From Saturday, Nov 23rd 7:00 PM CST - Sunday, Nov 24th 7:45 AM CST, ni.com will undergo system upgrades that may result in temporary service interruption.

We appreciate your patience as we improve our online experience.

V2Xユースケース迅速統合するソフトウェア定義アプローチ

概要

自動車市場ではかつて専用狭域通信 (DSRC) テクノロジが主流でしたが、ここ数年で明らかになったのは、5Gのセルラー接続が普及しない限り完全な自動運転車は実現できないということです。最近、米国連邦通信委員会 (FCC) が5.9 GHz帯の一部をC-V2X (Cellular Vehicle-to-Everything) 専用に割り当てるという出来事がありました。これによってC-V2Xの動きが加速されるのは疑いありません[1]。ただし、その加速には予測できない部分があります。というのは、標準、アプリケーション、ビジネスモデルが未だ定まっていないからです。競争力を高めるために、自動車OEMとサプライヤは、テクノロジロードマップを速やかに整備し、関連する技術を製品や機能へと統合するための枠組みを構築する必要があります。新しいテクノロジの実現可能性を証明するには、シミュレーションも重要ですが、新しいアイデアをプロトタイプとして具体化することが不可欠です。

内容

V2X現在と​テクノロジによる制約

自動車と家電製品の境界があいまいになるにつれて、自動車メーカーは5G接続を含む幅広い通信技術を備えたシステムを提供することが求められています。ところが、5Gによるデプロイメントは、主に3GPPが策定する標準定義とその作業過程に大きく左右されます。この記事の執筆時点では、3GPPの最新リリース (Release 16) は、5G Phase 2の仕様を定義しています。対象となるユースケースとしては、そのユースケースは隊列走行 (platooning)、 車両、路側装置、歩行者間で情報共有するための拡張センサ (extended sensors)、自動運転 (automated driving)、クラウドベースの遠隔操作 (remote driving) から構成されます[2]

一方、こうした意欲的なリリーススケジュールによってさらに多くのユースケースが定義されることになり、今後登場するすべての要件や定義に自社製C-V2Xユニットを速やかに適合させ、プロトタイプを製造しなくてはならないというプレッシャーが各自動車メーカーにのしかかっています。通常、こうした状況が意味するのは多額の投資です。多くの場合、テスト装置のアップグレードは不可能なため、事実上、大きなリリースがあるたびに各メーカーは新しい装置を購入しなければなりません。NIでは、これを自動車コネクティビティ市場における厳しい現実とは考えずに、テストテクノロジの課題と捉えます。

図1:急速に変貌するテクノロジ

テストベッド標準与える影響

グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーションズ (GSM) などの過去の標準と同じように、コンバージェンスに向けた本格的な取り組みが行われています。国際標準化は、社会を変える大きな可能性を秘めています。図2はGSMが開始された経緯を示しています。参加者がアイデアを吟味し、議論を重ねた末に、標準を定義しました。そして標準化が策定された後は、いたるところで採用され、最終的に数十億ものデバイスに導入されました。

今日、セルラーV2XすなわちC-V2Xは、転換点にあります。数々のアイデアは短時間で収束して標準に組み込まれます。このため、貴社がこの標準に何らかのインパクトを与えるチャンスは今がピークなのです。この機会を逃さず、差別​化​を​推進​し、​市場​で​の​競争​力​を​高めなくては​なり​ま​せん。ただし、具体的なメリットが必要です。どのようにすれば、ご自身のアイデアや​ユース​ケースの実現性を検討し証明できるのでしょうか。

図2:大きな転換点へのアプローチ [3]

答えは明白です。プロトタイピングです。システムの複雑さが増すと、シミュレーションでは実現性を証明できません。テストベッド、つまりプロトタイプを使用する必要があります。テストベッドはワイヤレスの分野で広く使用されています。米国国立科学財団 (NSF) が主催するワークショップの1つで、次のような結論が出ています。「理論的研究において提示された仮説が現実世界によって否定される傾向にあることは、経験から明らかだ。そのため、きわめて現実的な動作条件下での評価にはテストベッドが重要なツールとなり、急進的なアイデアを完全かつ実用的なシステムでテストできるようなテストベッドの開発が不可欠である。」[4]

NI果たす役割

これまでNIがワイヤレスのプロトタイピングに携わってきた過程で、ソフトウェア定義のテストベッドソリューションを選択して成功した研究者に数多く出会いました。これと同じビルディングブロックを自動車産業でも使うことができます。

  • NIのソフトウェア接続型アプローチ — この方法は、C-V2Xテクノロジを研究して短時間でプロトタイプを作成する上で大変効果的です。ここでは、シミュレーションから実装にいたるまで、統合された設計ソフトウェアと市販のハードウェアを使用します。ソフトウェアを中核の要素とすることで、目的のアプリケーションに必要なシステムを適格に構築できます。アプリケーションに必要となるものが変わった場合でも、ソフトウェアで自分のアイデアを構築できますし、また既存のハードウェアを再利用できるため、それまでの投資が無駄になりません。 

  • NIのエコシステム — テストベッドの開発を促進するには、エコシステムの活用が不可欠です。クローズドターンキーソリューションと異なり、NIエコシステムでは、C-V2Xの操作をすぐに開始することができます。また、要件の変更に応じてテストベッドのカスタマイズや強化が可能です。たとえば、英国ウォーリック大学 (University of Warwick) 工学系学部のWMGに所属するインテリジェントビークル研究者が開発したコネクテッドカーのシミュレータ環境は、NIのテクノロジとエコシステムを活用しています。

V2Xツールソリューション

この3GPP NR V2X作業項目 [5] で述べられている主要なC-V2Xのユースケースは、Vehicles Platooning (隊列走行)、Extended Sensors (車両、路側装置、歩行者間で情報共有するための拡張センサ)、Advanced Driving (自動運転)、Remote Driving (クラウドベースの遠隔操作) の4グループに分けられています。これらのユースケースには、きわめて厳しい要件を満たすために、レイテンシが低く信頼性の高い新しいNRサイドリンク通信戦略が必要です。その戦略では、LTE-V2X、NR V2X、DSRCなどのマルチ無線アクセス技術 (Multi-RAT) がサポートされ、6 GHz超の周波数帯が検討対象となります。最新の無線規格の導入が可能かどうかは、車両通信シナリオの実験によって判断できます。以下に紹介するV2Xツールとソリューションは、拡大​を​続けるエコシステムを提供します。


図3:NI SDRプラットフォームに基づくS.E.A.社のV2Xテストベッド (画像提供: S.E.A社)

  • NIソフトウェア無線 (SDR) を使用することで、ワイヤレス通信システムのプロトタイプを短期間で作成し、より迅速に成果を上げることができます。低コストながらも柔軟性に優れたSDRにより、普通のPCが次世代ワイヤレスプロトタイピングツールに変わります。LabVIEWとの組み合わせによるNI SDRソリューションは、ソフトウェアとハードウェアをかつてないレベルで統合し、貴社のイノベーションを加速します。また、標準規格に基づいたアプリケーションフレームワークはそのまま使用することができます。これによって、特定のコンポーネントを対象とした迅速かつ集中的なイノベーションを実現します。
 
図4:移植性とパフォーマンスに優れるNI SDRプラットフォーム
 
  • あらゆる機能を網羅したV2Xソリューションを実現するために、NIはS.E.A.社と提携し、要件変更に伴うテストハードウェア交換の手間と費用を省いて、以下のことを可能にします。

    • 第1日目に行うシナリオを直ちにテストする。または、自分のシナリオをカスタマイズする。
    • オープンまたはクローズドループのHIL (Hardware-in-the-Loop) でV2Xサブシステムのテストを実行する。
    • テストですべてのレイヤへアクセスすることによって、さらに速く、より徹底したテストを実行する。
    • ハードウェア交換にコストをかけることなく、現在および将来のすべての3GPP標準に対応する。

まとめ

技術要件を常に把握し、トレンドの変化に適応できるだけの十分な柔軟性を維持する必要があります。貴社がご自身でテクノロジロードマップを整備し、関連する技術を製品へと統合するための枠組みを構築できるよう、必要な機能をNIが提供し、貴社の負担を軽減します。NIのアプローチ、拡大​を​続けるエコシステム、ワイヤレス研究者の実証済みベストプラクティスを利用することで、自動車エンジニアはV2Xテストベッドを構築してすぐに検証できるようになり、その結果、製品の差別化を推し進めて市場での競争力を高めることができます。

関連情報

V2Xのプロトタイピングとシミュレーションの詳細は、以下をご覧ください。

 

参考資料
 

[1] FCC votes to allow Wi-Fi, C-V2X in 5.9GHz.2021年1月29日にアクセス、https://www.lightreading.com/4g3gwifi/fcc-votes-to-allow-wi-fi-c-v2x-in-59ghz/d/d-id/765536

[2] 3GPP Release 16。2021年1月29日にアクセス、https://www.3gpp.org/release-16

[3] History of GSM.“Who Created GSM?” 2019年2月18日にアクセス、http://www.gsmhistory.com/who_created-gsm/

[4] NSF Workshop on Future Wireless Communication Networks.『Report:NSF Workshop on Future Wireless Communication Research (ワイヤレス通信研究の将来に関する米国国立科学財団 (NSF) のワークショップ) レポート)』の29~31ページ。2019年2月18日にアクセス、https://cpb-us-e1.wpmucdn.com/blogs.rice.edu/dist/2/3274/files/2014/08/nsf-wireless-workshop.pdf

[5] 3GPP TSG RAN Meeting #80。『Study on NR V2X』。 2019年2月18日にアクセス、http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_80/Docs/RP-181480.zip