Todd VanGilder - Genuen社
Ford Motor社が開発した乗用車用燃料電池のシミュレーション、制御、監視を行うためのHIL (Hardware-in-the-Loop) テストシステムを開発する。
NIのVeriStandのリアルタイムテスト環境、Wineman Technology社製のINERTIA制御ソフトウェアアドオン、NI PXIハードウェアをテストシステムのベースとすることで、Ford社はさまざまな燃料電池テストを1つのテストシステムで実施。
Todd VanGilder - Genuen社
Todd VanCamp - Ford Motor社
燃料電池は、水素ガスおよび大気中の酸素を電気エネルギーと水に変換する電気化学装置です。Ford Motor社は、乗用車に電力を供給するための代替エネルギー源として燃料電池の研究を進めています。燃料電池の研究では、以下を実現するためのテストシステムが必要です。
燃料電池は、厳密に平衡化した温度、フロー、冷却材圧力の制御、および正確な供給リソースの制御を必要とします。エンジン制御装置 (ECU) は、燃料電池を電子的に制御することでドライバーの入力に応答します。ECUは、コントローラエリアネットワーク (CAN) の受信および送信バス信号を介して閉ループ制御を提供します。Ford社の燃料電池開発チームは新しい燃料電池の試作の開発後、新しい燃料電池に対応する試験装置の構成をすばやく調整する必要があります。
Ford Motor社は、基本的な制御、データ収集、監視システムアーキテクチャを提供するソフトウェアソリューションを開発するため、NIパートナーであるGenuen社 (旧Wineman Technology社) を選択しました。当社は、より使いやすいテストソフトウェア環境を提供するため、NI VeriStandとINERTIAリアルタイム制御アドオンを選定して、開発と実装を行いました。ハードウェアについては、NI PXI、SCXI、NIの再構成可能I/O (RIO) FPGA (field-programmable gate array) モジュール、HILシステムにモジュール式プラットフォームを提供するEtherCATリモートI/Oデバイスを選定しました。NI VeriStand APIを使用して、LabVIEWのアプリケーションをカスタマイズすることで、より柔軟性に優れたユーザインタフェースを実現することができました。
NI VeriStandとReal-Time PXIは、リアルタイムなデータロギングによる確定的な制御を提供します。NI VeriStand INERTIAリアルタイム制御アドオンにより、温度、圧力、フロー制御モードの動的な切り替えを簡単に行えるマルチモード比例積分微分サポートが実現しました。
当社は、NI VeriStandのプラグインアーキテクチャとすぐに使用可能な機能を活用して、アプリケーション固有のハードウェアおよびソフトウェア機能を作成しました。これらのプラグインはアプリケーション全体で完全に統合されているため、NI VeriStandに搭載されている他の機能と同様の確定的な性能を備えています。また当社では、強化されたアラーム機能 (アラームマトリクス) と、対象のECUの出力をエミュレートする車両システムコントローラ (VSC) のプラグインを作成しました。これらのプラグインはどちらも、リアルタイム状態応答を必要とする、重要な機能を実行します。
アラームマトリクスプラグインでは、チャンネルと車両システムの状態を監視します。定義可能な警告レベルおよび車両システムの状態に基づいて、アラームマトリクスがアクションを実行し、VSCシステムの出力を低減します。VSCプラグインは燃料電池システムのゲートウェイとして機能し、車両ECUのシミュレーションを行います。VSCは、燃料電池システムから電源および冷却要件を受け取り、システム状態が要求されたレベルを提供しているかどうかを確認し、CANバスを経由してそのレベルを要求するか、燃料電池システムにレポートを返します。
NI VeriStandを使用し、カスタムNI LabVIEWコード、MathWorks社のMATLAB®で開発されたモデル、および他の開発環境で作成されたコンパイル済みのモデルと接続しました。そしてNI VeriStand環境にCANデータベースをアップロードし、信号をモデル出力にリンクさせました。モデルが実行されると、リアルタイムロジックにより電子負荷が正しい状態に維持されます。
次の反復で、Ford社は全車両シミュレーション用のNI VeriStandアドオンであるDynacarを選択しました。このアドオンを使用して、燃料電池を実装する対象車両を選択できます。Ford社のエンジニアは、プルダウンメニューを使用して、複雑なモデルを必要とせずにシミュレータを設定し、対象車両を厳密に複製することができます。システムにDynacarを追加することで、Ford社の燃料電池開発チームは実際のドライバーをループに組み込むのに必要なハードウェアを使用することができます。つまり、試験装置を離れることなく実際の運転条件下で車両内のシステムを評価することができるのです。
LabVIEWのアプリケーションをカスタマイズすることで、NI VeriStandを動的に設定し、システムに接続されているモニタ数に基づいてオンデマンドで表示されるさまざまなツールとI/O画面をユーザに提供することが可能になりました。これらの画面とツールによって、カスタマイズされたGUI機能の提供が可能になり、Ford社がアプリケーションに必要とする表示が可能になります。また、チャンネル構成、キャリブレーション、計算チャンネル、テストプロファイル生成などのNI VeriStand機能との相互作用も実現できます。
新しい燃料電池に使用されるセンサはプロトタイプによって様々です。そのため、試験装置の第一の要件はシームレスなセンサの変更でした。試験装置の操作と連携して燃料電池の相互作用を把握するには、センサフィードバックが不可欠です。この関係を把握するには、ロギングおよび試験装置データとの同期が必要になります。EtherCATリモートI/Oシャーシを使用することで、燃料電池をテストセルに投入する前に、センサを交換してシャーシに接続することができます。したがって、技術者が次にテストする燃料電池を接続している間も試験装置は動作することが可能です。これにより、時間と資源を節約できます。また、NI VeriStand内のEtherCATデバイス設定を使用して、新しい各燃料電池のセンサリストをアップデートすることもできます。
Wineman Technology社は、NIおよびFord Motor社と緊密に連携し、非常に複雑な代替燃料車アプリケーションの直感的なソリューションを実現しました。当社は長年にわたり高性能リアルタイム制御およびデータ収集システムを開発し、NIと緊密に連携し、NIリアルタイムハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームに関する豊富な知識を培ってきました。そのおかげでFord Motor社のテストシステム要件をすべて満たすことができる、高度かつ強力で柔軟性のある使いやすいシステムを実現できたのです。
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