このドキュメントでは、圧力に関する基本概念とさまざまな圧力センサの動作の仕組みの理解に役立つ情報を提供しています。幅広いセンサから選択が可能で、各センサは動作原理や利点、欠点、注意事項がそれぞれ異なります。センサを決定すると、マイクロホン測定の適切な調節、収集、視覚化に必要なソフトウェアとハードウェアの検討が可能になり、必要に応じて追加の信号調節を検討することもできます。
圧力は流体がその周囲に及ぼす単位面積あたりの力として定義されます。圧力Pは、力Fと面積Aの関数です。
P = F/A
圧力測定のSI単位はパスカル (Pa、N/m2) ですが、その他の一般的な圧力単位には、ポンド/平方インチ (PSI)、気圧 (atm)、バール、水銀柱インチ (in.Hg)、水銀柱ミリメートル (mm Hg)、トル (torr) なども一般的に使用されます。
ガスで一杯に満たされたコンテナでは、無数の原子や分子が絶え間なくコンテナ内の壁に弾きあたっています。圧力は、原子や分子がコンテナの壁に単位面積あたりでかける強さの平均です。また圧力は、コンテナの壁に沿って測定する必要はなく、どの平面でも単位面積あたりの力として測定することが可能です。たとえば、空気圧は大気の重量が地上を押す働きです。高度が上がるほど圧力は弱くなります。そして、スキューバダイバーや潜水艦が海底深く潜るほど圧力は強くなります。
圧力測定は、静的または動的に表現されます。モーションのない圧力を静圧といいます。静圧の例には、風船の中の空気の圧力や、たらいの中の水圧などがあります。また、液体が動くことで周囲にかかる力が変化します。たとえば、ノズルが閉まった状態のホース内の水圧は、1平方インチあたり40ポンド (単位面積あたりの力) です。ノズルを開くと、水がホースから出るにつれて圧力が低くなります。圧力計測を正しく行うには、計測がどのような状況で行われるかを考慮する必要があります。液体の流れや圧縮性、外力など、多くの要因が圧力に影響します。
圧力測定は一般的にパスカル (Pa) で測定されますが、実行する測定のタイプによっても指定することができます。 圧力計測には、絶対圧、ゲージ圧、差圧の3つの種類があります。「絶対圧」は真空状態での圧力を示すものですが、「ゲージ圧」および「差圧」は大気圧や隣接血管の血圧など他の圧力を示します。
絶対圧
絶対測定方法は、0 Pa、真空での静圧に対し相対的です。計測する圧力は、対象となる圧力の他に気圧の影響も受けます。そのため、絶対圧計測には、気圧の影響も含まれます。このタイプの計測は、高度計や真空圧に使用されるような気圧の計測に適しています。通常、絶対圧はPAA (パスカル絶対圧: Pascal's Absolute) またはPSIA (PSI絶対圧: Pounds per Square Inch Absolute) の頭字語で表します。
ゲージ圧
ゲージ圧は、大気圧を基準として測定されます。つまり、基準となる圧力も計測対象の圧力も、どちらも気圧の影響を受けるということです。そのため、ゲージ圧計測では気圧の影響は除外します。そのような計測の例としては、タイヤ圧や血圧の計測があります。絶対圧と同様、PAG (パスカルゲージ圧: Pascal's Gauge) またはPSIG (PSIゲージ圧: Pounds per Square Inch Gauge) の頭字語で表します。
差圧
差圧は、ゲージ圧によく似ています。ただし基準となるのは周囲気圧ではなく、システム内の他の圧力ポイントです。この方法を使用すると、コンプレッサタンクと関連の給水ラインなど、2つの容器内の相対応圧力を計測して圧力を維持することができます。通常、差圧はPad (パスカル差圧: Pascal's differential) またはPSID (PSI差圧: pounds per square inch differential) の頭字語で表します。
圧力センサにはさまざまな種類があり、計測条件や範囲、センサの構造に使用されている材質などが異なります。液体に沿って設置された振動板のたわみの量を検出することで、圧力を変位など何らかの中間形態に変換できる場合もあります。センサは、この変位を電圧や電流のような電気的出力に変換します。振動板の面積がわかっている場合は、圧力を計算することができます。圧力センサには、工学単位に変換できるスケールが内蔵されています。
このような圧力トランスデューサの最も一般的なタイプは、ブリッジ (歪みゲージを使用)、可変キャパシタンス、圧電素子です。
ブリッジベースセンサ
ブリッジベースのセンサは、圧力などの物理現象をホイートストーンブリッジの1つ以上の脚部での抵抗の変化に関連付けることで動作します。さまざまな確度、サイズ、堅固性、コストの要求に応えることができるため、最も一般的なタイプのセンサです。ブリッジベースセンサは、高圧アプリケーションと低圧アプリケーションの両方で絶対圧、ゲージ圧、差圧を計測できます。圧力を受けた振動板の変形の検出には、歪みゲージを使用します。
圧力の変動によって振動板が動くと、歪みゲージ上の対応する抵抗に変化が起こります。この変化は、信号調節済みのDAQシステムで測定できます。箔歪みゲージは、振動板に直接接着するか、振動板に機械的に接続されているパーツに接着することができます。シリコンの歪みゲージが使用されることもあります。この方法では、抵抗はシリコンでできた回路基板上にエッチング処理され、トランスミッション液を使用して振動板の圧力を回路基板に送信します。
シンプルな構造と耐久性により、これらのセンサは低コストで、多チャンネルシステムに最適です。一般に、箔歪みゲージは高圧 (最大700M Pa) アプリケーションで使用されます。また、シリコンの歪みゲージ (100℃) に比べ動作温度は高く (200℃) なりますが、シリコンの歪みゲージにはオーバーロードが大きいというメリットがあります。感度が高いため、低圧アプリケーション (2k Pa以下) でもよく利用されています
静電容量式圧力/圧電型センサ
可変キャパシタンスの圧力トランスデューサは、金属振動板と固定された金属板間のキャパシタンスの変化を測定します。2つの金属板間のキャパシタンスは、圧力の適用によって発生するそれらの金属板間の距離の変化に伴って変化します。
圧電型センサは、抵抗ブリッジトランスデューサではなく、水晶振動子の電気特性のみを利用しています。このような結晶は歪みが起こると電荷を生成します。電極は、水晶からの電荷をセンサに内蔵されたアンプに送ります。これらのセンサでは、外部励起源は不要ですが、衝撃と振動の影響は受けやすくなっています。
静電容量式および圧電型圧力トランスデューサは、一般に安定性があり線形的ですが、高温の影響を受けやすく他の圧力センサに比べて設定が複雑です。圧電型センサは、圧力の変化への応答性に優れています。そのような理由から、爆発などの事象の高速圧力計測に使用されます。優れた動的性能を備えている分、コスト効果は高くなく、デリケートな水晶コアを守るため慎重に扱う必要があります。
信号調節済み圧力センサ
アンプなどの集積回路を内蔵したセンサは、増幅センサと呼ばれます。そのようなタイプのセンサは、ブリッジベース、容量性、または圧電型トランスデューサを使って構築することができます。ブリッジベースの増幅センサの場合、DAQデバイスで直接圧力を計測するのに必要な構成抵抗と増幅がユニット自体に装備されています。励起機能もありますが、励起の確度はあまり重要ではありません。
信号調節済みセンサは、フィルタや信号増幅用コンポーネント、励起リード線、計測用の通常回路を搭載しているため、一般に高価格です。そのため、専用の信号調節システムが必ずしも備わっていないチャンネル数の少ないシステムに適しています。調節機能が内蔵されているので、何らかの形でセンサに電力が供給されている限りは、センサをDAQデバイスに直接接続することができます。未調節のブリッジベース圧力センサを使用している場合は、ハードウェアに信号調節が必要です。増幅やフィルタに別のコンポーネントが必要かどうかについては、センサのマニュアルを参照してください。
圧力センサの中で圧倒的によく使用されているのが、ブリッジベースの圧力センサです。効果的なブリッジベース圧力計測システムを構築するには、信号調節について複数の要素を考慮する必要があります。次の項目の1つ以上が必要になる場合があります。
これらの誤差の補正方法や、ブリッジベースの圧力計測に関するその他のハードウェアの注意事項については、「高確度のセンサ計測を実現するためのテクニカルガイド」をダウンロードしてください。
センサまたはテストのニーズを把握したら、次の重要なステップとして、そのデータを収集するためのハードウェアを決定します。収集ハードウェアの品質によって、収集するデータの品質が決まります。
圧力センサのタイプに応じて、さまざまなNIハードウェアに圧力センサを接続できます。たとえば、電圧出力の圧力センサでは、CompactDAQまたはCompactRIOシステムの一部であるCシリーズ電圧入力モジュールが有効です。または、ブリッジベースの圧力センサでは、NIの歪み/ブリッジモジュールとデバイスに接続できます。
シンプルなハードウェアのセットアップ
CompactDAQ歪み/負荷バンドルを使用すると、ブリッジベース圧力センサを各種の歪み/ブリッジ入力モジュールやCompactDAQシャーシに簡単に接続できます。
以下の製品は、圧力センサと接続して圧力信号を収集します。これらの製品を使用して、測定値の励起、調整、集録およびデジタル化が可能です。これらのデバイスの一部は、歪み、負荷、トルク計測にも使用できます。NI製品と組み合わせた歪みゲージを使った歪み測定や、ブリッジベースセンサを使った負荷/トルク測定についてご覧ください。