オペレーティングシステムには、Windows、Mac OS、Linuxなどの多くの選択肢があり、タスクや業務に応じてさまざまな利点をもたらします。これらのオペレーティングシステムではそれぞれ、特定のプロセッサごとに異なるバージョン、ディストリビューション、または仕様が用意されている場合があります。たとえば、WindowsのリリースはWindows XPからWindows Vista、Windows 7などに及び、プロセッサに応じて32ビット版と64ビット版の異なるバージョンが提供されています。Linuxはオープンソースであるため、何百もの種類から選べます。オペレーティングシステムのタイプ、リリース、バージョンごとにそれぞれ機能が異なり、相互互換性がある場合とない場合があります。
そのため、DAQドライバは一般的にあらゆる種類のオペレーティングシステムに対応しているわけではありません。ほとんどのDAQドライバは、最も一般的であるWindowsオペレーティングシステムのリリースで機能します。それ以外のオペレーティングシステムを利用する場合は、DAQデバイスを選ぶ前に、ドライバのサポートについて必ず確認しておく必要があります。
アプリケーションソフトウェアとドライバとの連携の度合いはさまざまです。すべてのドライバの中核となっているのがライブラリ (多くの場合、DLL) です。このライブラリはDAQハードウェアとの通信を管理するために使用されます。通常、ライブラリにはドキュメントが付属しており、さまざまなプログラミング言語に対応したラッパーとともに配布されます。ラッパーとは、ライブラリの関数を特定のプログラミング言語と互換性のあるインタフェースに変換する軽量のコードレイヤのことです。場合によっては、利用している言語のラッパー、またはラッパーそのものが提供されないことがあります。そうした場合は、アプリケーションソフトウェアとやり取りするために独自のラッパーを自分で作成する必要があります。
理想的なのは、ドライバがアプリケーションソフトウェアとネイティブに統合されていることです。そのような場合は、ドライバがネイティブ言語用に書き直されます。その結果、関数とドキュメントがアプリケーションソフトウェアに直接組み込まれるため、性能が向上し、よりシームレスな操作を実現できます。
ドライバには、ユーザマニュアル、関数リファレンス、リリースノート、既知の問題、サンプルコードなど、さまざまな形式のドキュメントが付属しています。内容がまとまっていない未完成のドキュメントに目を通すことは、時間の大きな無駄になる可能性があります。ドライバのプログラミングインタフェースのドキュメントが不十分な場合、ドライバの機能を試行錯誤でテストしなければならず、時間を不必要に消費するばかりか、精神的なストレスも生じます。関数や構文を学ぶための試行錯誤であれば意味がありますが、必要なときにマニュアルを参照できることが必要です。したがって、内容が充実していて適切に整理されたドキュメントを手元に用意しておくことは、非常に価値があります。
ドライバソフトウェアの最適なドキュメントとは、必要な情報がすべてそろっており、指示が的確で、しかもわかりやすいものです。さらには、使用したいプログラミング言語に固有のサンプルコードや、詳細で役に立つエラーメッセージが用意されているものが理想的です。ドライバソフトウェアのドキュメントについて前もって評価しておけば、将来起こりうる問題を減らすことができます。
ドキュメントに加えて、セットアップや診断のためのユーティリティは、アプリケーションを速やかに準備して稼働し、問題を診断するのに役立ちます。テストパネルを使うと、最終的なアプリケーションを設計する前に、ハードウェアの機能を最も基本的なレベルでテストできます。他のソフトウェアやプログラミング要素は不確実な挙動を生じさせる可能性がありますが、そうした要素とは関係なく、未処理の信号を生成して測定し、DAQハードウェアのトラブルシューティングを行うことができます。キャリブレーションユーティリティを使うと、デバイスのセルフキャリブレーションを手順に沿って実行し、計測の制度を高めることができます。センサスケーリングウィザードを使うと、計算式を自分でプログラムしなくても、未処理の電圧値を簡単に工学単位にマッピングできます。ドライバによっては、これらのユーティリティをすべて備え、計測作業のセットアップを手順に沿って実行できる詳細な構成ウィザードが付属しているものがあり、アプリケーションソフトウェアで初めて計測を行う際に役立ちます。こうしたセットアップや診断のためのユーティリティは、DAQデバイスの利用を始めるときや問題を診断するときにたいへん役立ちます。DAQドライバによってはこれらのユーティリティが含まれていないものもあるため、DAQデバイスを選ぶ際にはそのことを十分に考慮する必要があります。
現在利用しているDAQシステムで、将来どのような変更や拡張が必要になる可能性があるのかについて、判断が難しい場合があります。状況に応じて、デバイスをもっと高性能な仕様にアップグレードしたり、追加の計測器を組み込んだりする必要があります。単一のデバイス用に設計されたDAQドライバもあれば、幅広いデバイスで機能するように設計されたドライバもあります。
通常、単一のデバイス用に設計されたドライバは、幅広いデバイスに広く対応するように設計されたドライバと比べて動作が軽い点を特徴とします。こうしたドライバは始めのうちは作業に役立つかもしれませんが、新しいデバイスを追加したり既存のデバイスを交換したりする際に、対応する新しいドライバと連携して機能させるために、かなりのプログラミング作業が必要になることがあります。場合によっては、ドライバのプログラミングインタフェースの構造が異なり、コードに大幅な変更を加える必要があります。
一方、幅広いデバイスをサポートしているドライバは、追加機能や新しいデバイスへの拡張が容易です。プログラミングインタフェースがすべてのデバイスで一貫しているため、新しいデバイスを追加しても基本的にはドロップイン交換であり、コードを変更する必要はほとんど、もしくは一切不要となります。また、こうしたドライバではそれ以外にも、複数のデバイスから得られる計測値の同期や結合を容易にする機能をサポートしている場合があります。