ビジネスへの洞察
モビリティ | 7分で読めます
大規模なデータの保存、検索、共有、使用は、組織にとって常に難しい課題です。ADASと自動運転はそれに指数関数的な影響をもたらしています。データとソフトウェアに接続されたワークフローが解決策となる可能性があります。
作成者:Daniel Eaton、モビリティ部門主任フィールドアプリケーションエンジニア
「こんにちは。再度の登場になります。私はNIの主任フィールドアプリケーションエンジニア、Dan Eatonです。私は2005年から17年以上にわたりエンジニアリング分野で働いており、ADASと自動運転 (AD) 関連のテーマには約5年間携わっています。私の仕事は、自動車業界の顧客、特に世界の大手OEM企業と緊密に連携しています。このシリーズ記事の第2部では、皆様がベストプラクティスを適用したり、学んだ教訓を活用して問題を回避できるように、私が体験した洞察や経験を引き続き紹介します。では、前回中断したところから、急いで再開しましょう」
前号 (Automotive Journal 2023年1号) では、外部ロガーのデータスループットと同期について説明しました。 今回は、ソフトウェア接続型ワークフロー (図1を参照) とADAS/ADデータロギングの3番目の仕様であるデータストレージについて説明します。
図1:エンドツーエンドのAD検証ワークフローとデータフロー
最初の記事を書くにあたり、私たちは車両ごとにキャプチャし、保存する必要があるデータの量は、1日あたりすぐに数百TBに達する可能性のあることが分かりました。 連続8時間の運転には、最大144 TB (5 GB/秒 x 3600秒/時間 x 8時間) が必要になる可能性があることに注意してください。この要件を満たすには、高スループット (書き込み速度) と大量の容量の両方を備えた車載ストレージが必須です。しかし、データを取得し、車載ストレージデバイスに保存した後も、課題が終了するわけではなく、実際には問題の始まりです。これらのデータセットをすばやくアンロードまたはオフロードするにはどうしたらよいでしょうか。 これらの大量のデータをクラウドまたはITインフラストラクチャに安全にアップロードして、実際のアルゴリズムの学習や検証に使用するためにラボに取り込むにはどうすればよいでしょうか。交通の便が良い大都市から、田舎、無人地帯まで、世界中にある100台以上の車両群でこれをどのように行いますか。私は企業がこのような問いに苦労しているのを見てきました。最初のステップである車載ストレージ容量から初めて、これらのテーマを1つずつ確認しましょう。
100 TB以上のデータを保存できるSSDストレージの購入は簡単だと思う人もいるかもしれません。 適切に規制されたIT環境で働いているならば、おそらくこの意見は正しいでしょう。しかし、走行するIT (または車載のサーバグレードデバイス) について言えば、問題は複雑になります。車載のITストレージシステムを使用することが困難または不可能にする複数の要因があります。まず最初に思い浮かぶ課題は、電源電圧 (通常は12 VDC)、温度範囲、湿度、寸法、消費電力、機械的堅牢性 (衝撃と振動) などです。誤解しないでください。これらの基準の一部を満たすITストレージデバイスはありますが、これらをすべて満たすことは非常に大きな課題です。
多くの場合、こうしたニーズに応えるために、ポータブル拡張ドライブなどの小型の非ITグレードストレージが使用されます。 通常はUSB 3.xやThunderbolt™接続に対応した最大20 TB以上の大容量が市販されています。 これらのドライブはプラグアンドプレイ接続を提供しますが、数ギガバイト/秒の持続可能なデータスループットレートには対応できません。さらに、これらのポータブル拡張ドライブが容量やデータ転送速度の点においては十分であったとしても、これらのドライブが高頻度の読み取り/書き込み用途に向けて特化して構築されていないことは忘れられがちです。 このようなエラーはすぐに品質の問題につながり、データストレージの消耗につながります。有益で関連性のあるデータはおろか、数時間路上を走行してロギングを行い、データなしで戻ってくることほど、苦痛で大きなコスト要因となるものはありません。これらのアプリケーションでは妥協点を見つける必要があります。つまり、ITの世界と、自動車ロギングの世界が互いに近づく必要があることを意味します。
NIはSeagate社と提携して、ここで述べたハードドライブワークフローの課題に対処しています。Seagate社は、5 GB/秒以上の書き込み速度を持つ最大92 TBのSSD (書き込み時) を搭載したLyve Mobile Arrayドライブを提供します。 これらのドライブは標準のRAID (Redundant Array of Independent Disks) テクノロジを使用しており、ホットスワップ可能です。ケーブル接続されたPCI Express Gen 3カードを介してPCI Expressバスに直接接続することで、必要なデータスループットが確保されます。さらに多くのデータスループットまたはディスク容量が必要な場合には、別のケーブル接続されたPCI Express Gen 3デバイスとLyve Mobile Arrayを追加して、新しい要件に合わせて拡張できます。
車載ストレージの最初のステップを、容量とすでに述べたデータスループットに注目して説明したところで、次に、車両 (正確には車両群) からデータをオフロードまたはオフボードする方法を説明します (図2)。3つのアプローチの候補がすぐに思い浮かびます。 1つ目は、ワイヤレスまたはモバイルデータ転送です。2つ目は、車がガレージや作業場に戻った後にケーブルを接続する方法です。3つ目は、車両からストレージデバイスまたはドライブを物理的に取り外す方法です。
図2:SAEレベル2以上の自動車向けのADASとADデータライフサイクルの課題
ワイヤレスまたはモバイルデータ転送なら、いつでもどこからでもデータにアクセスできるので好ましいように思われます。しかし現実的に考えてみましょう。モバイルデータのカバー範囲は世界中でばらつきがあります。さらに、5Gや6Gの未来であっても、ネットワークで数ギガバイト/秒の膨大な量のデータを処理できません。 記録されたデータの大半は、モバイルネットワークでは実用的ではありません。緊急に使用するために特定のシングルコーナーやエッジケースのシナリオをラボに転送するようなニッチもありますが、実際のところ、モバイルまたはワイヤレスデータ転送は実行可能なオプションではありません。
次に、ケーブルを使用したデータ転送ですが、これはEVの充電方法と似ています。 (自動車の急速充電にかかる時間が短くなるのは素晴らしいことだと思いませんか)。 当然のことながら、ADASから記録されたデータ (特にカメラシステムの記録データ) をオフロードする際には、時間は重要な要素です。
車両あたり144 TB、オフボード用に100 GB (理論値は12.5 GB/秒) のイーサネットインタフェースと想定して、もう一度計算してみましょう。この量のデータ転送には3時間以上かかります (144 x 1024 GB / 12.5 GB/秒 ≈ 3時間16分) ので、ロギング車両の充電の方が問題が小さいことがすぐに分かります。 一晩かけてオフロードするのは実行可能なオプションかもしれませんが、このプロセスには1日最大150 TBのロギングキャンペーンを処理できる車載ストレージデバイスと組み合わせる必要があります。
最後に、自動車からストレージデバイスを物理的に取り外すことを検討します。以前に述べたように (Automotive Journal 2023年1号を参照)、ストレージ容量の制限だけではなく、すでに説明したポータブル拡張ドライブのその他の要素を考慮しても、USBドライブは選択肢にはなりえません。これらの基準以外に、物理的なオフロードについて考慮すべきことはあるでしょうか。 次の3つの項目を詳しく見てみましょう。
突然ですが、このデータロジスティクスの課題はデジタル世界だけに限定されません。ハードウェアを世界中に発送する必要があるため、物理的な世界ではこれが困難になります。 このようにして、当社は誰もが欲しがるこの貴重な資産について、データセキュリティの必要性をはっきりと認識しています。それらは現在、世界中を移動し、データ改ざんやデータ窃盗にさらされる可能性があります。データ暗号化とキー管理は、データパイプラインの戦略と実装に組み込まれる重要なトピックです。
これで、データとソフトウェアに接続されたワークフローを実装するためのベストプラクティスと学習の記事は終了です。Danは次号のAutomotive Journalでも引き続き洞察を紹介する予定です。NIの目標は、一連のソフトウェアとハードウェアソリューションを通じて、組織がデータとソフトウェアに接続されたワークフローを実装できるようにすることです (図3)。NIは、顧客とパートナーが開発を加速し、テストを戦略的な利点に変えることで、製品のパフォーマンスを向上させる支援をしています。
図3:データおよびソフトウェアに接続されたADAS/AD検証ワークフローを可能にするNIのソリューションポートフォリオ
ThunderboltおよびThunderboltのロゴは、米国および/またはその他の国におけるIntel Corporationとその子会社の登録商標です。