「ニュースペース」成長企業への投資が加速しているなか、ビジネスモデルの実現可能性を証明するための飛行能力を早急に実証することが求められる、極端なプレッシャーを生み出しています。同時に、従来の宇宙市場は、防衛と科学の両方の目的を達成する能力に対する需要の高まりを反映しています。このような2つの理由から衛星の数が急激に増加し、衛星の市場投入までのスケジュール期間が短縮される傾向にあります。この新しい課題に対処するため、衛星をビルドし統合を行うエンジニアリングチームは、テストに対するアプローチを進化させる必要があります。
NIのアビオニクステストソリューションは、こうした新しい課題に対応できる拡張性に優れたアプローチを提供するものです。PXIプラットフォームのモジュール式ハードウェアとNIが提供するさまざまな高性能計測器は、コンポーネントの検証から製造テスト、完全な衛星の組み立て、統合に至るまで、アビオニクステストの多様なニーズに対応します。NIソフトウェアパッケージには相互運用性があるため、複数のプロジェクトでIPの再利用が可能です。また、自動化機能は厳しいスケジュール要件を満たすことにも役立ちます。最終的には、データの集約と解析を行うNIのアプローチがプロジェクトにおけるテスト運用を最適化し、次世代設計の市場投入までの期間を短縮することができます。
宇宙産業は、技術の進歩と政府、民間企業、その他の組織による投資の急増により、急速な変革の時期を迎えています。世界各国で月や火星などの宇宙関連プログラムに多額の投資が行われています。民間企業では、再利用可能なロケットの開発や宇宙へのアクセスの大幅な改善が実現されています。つまり、現在の宇宙開発競争はこれまでにない量の衛星コンステレーションによって加速され、その成果は地球観測、グローバル通信、科学研究、防衛などのアプリケーションに利用されています。
衛星技術の進化は、衛星を開発している企業にとってビジネスチャンス、革新、技術進歩の大きな推進力となっています。ただし、この業界の変革に伴い、企業やエンジニアリングチームが克服しなければならないビジネスとテクノロジの課題も増えています。衛星の中核をなすのは、さまざまなセンサ、飛行制御用のアビオニクスサブシステム、パワーエレクトロニクス、通信システム、そして固有のミッションペイロードです。本稿では、開発ライフサイクル全体で衛星アビオニクスシステムをテストする際の重要なステップについて説明し、技術的およびビジネス上の課題に対処して最終的にミッションが成功するよう取り組みます。
図1: 衛星は、さまざまなセンサ、アビオニクスサブシステム、パワーエレクトロニクス、通信システム、固有のミッションペイロードから構成されています。
衛星アビオニクスとは、衛星の飛行を担当、つまり多くの衛星システムに命令を出し制御するコンポーネントまたはシステムです。アビオニクスのテストは、衛星ミッションの開発と打ち上げを成功に導く重要なステップです。市場の競合他社の増加と厳しさを増す政府の規制により、衛星メーカーは多額のコスト負担とスケジュールの遂行を強いられています。政府のプログラムに対する過去の期待と比較して、現代のプログラムは、コストを削減し、アビオニクスコンポーネント、衛星バス、ペイロードサブシステム、完全に統合された衛星をサプライチェーン全体でより短いタイムラインで提供するという課題に直面しています。新しい宇宙関連企業では、資金調達の制限と市場参入企業の増加に伴い、至る所で市場投入までの時間に対するプレッシャーが高まっています。このような厳しい時間的プレッシャーによりテスト組織の負担は増すばかりです。開発遅延の発生、重要な予定時期に合わせてタイムラインの短縮を迫られるテストチームがその例です。
図2: 理想的なプロジェクトタイムラインと実際の比較 - 開発時の遅延発生によりテスト組織の負担が増加します。
技術面では、信頼性とテスト確度を確保することは大きな課題であり、特に最新の衛星アビオニクスとペイロードテクノロジに通じていることは重要です。低軌道 (LEO) 衛星への移行とコンステレーションの規模が拡大するなか、エンジニアリング企業や製造企業は限られたリソースの中で生産量を桁違いに拡大するという課題を抱えています。これらの課題に対処するため、衛星アビオニクステストに携わる組織は、製品のライフサイクル全体でより緊密かつ効率的に連携し、自動化技術に投資し、組織プロセスを改善してビジネス目標を達成する必要があります。
衛星アビオニクステストに対するNIのアプローチは、統合されたハードウェアとソフトウェアツールの使用、テストの自動化、お客様がデータをテスト戦略の重要な部分にできるようにすることを通じて、組織の効率を最適化し、衛星の品質と信頼性を向上させることを目的にしています。製品のライフサイクル全体にわたるデータ収集、信号調節、制御システム、自動テストソフトウェアの使用は、このアプローチに不可欠な要素です。NIのアプローチが目指すのは、エンジニアがコンポーネントの製造テストを自動化し、組み立て、統合、テスト (AIT) を加速し、テスト作業を開発プロセスの早い段階にシフトさせることです。衛星コンポーネントとサブシステムのテストにデータの管理と解析を組み込むことで、開発サイクルの早い段階で問題を特定して解決することが容易になり、コスト効率も高くなります。NIは、衛星メーカーに対してテストプロセスを効率化し、品質と信頼性を確保し、最終的に時間とコストを削減する包括的なソリューションを提供します。
図3: 衛星テストに対するNIのアプローチは、統合されたハードウェアとソフトウェアツールの使用、テストの自動化、お客様がテスト設計 (DFT) 戦略を導入できるようにすることを通じて、組織の効率を最適化し、衛星の品質と信頼性を向上させることを目的にしています。
ソフトウェア定義型計測器を使用すると、検証と製造テストのライフサイクル全体で同じ装置と計測IPを再利用できるようになり、テスト装置の総コストを削減できます。ソフトウェア定義型計測器を使用すると、1台の機器で複数の機能を実行したり、組織全体でハードウェアを標準化できるようになり、柔軟にテストを進められるようになります。さらに、ソフトウェア定義型計測器を使用すると、テストを容易に自動化できるため、手作業による計測を最小限に抑え、拡大する生産量に対応することができます。限られた数のテスト設備を標準化して再利用することで、計測機能の自動化および強化、テストカバレッジの拡大、柔軟性を維持したコストの維持に対して、より多くの注意を向けることができます。
衛星アビオニクスシステムは、機械システムやアクチュエータなど、衛星のほぼすべての部分と通信します。通信先には、機械システム/アクチュエータ、ガイド/ナビゲーション/制御 (GN&C)、および電気パワーシステムなどがあります。これらのインタフェースには、制御信号、センサ信号、ナビゲーションと通信用の信号、電源が含まれます。アビオニクスシステムのさまざまな信号I/Oにより、さまざまな計測器と機能を使用したテストソリューションが必要になります。NIでは、PXIプラットフォーム用の業界をリードするデータ収集、制御、電子機器を用意して、最新の衛星アビオニクスシステムのあらゆる技術要件に対応できるようにしています。また、PXIプラットフォームを使用すると、チャンネル数の増加に応じた信号追加や、追加のコンポーネントがシステムに統合される際の新しい信号タイプによる拡張が可能になる、スケーラブルなアプローチが可能になります。PXIのタイミングと同期により、衛星アビオニクステスト機能は、性能と拡張性に関する最も厳しい技術要件を満たすことができます。
従来、多数のテストポイントでの計測にスイッチが使用されてきましたが、これは多チャンネルの計測器を使用すれば簡素化できます。たとえば、すべての電圧測定がDMMの確度を必要とするわけではなく、高密度データ収集 (DAQ) モジュールを使用すればテストシステム内で切り替えを行う必要がありません。計測器には通常、内部スイッチまたは高い入力インピーダンスがあるため、計測器をDUTから接続解除するための追加のスイッチは必要ありません。また、高密度I/Oを使用すると、より綿密な検証テストが可能になるため、プログラムの早い段階で問題を特定でき、プロジェクトのタイムラインとリスクを軽減できます。衛星アビオニクスに関連する信号の密度と種類の多さから、効率的なテスト時間を維持しながらテストカバレッジを最大化することは困難ですが、PXIで提供される密度により、テスト時間への影響を最小限に抑えてテストカバレッジを最大化できるため、プログラムのリスクが軽減されます。低コストで高密度のチャンネルを使用して、重要でないチャンネルを予期しない過渡について監視することで、すべてのピンに対して同レベルの調査とテスト時間をかけることなく、より完全な監視を行うことができます。
テスト対象のDUTによっては、汎用I/Oでは必要な計測の実行が適切でない場合があります。これらのピン/チャンネルの計測には、専用の装置を使用するか、外部信号調節を使用します。すべてのピン/チャンネルを同時に計測するのが理想的であるため、一般に信号調節を行います。しかしそうすることで、多くの場合持続可能性や保守性の問題が生じます。PXIプラットフォームには、テストシステムの設計と保守を簡素化する一般的な信号調節機能を備えたモジュールが用意されています。PXIモジュールの他に、SLSC (Switch Load and Signal Conditioning) シャーシを利用して、アプリケーション固有の信号調節要件に対応することができます。
NIの衛星アビオニクス機能テストソリューションでは、包括的な混合信号ハードウェアポートフォリオ、計測抽象化ソフトウェア、完全にカスタマイズ可能なシーケンスエンジンと自動化フレームワーク、ラックベースのテストシステムインフラストラクチャ、アプリケーション固有の追加ハードウェアの収容スペースが提供されます。こうしたインフラストラクチャによって、PXIベースのテストシステムでは、ほぼ統合されたテストシステムの設計、調達、組み立て、実装が効率化されるため、テスト開発のタイムラインを大幅に短縮できます。
さらに、マスインターコネクトを使用すると、テスト資産自体を変更することなく、テスト資産を複数の製品および製品ファミリで活用できます。インタフェーステストアダプタ (ITA) を変更することで、テスト資産を再利用しながら、高価なテストハーネスへの変更を最小限に抑えるか、完全になくすることができます。PXIのモジュール式I/Oを使用すると、衛星アビオニクスシステムに必要なチャンネル数に合わせてシステムを拡張できます。つまり、将来のプログラムのニーズに合わせて、新たにシステムを調達することなく、同じシステムを拡張することができるのです。このようなシステムは、アビオニクスコンポーネントの設計、検証、製造、AITに至るプログラムのライフサイクル全体を通して維持することができます。またハードウェアは、さまざまなテストニーズに合わせてソフトウェアを変更すれば再利用できます。
衛星アビオニクスの機能テストに必要な各種計測器に加えて、テストシステムでは多くの場合、イーサネット、Serial RapidIO®、SpaceWireなどの異なるデジタルアビオニクスプロトコルが必要です。このようなインタフェースをテストシステムに組み込むと、特定の仕様要件を満たす市販 (COTS) の機器がないため、多くの場合、スケジュールと保守性に大きなリスクが生じます。NIでは、お客様の技術要件を満たすためのカスタマイズ性を犠牲にすることなく、COTSソリューションの利点とカスタム設計の利点を組み合わせて、お客様の技術的ニーズを満たすアプローチを提供しています。NIのツールは、ユーザによるプログラミングが可能なFPGAを搭載しているため、最大限のカスタマイズが可能でアプリケーションの要件を満たすことができます。従来のアプローチとは異なり、NIではすぐに使用できるより高いレベルの開始点を提供し、ソリューションの作成に必要なエンジニアリングの量を減らします。
NIのPXIプラットフォームを使用すると、完全に自動化された特性評価から組み立ておよび統合検証テストまで、立ち上げ、デバッグ、迅速な学習が容易に行えます。 NI InstrumentStudio™ソフトウェアなどのツールを使用することで、デザイナや技術者はインタラクティブに、使い慣れた計測器を使用してプログラミングなしで設計上のトラブルシューティングを行うことができます。 基礎となるソフトウェアフレームワークにより、設計段階で以前に最適化された測定パラメータをエクスポートして、NI TestStandなどのツールを使用した自動テストの後の段階で再利用することにより、自動テストシーケンスで設計時の労力を活用できます。
現在、企業が直面する大きな課題の1つに、ソフトウェアフレームワーク、プログラミング言語、テスト自動化ツールの使用においてサプライヤが標準化されていないことが挙げられます。これは特に衛星の組み立て、統合、テスト (AIT) 時に問題となります。その理由は、複数のコンポーネントサプライヤのATEを使用した複雑なテストが必要だからです。この課題を克服するため、NIはデータ共有とプロセス制御のための高度なツールとアプローチを採用し、相互運用性とリモート可能性に対するお客様の変化するニーズに応えました。NIのリモートアビリティツールは、オープンソースの高性能なリモートプロシージャコール (RPC) フレームワークであるgRPCを活用して、プログラミング言語や環境間の互換性を促進する、テスト設備間のシンプルなソフトウェアインタフェースを組織に提供します。gRPCを使用すると、組織はサプライヤとテスト設備間で標準の相互運用性レイヤを実装できるので、サプライヤ側では既存のワークフロー内で好みの言語とツールを利用して作業できます。
スケジュールの短縮、競争の激化、衛星と機器の複雑さの変化、設備および運用コストなどの市場からのプレッシャーにより、衛星企業の効率が低下したり全体的な成功が阻害されたりする可能性があります。接続性、解析、自動化を伴う製品中心のデータ戦略を利用することで、これらの組織は製品とプロセスデータのビジネス価値を最大化することができます。製品中心のデータ戦略は、プロセスおよび機器から従来のデータソースを組み込むだけでなく、仕様、設計の進化、統合の各ソース、特にテストソースからもデータを取得します。製品データは結果を追跡するため、引き続き製品中心戦略の中核となります。
運用効率を高める必要性が叫ばれるなか、テスト運用部門はデータ生成機能を改善することで、ビジネス価値を高める必要があります。SystemLink™ソフトウェアはラボと製造テスト設備を接続して、システムとそれが生成するデータを集中管理することができます。テストデータを使用して、ビルドおよび統合プロセス全体を通した衛星コンポーネントとシステムのパフォーマンスを監視できます。これは問題や改善が必要な領域を特定するのに役立ちます。衛星企業はこうした問題を早い段階で特定することで、コストのかかるスケジュール遅延の原因となる設計変更を回避することができます。NIのSystemLinkソフトウェアエコシステムを使用すると、企業は、ソフトウェアに接続された最新のアプローチを使用して設計およびテストデータを解析し、エンジニアのニーズを満たすことに重点を置いて、高度なデータ管理戦略を採用できます。SystemLinkは、NIのソフトウェアに関する豊富な専門技術と新しいクラウドと機械学習のテクノロジを組み合わせて、新製品やイノベーションをすばやく生み出すエンジニアを支援します。
衛星アビオニクス製品の複雑化により、エンジニアチームは、ますます制約されるスケジュールの期待に応えながら、より複雑なテストシステムを提供する必要に迫られています。こうしたプレッシャーのエスカレートの原因は、競争が激化する製造市場にあります。オペレーショナルエクセレンスによるコスト削減が実現できるかどうかが、市場のリーダーになれるか、競合に埋もれるかの分かれ目になります。このようなプレッシャーを克服するため、最高クラスのエンジニアリンググループは、COTSコンポーネントの再利用可能なフレームワークを使用したテストアプローチの標準化を進めています。このアプローチは開発を加速すると同時に将来の拡張性を確保します。
NIは40年以上にわたってテスト業界をリードしています。テストに対するNIのプラットフォームアプローチは、高性能な計測器にテスト開発/シーケンシング/管理ソフトウェアツールを組み合わせて、お客様が求める仕様、納期、予算に応えます。NIは、プロセス、システム、ソフトウェア、データインフラストラクチャを標準化して、解析などのデジタル化テクノロジの強力な基盤を構築し、データの利用率を高めて製品と運用パフォーマンスが向上するよう支援します。