NI Linux Real-Time概要

概要

内容

NI Linux Real-Time進化

Linuxは、これまで組込システム開発で長く使用されてきました。それは主に、無料かつオープンソースであり、コミュニティにより育てられサポートされてきたためです。初期の組込ソフトウェア開発者は、LinuxはRTOSではないと結論付け、組込アプリケーション向けにLinuxと専用RTOSを結合したハイブリッド方式を数多く開発するにいたりました。

組込システム開発で使用するLinuxがハイブリッドソリューションからさらに成熟すると、開発者はLinuxカーネル自体の確定性を高める機能を加えるようになりました。さらに最近では、PREEMPT_RTパッチセットは、Linuxカーネルの改善努力を上回り、Linuxでリアルタイム性能を実現するための方式として次第に認知されてきています。NIは、PREEMPT_RTパッチを活用してNI Linux Real-Timeを構築してきました。PREEMPT_RTパッチセットの詳細については、A Real-Time Preemption Overview (英語) を参照してください。

NI Linux Real-Timeメリット

過去には、リアルタイム性能を確保するためにユーザビリティを犠牲にしてきました。NI Linux Real-Timeにとって幸いなことに、Linuxが提供するユーザビリティのメリットの多くは引き継がれています。これは、これらのメリットの多くが、ほぼそのままの状態で保持されているLinuxカーネルに由来しているためです。そのためNI Linux Real-Timeには当然のように専用RTOSと同等のリアルタイム性能が備わっており、しかもユーザビリティが犠牲になっていません。RTOSのユーザビリティが向上した例として、汎用Linuxから取り込んだ実装済みの安定したネットワークスタックがあります。このRTOSをサポートするリアルタイムターゲットは、ネットワークスタックの向上により、真のデュアルDHCPネットワークインタフェースカード (NIC) をサポートすることができ、再起動しなくてもネットワーク設定や時間設定の変更を適用できるほか、IPv6やSNMPなどの通信プロトコルのサポートが拡充されています。NI Linux Real-TimeがCompactRIOコントローラ上で提供するローカルHMI向けのディスプレイサポートも、非常に優れた例の一つです。 

さらにLinuxは、市場で最も普及している専用RTOSさえもはるかに凌ぐユビキタス性を備えているため、この新しいRTOSはIPやツールのエコシステムがさらに充実していると同時に、経験豊富なユーザの大部分がRTOSの持つ力を利用できるようになります。NI Linux Real-Time OSをサポートするリアルタイムターゲットを使用する際、Linuxが提供するエコシステムによってソリューションの機能をより自由に補強できるだけでなく、社内に精通した技術者がいなくても多くの経験豊富なLinuxユーザを活用することができます。専用センサなどのサードパーティ周辺ハードウェアのサポートを簡単に追加できたり、簡単にC/C++コードを統合できたりするなど、NI Linux Real-Timeには多くのメリットがあります。

使いやすさやエコシステム以外のメリットとして、NI Linux Real-Timeは多くの専用RTOSと異なり真のデュアルモードOSであるという点があります。デュアルモードOSであるNI Linux Real-Timeは、非常に高い回復能力を備えています。アプリケーションがクラッシュしてもシステムは動作を継続し、大きな中断を伴うことなくアプリケーションの障害から復帰することができます。NI Linux Real-Timeは、真のマルチタスクサポートも可能にしており、複数のプログラムを並列に実行することができます。例えば、LabVIEW Real-Timeアプリケーションと同時に、リアルタイムターゲット上でデータベースを直接実行することが可能です。

最後のメリットとして、このRTOSは、ユーザアカウント管理とユーザファイルシステム許可の処理能力において優れています。これもやはりLinuxによるメリットです。ユーザによる操作も、NI Linux Real-Timeをサポートする組込デバイスにより簡単に記録できます。さらに、VPNやファイアウォールなどのセキュリティ機能を実装できるため、ネットワークセキュリティ強化のためだけに外部ハードウェアを追加する必要はありません。

パフォーマンス

NI Linux Real-Timeは、現行のCompactRIOターゲットに搭載されている専用RTOSに匹敵するリアルタイム性能を備えています。NI Linux Real-Timeターゲットのジッタは、NIが提供する現行のリアルタイムシステムのジッタと同程度です。実際の制御およびストリーミングアプリケーションにおいては、NI Linux Real-TimeベースのCompactRIOによって、制御ループやストリーミングループをより少ないプロセッサ使用率で高速に実行できるため、パフォーマンスが大幅に向上します。LinuxベースのRTOSが提供する性能についてさらに詳しく知りたい場合は、「NI CompactRIO高性能コントローラ:性能/スループットベンチマーク」を参照してください。

NI Linux Real-Time広がる機能

NI Linux Real-Timeは、リアルタイムアプリケーションの厳しい要件に応える性能を維持しつつ、大幅な改良を実現しています。性能ベンチマークが示すように、NI Linux Real-Timeのジッタは現行のリアルタイムシステムのジッタと変わりませんが、システムレベルの性能は専用RTOSに比べ大幅に向上しています。

またLabVIEW再構成可能I/O (RIO) アーキテクチャが提供する抽象化性能、ポータブル性や生産性は、NI Linux Real-Timeをサポートするターゲットにも拡張されています。新しいRTOSでもLabVIEWソフトウェア開発環境は全てのNI組込ターゲットにおいて統一されているため、他のNI組込ハードウェアからNI Linux Real-Timeベースのターゲットにもコードのシームレスな移動が可能です。この新しい技術を活用するため、NI Linux Real-Time対応ターゲットに今すぐアップグレードされることをお勧めします。

NI Linux Real-Timeの詳細情報

Linuxは、Linus Torvalds氏の米国およびその他の国における登録商標または商標です。