LabVIEWを使用することにより、エンジニアや研究者は多彩なハードウェアデバイスをシームレスに統合し、すべてのハードウェアで一貫したプログラミングフレームワークを使用して開発時間を短縮することができます。
システムのプログラミングをするために必要となる事前のセットアップは、プログラミングや本来の目的である計測およびテストよりも時間がかかることもあるほど、手間のかかる作業です。異なるハードウェアデバイスを従来型のツールで統合しようとすると、多くの時間がかかるうえ、互換性を確保できない可能性もあり、リスクが高まります。まず、すべてのハードウェアに適したドライバを確認し、インストールしてソフトウェアから呼び出す方法を確認する必要があります。ドライバが使用可能になったら、ハードウェアと通信を行い、そのドライバの設計者がデバイスに対して適切と判断したプログラミングモデルを理解する必要があります。LabVIEWを使用すれば、上述のような手順が不要になり大幅に簡素化されま す。
LabVIEWは、すべてのハードウェアコンポーネントに対応するソフトウェアツールです。一般的なハードウェアデバイス用のドライバは、あらかじめめ用意されています。各ハードウェアドライバは、共通の使いやすいプログラミングモデルを採用しており、LabVIEWに直接インストールするためのモデルのサンプルも用意されています。
LabVIEWを利用すると、すべてのハードウェアを1つの開発環境で統合することができます。ドライバソフトウェアは、LabVIEWとハードウェアの通信レイヤとして機能するため、接続も確保されます。LabVIEWドライバソフトウェアであれば、データ収集デバイス、スタンドアロン計測器、モジュール式計測器、モーションコントローラとモータドライブ、マシンビジョン/画像処理ハードウェア、ワイヤレスセンサ、FPGA(field-programmable gate array)など、複数のタイプの計測器、バス、センサをシームレスに統合することが可能です。万が一LabVIEWドライバがない場合は、他のプログラミング言語からドライバをインポートするか、低レベル通信機能により独自のドライバを組み込むことができます。
図1: LabVIEWは多彩な計測および制御デバイスをシームレスに統合します。
NIは、デスクトップ、ポータブル、産業用、組み込みなど各種アプリケーション向けのデータ収集(DAQ)製品を提供する、PCベースのデータ収集分野の世界的トップメーカーです。NI-DAQmxドライバソフトウェアを使用すると、USB、PCI、PCI Express、PXI、PXI Express、ワイヤレス、イーサネットなどの主要バスやフォームファクタで、200種類を超えるデータ収集デバイスをLabVIEWで統合することができます。
NIでは、データ収集ハードウェア以外にも、各種テスト、計測、制御ハードウェアをご用意しています。PXI計測器により計測、信号生成、無線周波数(RF)、スイッチなどのコンポーネントを同期して、自動テストシステムを構築できます。NIプログラマブルオートメーションコントローラは、PLCの堅牢性とPCの性能を兼ね備えたもので、産業用計測および制御アプリケーションに最適です。またビジョンデバイスには、コンポーネントの位置の検証、物理要素のカウント、バーコードの読み取りなど、従来型センサには少ない独自の機能が搭載されています。ハードウェアのタイプに応じたドライバソフトウェアをご用意していますので、LabVIEWと簡単に統合できます。例:
上述の製品のドライバは、すべてLabVIEWを念頭に置いて設計されており、ハードウェアの全機能が利用しやすくなっています。ドライバはLabVIEWに直接インストールされ、機能パレットに新しい機能が追加されるため、ハードウェアサポートの利用に手間取ることもありません。NIのデバイスドライバにより、デバイス名のエイリアスやハードウェアシミュレーションといった高度な機能が実装されるため、特定のデバイスに縛られることなくソフトウェアを開発することができます。ご使用のデバイスが同じ機能をサポートする限り、たとえばPCIベースのデータ収集デバイスからワイヤレスデバイスに変更した場合など、基本となる技術を大幅に変えたとしても、ドライバは新しいデバイスに適応することができます。
LabVIEWで可能となるのはNIハードウェアへの接続だけではありません。LabVIEWは、計測器のドライバを介して多彩な他社製計測器に接続することもできます。計測器ドライバネットワーク(IDNet)では、350社を超えるベンダが提供する10,000種類以上の計測器用の無料ドライバを提供しているため、ご使用のハードウェアをLabVIEWとともに使用することが可能です。
それらのドライバのほとんどがNIにより認定されていますので、品質や操作性はNIが求める基準に達しており、NIのアプリケーションエンジニアのサポートを受けることができます。
ご使用の計測器のドライバが見つからなかったり、既存のドライバに機能を追加したい場合は、LabVIEWウィザードを使用して、計測器ドライバの開発に必要なフレームワークをすばやく作成するためのコードを自動生成できます。LabVIEWには、GPIB、シリアル(RS232、RS485、RS422)、USB、VXI、PXI、イーサネット、IEEE 1394、VISA、Modbus、OPC Serverなど、主要な計測器制御規格で通信するための機能が搭載されています。
ni.comでは、NI製ハードウェアと他社製計測器の両方の無料ドライバを多数提供しています。すべてのNI製ハードウェアには無料のLabVIEWドライバソフトウェアが付属していますが、ドライバCDを紛失したりアップグレードが必要な場合も、ni.comで検索するだけで最新版を見つけることができます。多くの他社製計測器にも、LabVIEWドライバが付属しています。それらのドライバのほぼすべてを集めた計測器ドライバネットワーク(IDNet)は、業界でも最大の計測器ドライバサイトで、数百社に及ぶベンダが提供する数千種類の計測器モデルに対応しています。
図2: IDNetは、業界最大の計測器ドライバコレクションです。
IDNetでの検索だけではなく、LabVIEWの計測器ドライバファインダを使用すれば、他社製計測器も検索することができます。LabVIEWは、接続された計測器を自動検出し、その計測器から得られたモデル番号と一致する計測器ドライバをIDNetで検索します。また、計測器ドライバファインダがドライバをダウンロードしてインストールし、わずか数秒で使用できる状態になります。
図3: LabVIEWの計測器ドライバファインダで、接続された計測器を検出して一致するドライバを検索します。
すべてのLabVIEWドライバはインストーラまたは計測器ドライバファインダのいずれかによってインストールされるため、DLLやその他のファイルを特定の場所に手作業でインストールする必要はありません。
ハードウェアのドライバソフトウェアがインストールされると、LabVIEWに組み込まれてパレットが作成され、機能に簡単にアクセスできるようになります。機能をブロック図にドラッグアンドドロップするだけで、ハードウェアデバイスの構成と制御ができます。
図4:ドライバがインストールされると、計測器の機能パレットにアクセスできます。
インストールが完了すると、すべてのハードウェアドライバの使用と再使用が可能になります。特別な命令や個別のファイルのロードは不要です。ヘルプファイルを探す必要もありません。LabVIEWの機能には、それぞれ詳細なヘルプが付属しています。機能の上にマウスを置くだけで、その動作やパラメータについての説明が表示されます。
ドライバソフトウェアの中には、物理的な信号接続を正しくセットアップしてテストできる機能を備えているものもあります。たとえばNI-DAQmxドライバでは、特定の計測を行うのに必要な各種接続を示す接続図を見ることができます。ユーザマニュアルでも参照できますが、この接続図があれば大幅な時間の節約になります。
図5: 一部のLabVIEWドライバには信号接続をサポートする接続図が組み込まれています。
さらに、NI-DAQmxドライバにはテストパネルが搭載されており、それを使用すると、デバイスで収集または生成中の実際の信号と物理接続をテストしてトラブルシューティングすることができます。
図6: NI-DAQmxドライバのテストパネルを使用すると、信号のテストとトラブルシューティングをすばやく行えます。
LabVIEWドライバでは、低レベルのハードウェアコマンドが、わかりやすい高レベルの機能に変換されます。また、ほとんどのLabVIEWドライバでは、同様のプログラミングフレームワークを採用しています。アプリケーションの流れは、次のようになっています。まずハードウェアの接続を開くところから始まり、ハードウェア設定の構成と、ハードウェアでの計測データの読み取り/書き込みを行い、最後にハードウェアへの接続を閉じます。ほとんどのドライバはこの流れになっているため、新しいドライバを使うのは比較的簡単で、開発にかかる時間を節約できます。
図7: LabVIEWのハードウェアドライバは、共通のプログラミングフレームワークを採用しています。
LabVIEWドライバが採用している共通のプログラミングモデルは、長年にわたって計測ハードウェアを扱ってきた経験から生まれたものです。一般のユーザは計測データがプログラムにどのように戻されるかには関心がないでしょう。レジスタベースとメッセージベースの通信の微妙な違いも重要ではないと思われます。ユーザにとっては、適切なコマンドを送って正しいデータを得ることが最も大切なことなのです。そのためLabVIEWドライバでは、デバイス間の同期のような高度な機能を使用するのに必要な低レベル操作だけでなく、「シングルポイント計測の読み取り」や「サンプルクロックの構成」といった高レベルの直感的な操作も行えます。ハードウェアとLabVIEWの間でデータがどのようにやり取りされているかについての具体的な情報は必要なく、1つのアプリケーションで複数の異なるプロトコルを使用する場合でも、使い方を習得するのは1つの方法で十分です。
LabVIEWの初心者にとっても経験豊富なプログラマにとっても、NIサンプルファインダは非常に便利な開発ツールです。解析、表示からドライバソフトウェアに特化したサンプルなど、あらゆるタスクを対象としたサンプルプログラムの検索や参照ができます。既存のサンプルプログラムは、アプリケーションに合わせて修正したり、コピーしてプログラムにペーストすることもできます。多彩なサンプルをご用意していますので、一からアプリケーションを開発する必要はありません。
図8: NIサンプルファインダにはインストールされているすべてのドライバが表示されます。
各ドライバがインストールされると同時に、サンプルプログラムもインストールされます。そのため、わかりにくいハードウェア特有のサンプルに悪戦苦闘することなく、共通のAPIの利点を享受することができます。各ドライバには、サポート対象のハードウェアの使用方法を示す固有のサンプルが付属しています。
多彩なハードウェアデバイスに接続可能なLabVIEWは、ハードウェアをPCに接続する方法として最適です。また、LabVIEWは便利な機能を搭載しているほか、すべてのハードウェアに共通のプログラミングフレームワークを採用しているため、開発を迅速化することが可能です。ただし、LabVIEWが優れているのはハードウェアへのインタフェースだけではありません。LabVIEWには、多数の解析機能が内蔵されているほか、高度なユーザインタフェースを作成してデータを可視化するためのドラッグアンドドロップコントロールが搭載されています。また複数の方法でデータやレポートを保存したり、世界のユーザと交流できるコミュニティも利用することができます。このような優れたハードウェア統合性や機能を備えたLabVIEWは、業界をリードするソフトウェアプラットフォームとなっています。