状態監視向けセンサ

概要

状態監視システムは、装置の劣化を検知するためのものです。通常、装置の重要度と信頼性の評価を行って、重要な装置や一般的な故障モードを選択します。選択した装置と故障モードを利用することで、装置を構成する特定のコンポーネントの劣化や選択した特定の故障モードの兆候を監視するためのセンサを決めることができます。

状態監視アプリケーション向け計測テクノロジセンサ

装置のコンポーネントに生じる変化は、多くのセンサによって検出されます。たとえば、回転機械の監視に最もよく使用されるものに振動センサがあります。多くの場合、故障が発生する約2ヶ月前に装置のコンポーネントの機械的な劣化を検知できるとされています (図1)。

図1: センサを使うことで設備の劣化を事前に検出できます。

それ以外にも、図2に示すように、装置の状態監視で使用されるセンシングテクノロジには、モータの電流を測定するセンサ、オイル解析センサ、サーモグラフィ、動的圧力センサ、速度をはじめとする動作状態を監視するセンサなどがあります。

図2: さまざまな状態監視テクノロジによって、各設備を担当するスペシャリストは設備の状態を把握できます。

表1に、状態監視に使用される各種センサの概要と代表的なベンダを示します。

計測対象センサの種類周波数レンジ信号調節に対する要件ベンダ
振動加速度計>100 Hz

IEPE

AC/DCカプリング

±24 V入力またはACカプリング

アンチエイリアスフィルタ

IMI Sensors社

Connection Technology Corporation社

Endevco社/Wilcoxon社

振動速度>20 Hz~<2 kHz

IEPE

AC/DCカプリング

±24 V入力またはACカプリング

アンチエイリアスフィルタ

IMI Sensors社

Connection Technology Corporation社

Endevco社/Wilcoxon社

振動近接 (変位) プローブ<300 Hz

変調器/復調器アンチエイリアスフィルタ

±30 Vの入力レンジ

Connection Technology Corporation社
速度近接プローブ<300 Hz

変調器/復調器アンチエイリアスフィルタ

±30 Vの入力レンジ

Connection Technology Corporation社
速度ゼロスピード対応の磁気センサ最大15 kHz

24 VのDC電源

±20 V

Honeywell社

SPECTEC社

モータの電流

シャント式電流センサ

クランプ式電流センサ

最大50 kHz±333 mVまたは±5 VMagnelab社
温度

RTD

熱電対

最大10 Hzノイズ除去、励起、冷接点補償NI
温度赤外線カメラ複数フレーム/秒イーサネット接続を利用するGigE VisionFLIR Systems社
圧力動的圧力センサ>100 Hz

AC/DCカプリング

IEPE (一部のモデル)

±24 V入力またはACカプリング

アンチエイリアスフィルタ

Endevco社

PCB社

Kulite社

Kistler社

オイルの品質

オイル中の微粒子

粘性センサ

汚染センサ

微粒子センサ

最大10 Hz

mAレベルの電流入力

±10 V入力

50/60 Hzノイズ除去

Kittiwake社

Honeywell社

HYDAC社

Poseidon Systems社

高周波数の「ノイズ」超音波>20 kHz

AC/DCカプリング

±24 Vの入力レンジ

アンチエイリアスフィルタ

UE Systems社

 

表1: 状態監視センサには、さまざまな計測対象、必要になる信号調節機能、およびベンダーがあります。

図3に、一般的なセンサ、およびセンサで監視される設備の故障モードの例を示します。

図3: 一般的なセンサ、および検出できる故障モード。

以下に示すように、各種センサを使用することによって、回転機械装置の機械的/電気的コンポーネントの劣化を監視することができます。

  1. 振動センサ: ローラーベアリングやギアボックスの摩耗、シャフトの位置ずれ、不均衡、機械的な緩みを検出するために使用されます。
  2. 速度センサ: 振動センサと連動することで、振動を回転速度とシャフト角度位置に関連付けることができます。
  3. モータ電流センサ: 一般的には、モータ制御センターに配置されます。ロータの異常、巻き線の緩み、ロータバーの劣化、電力供給の不均衡を検出することができます。
  4. 動的圧力センサ: 燃焼動力、乱流、キャビテーションを検出するために使用されます。
  5. 温度センサ: 多くの場合、摩擦による熱を検出するために使用されます。振動の計測と連動して劣化を検知するために、振動センサが付属している場合があります。
  6. サーマルイメージングセンサ: カメラの視野内の温度を広範に検出します。
  7. 超音波センサ: コロナ放電、アーク放電、トラッキングなどの電気的な問題を検出することができます。ローラーベアリングの摩耗の初期的な兆候を検出する場合にも使用できます。
  8. オイルセンサ: ベアリングやギアによって発生する摩耗粉を検出することができます。また、潤滑性を低下させるオイル内の汚染物質も検出できます。

装置、故障モード、センサを特定したら、センサの信号をデジタル化するための計測ハードウェアを選択します。どの計測ハードウェアを選択するかは、周波数レンジ、電圧レンジ、信号調節に対する要件といったセンサごとの特性によって異なります。

周波数レンジの観点からは、スタティックとダイナミックの2種類のセンサから選択することになります。ダイナミックセンサは、2 Hzを大きく超える周波数レンジを計測します。たとえば一般的な加速度計の場合、対象となる周波数レンジは、1 Hzまたは2 Hzから15 kHzまたは20 kHzまでといった範囲になります。また超音波センサでは100 kHz以上の周波数レンジが対象となります。そのヘテロダイン出力は数百Hz~40 kHzの範囲となります。一方、スタティックセンサでは、監視の対象となる物理特性を、1 Hzから10 Hzまたは20 Hzまでのレートで電気信号に変換します。

その他のセンサの特性としては、電圧レンジと信号調節に対する要件があります。30 Vもの電圧を生成するセンサもあれば、数ミリボルト程度の電圧しか生成しないセンサもあります。また、IEPEなどのセンサ電源が必要なセンサもあれば、冷接点補償が必要なセンサもあります。上記の表1には、計測の対象やセンサの種類に応じて信号調節に求められる一般的な要件を示しました。

NIでは、これらのセンサからデータを収集するためのさまざまなハードウェア、およびそれらのデータを処理/解析するためのソフトウェアを提供しています。これらのセンサーに接続するデプロイ可能なソフトウェアについては、以下のリンクを参照してください。