China Steel社: NI PXILabVIEW使用パレット空気漏れ検出システム開発

China Steel Corporation (台湾)、Dr. Wang Chih-Chung

「こうして開発した当社ソリューションは、作業員安全確保、省エネ化、二酸化炭素排出削減、生産向上など、効果実質成果たらています」

- China Steel Corporation (台湾)、Dr. Wang Chih-Chung

課題:

空気漏れの原因を点検する手法を開発し、空気漏れに関するデータを解析して、オーバーホールおよび焼結パレットの交換を定期的に行うための基準を確立することにより、焼結プラントの生産性を向上させる。

ソリューション:

空気音を拾う音圧マイクロホンとNIハードウェアおよびNIソフトウェアを使用して、焼結パレットの空気漏れを即座に検出するシステムを開発することで、省エネ化、低炭素化、生産性の向上、品質の改善を推進する。

作成​者:
China Steel Corporation (台湾)、Dr. Wang Chih-Chung
中國鋼鐵股份有限公司、王智中博士

 

鉄鋼業界の製鉄プラントでは、溶融鉄と原料を供給しています。高炉製鉄には、鉄鉱石を溶融および還元するための固体炭素燃料や炭素源となるコークスと、焼結物 (シンター) の両方が必要であり、それぞれコークス炉と鉄鉱石焼結プラントから供給されます。鉄鉱石焼結プラントでは、高炉製鉄の原料となる焼結物を製造しています。最初の処理工程では、原料である鉄鉱石、融剤 (石灰石など)、コークブリーズを攪拌機に入れ、水を加えて均一に混合し、ペレット状にしてから、所定の混合比で焼結機に送って焼成します。凝集された焼結物を粉砕し、選別して、5~50 mmの焼結ペレットにしてから、製鋼の主原料として高炉に送ります。

 

プラント問題点

透気性指数 (JPU) は、凝集工程において凝集状態をテストする重要な指標です。製造工程における透気性は、最終的に排気システムの通気量によって決まります。排気システムにおいて、焼結機は原料に直接接触し、ガス漏れが発生しやすい場所です。

 

焼結機は多数の焼結パレットで構成され、各パレットの前後には密封装置があります。これらの密封装置は、パレットの梁の底面にある硬い金属板とベローズ (ふいご) の側面に接触しています。焼結工程で充填される鋭い焼結原料と擦れ合うことによって傷や空気漏れが発生するのを防ぐためには、空間を広げる必要があります。焼結機のパレットに空気漏れが生じた場合、通気性が低下し、それによってペレットの形成が困難になり、最終的に焼結物の量が減少します。

 

焼結パレットが損傷していなければ、空気漏れがないため、システムファンへの負荷が小さくなり、消費電力も節約できます。パレットに空気漏れが生じている場合、一定の通気量を維持するためにファンの回転速度を上げる必要があります。そのため、ファンを駆動するモータの駆動電流が増加し、無駄なエネルギーを消費します。焼結プラントの生産性を向上させるには、空気漏れの原因の点検と空気漏れに関するデータの解析を効果的に行うことで、オーバーホールおよび焼結パレットの交換を定期的に行うための基準を確立する必要がありました。

 

従来空気漏れ点検手法

従来は、焼結機の稼働中に作業員が手作業で空気漏れの点検を行っていました。大量の粉塵や騒音 (約90~110 dB) に長時間さらされる状況下で、作業員は目視や聴覚で判断しなければなりませんでした。しかし、空気漏れは充填箇所やパレットなどの異なる箇所で生じる可能性があり、空気漏れの原因を特定することは非常に困難な場合があります。

 

また、空気漏れで生じる騒音の大きさは、漏れた空気の量と必ずしも相関関係にあるわけではありません。そのため、空気漏れの音を聞くだけで、その漏れが深刻なものであるかどうかを判断するのは困難です。また、手作業による点検の結果は数量化して記録することが難しいため、焼結パレットのオーバーホールを行う際の信頼できる基準にはなりません。

 

点検をスピードアップし、このような劣悪な作業環境に長時間さらされた作業者の健康リスクを回避するために、当社は空気漏れを自動的に点検するシステムを構築する必要がありました。つまり、作業員が自動点検システムを電気室で操作することにより、すべての焼結パレットの空気漏れの状態を即座に点検し、監視できるという仕組みです。また、将来的に焼結パレットのオーバーホールを行う基準を確立するために、このシステムを使用して信号解析とデータ記録を実施する必要もありました。

   

NI製品採用

情報技術 (IT) の価値は、問題を定性的および定量的に解析して可視化できることにあります。空気漏れ点検システムを導入するには、いくつかの方法を確立する必要がありました。具体的には、空気漏れの箇所を特定する方法、異なる空気漏れの性質を識別してその影響範囲を定量化する方法、計画的な保守と作業能力を考慮して保守が最も必要なパレットを選別する方法です。

 

信号の集録と解析に使用するプラットフォームを採用するにあたり、そのプラットフォームのプログラミング言語の使いやすさ、演算性能、ハードウェアの通信性能、長期的な信頼性などの要素を考慮しました。NIが提供している信頼性の高いさまざまなモジュール式ハードウェアを使用すれば、各測定ニーズに対応でき、NI LabVIEWをさまざまなツールキットと組み合わせることが可能です。NIのソリューションを活用してカスタマイズを行い、非常に柔軟で高度に統合されたシステムを迅速に開発し、当社のニーズと考慮事項を完全に満たすことができました。このシステムで、音響アレイ、RFID (無線周波数識別) 技術、NI PXIプラットフォームを組み合わせることで、自動空気漏れ点検システムに求められる優れたソリューションが実現しました。

 

ソリューション開発

パレットの空気漏れ状態を点検するために、空気音を拾う音圧マイクロホンを使用した試験を最適化する規定を定めました。同時に、パレットの各部の空気漏れ状態を完全に点検するために、アレイ構造と、NI PXIシャーシ、NI PXI-8106組込コントローラ、PXI音響/振動モジュールを組み合わせて使用し、データを収集しました。開発プラットフォームとしてLabVIEWを使用し、検査、検証、実装方法の実現可能性を高めるとともに、システムの安定性をテストしました。パレットの空気漏れの情報を即時に取得し、適切な保守を実施することで、省エネ化、二酸化炭素排出量の削減、生産性の向上、製品品質の改善を実現しました。

 

テスト結果

当社の最大規模の焼結プラントに完全な自動テストシステムを設置し、各パレットの空気漏れの状態を点検して記録しました。計測データに基づき、空気漏れが深刻な20台のパレットを修理したところ、良好な結果が得られました。定期修理を実施する前の平均生産量は1日あたり6,205トンでしたが、修理後は6,292トンとなり、生産量は1日当たり約87トン、生産率は0.65%増加しました。

 

焼結パレットシステムは、定期修理時を除き、1日24時間稼働するため、他のパレットに影響を与えることなく、この20台のみを修理することで、生産量を大幅に増加させることができました。生産量を一定に保ちながら、焼結パレットの空気漏れを削減して有効換気量を増加することで、焼結パレットファンにかかる負荷を減少させ、ひいては推進ファンモータに必要な駆動電流を減少させることができます。

 

修理前の消費エネルギーは3,282 kWs/h、修理後の消費エネルギーは3,245 kWs/hとなり、年間平均で約540,000台湾ドル (16,000米ドル超) の電気コストを削減できました。従来、焼結工程全体で1kWhあたり0.637 kgの二酸化炭素を排出していましたが、このシステムを導入した後は、年間約198トンの二酸化炭素排出量を削減できるようになりました。さらには、空気漏れが減少することで、焼結鉱の合格率が向上します。これにより、回収が必要な焼結物の量が減少し、回収コストを削減できるとともに、再焼結にかかる電力コストも回避できます。 

 

また、焼結鉱は高炉溶鉄の主要原料であり、その供給量が不足すると、代替原料としてコークス用の石炭のペレットを外部から購入する必要が生じます。従来、溶鉄工程で使用される焼結鉱とペレットの割合は約78対22でした。定期修理の実施後、焼結プラントから供給される焼結物の量は顕著に増加し、焼結鉱とペレットの割合は82対18に達しました。ペレットの代わりに焼結鉱を使用した場合の生産効率の向上により、
年間約1,800万台湾ドルの増加が見込まれました。また、原料としてペレットの代わりに焼結鉱を採用することで燃焼効率を改善し、焼結鉱と高炉の生産性を向上させた結果、高炉での消費エネルギーを節約し、鉄鋼生産コストを全体的に削減することができました。

 

NIハードウェアNIソフトウェア選ぶメリット

当社は、システム開発において、NIのエンジニアのサービスとサポートを活用しました。また、グリーンエネルギーエンジニアリングソリューションの開発を加速し、その実行可能性を検証する過程で、NIのエンジニアの支援を受けました。パレット空気漏れ点検システムにより、焼結鉱製品の品質と生産量が顕著に向上しており、今後、この技術を他の焼結プラントでも活用する予定です。こうして開発した当社のソリューションは、作業員の安全性の確保、省エネ化、二酸化炭素排出量の削減、生産性の向上など、効果的で実質的な成果をもたらしています。

 

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Wang Chih-Chung
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