このマトリクスは完全マトリクスに比べてリレーの数が少なくコストも低くなります。以下の図に示すように、標準の疎行列は単一のスタブのない単一接続を確立できます。


図7.単純な4x8疎行列

 


PXI/PXIe-2593およびSCXI-1193の柔軟なトポロジにより、RF性能を維持しながら任意の端子ペアを内部接続できます。そのため、1つのxx93モジュールは概念上任意次元の1つの疎行列とみなされます。可変次元疎行列機能の例を下に示します。

 


図8.最大18個の端子を持つ任意の疎行列をPXI/PXIe-2593に実装可能

 

 


図9.最大36個の端子を持つ任意の疎行列をSCXI-1193に実装可能



経路設定リソース使用した同時接続決定

従来の疎行列と比較して、可変次元疎行列構成が持つ利点は、複数の同時接続が可能なことです。経路リソースダイアグラムには、同時経路設定の決定に役立つようスイッチ内のリレーとパスがわかりやすく表示されています。このダイアグラムでは、トレースは部屋、リレーは壁で表示されています。信号はリレーの壁を介して部屋間を通過します。部屋には1度に1つの信号しか存在できないため、その部屋のリソースが使用されていると他の経路を設定できません。さらに、通過可能な壁もあります。フロントパネルの端子はダイアグラムの一番外側に位置します。

 


図10.PXI/PXIe-2593経路設定リソース図





図11.SCXI-1193経路設定リソース図



可変次元疎行列内で複数の同時接続が可能です。特定のアプリケーションにおいて端子割り当てを賢く選択することで、この機能を効果的に利用できます。

次の例は、概念的に4x14疎行列と扱われるPXI/PXIe-2593の経路設定リソースを示しています。実行可能な4つの同時接続を示します。

例:


図12.同時経路設定の例 - 1つの経路

 

 


Figure 13.同時経路設定の例 - 2つの経路

 

 


図14.同時経路設定の例 - 3つの経路

 

 


図15.同時経路設定の例 ― 4つの経路

 

低周波信号分布

必要に応じて、電源バスや励起信号などの複数のポイントに同時にソースを分配する必要があります。xx93モジュールでは、任意の、またはすべての端子を一緒に接続できますが、パスにチャンネルを追加するたびに伝送ラインも分岐されるため、一定のインピーダンスを必要とする高周波数信号には適しません。

たとえば、電源ソースをCOM0に接続してCH0、CH2、CH3、CH12、CH13に同時に経路設定することができます。以下の図は接続パスを示します。



図16.信号分布の例

 

スタブ影響削減する

どの端子ペアにも使用できるパスが2つありますが、RF性能に最適なパスは1つだけです。高周波数信号の経路設定を行う場合、スタブを最小限に抑えるパスを選択します。次の図は、CH0->CH1における2つのパスと準最適経路でRFスタブが性能に与える影響を示します。



図17a.RFスタブなしのCH0->CH1最適経路





図17b.RFスタブありのCH0->CH1準最適経路

 

 


図17c.RFスタブありのステップ応答

 


独立トポロジで信号を経路設定する場合、すべてのトリビュタリリレーを信号パスから離して、容量性負荷とスタブの影響を減らすことが重要です。たとえば、CH0->CH2を接続する場合、KB1は開いている必要があります。接続には直接関係しませんが、閉じているとA1B1が宙づり状態になって伝送ラインの負荷が大きくなります (次の図を参照)。これによって反射が起こり、VSWRと挿入損失が増加します。

 


図18a.最適なCH0->CH2経路



図18b.準最適なCH0->CH2経路:KB1を閉じるとRFスタブが生じる


「チャンネル」端子間を経路設定し、COMに接続しない場合は、必ずCOMリレー (KD0、KD5、KD6、KD11) を信号パスから離して切り替える必要があります。さもないと、多くのスタブが追加されます。



構成チャンネルおよびRFスタブ

プログラミングを簡素化するには、MAXですべての内部チャンネル (A0B0、B0B1C0など) を経路設定予約済みチャンネルとして定義します。NI-SWITCH 2.0は、これらのチャンネルを使用してモジュール内の経路を検出します。たとえば、単一の接続呼び出しを使用する場合、CH0->CH1は、上記の2つの経路のうちの1つを検出します。NI-SWITCHが準最適パスを選択しないようにするには、接続を行う前にB0B1C0を構成チャンネルとして無効にします。これによってもう1つのB0B1を介した最適経路が選択されます。CH0->CH2などのB0B1C0を必要とする接続を実行する前に、再度有効にすることを忘れないでください。このテクニックは手間がかかりますが、各内部チャンネルを明示的に接続するよりも効果的です。

 

差動信号経路設定

xx93スイッチは差動信号経路設定 (直列に接続した2つのバンクを使用) 用に、またはチャンネル間の位相スキューを最小限に抑える必要がある状況で使用されます。8x1チャンネルの各バンクは、それぞれの標準伝搬時間が100 ps内に位相整合します。ケーブルによってシステム中の信号伝搬が遅延します。すべてのケーブル長が同じであることを確認してください。それぞれのケーブルの長さが違うと、チャンネル間のスキューが増大し、スイッチ独自の位相整合性が無効になります。

 


図19.差動チャンネル間の伝播遅延: 100 ps未満

 

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