DAQソフトウェアツールには、すぐに実行できるプログラム (プログラミング不要なツール) から、フルカスタマイズ可能なアプリケーション開発環境までさまざまなものがあります。現在のシステム開発のニーズに基づいてアプリケーションソフトウェアを決定することは簡単ですが、システムの成熟に合わせて、どのようにしてそのツールを拡張し問題を解決できるかを検討することが重要です。
すぐに実行できるソフトウェアツールは、多くの場合、決まった機能を持ち、特定の計測やテストルーチンを実行するように設計されています。また通常は、使用できるハードウェアオプションが限定されています。このタイプのソフトウェアツールが現在の開発のニーズを満たしており、システムの機能を変更または拡張する予定がない場合は、そのソフトウェアツールはDAQシステムに適していると言えます。主なトレードオフは、すぐに実行できるアプリケーションソフトウェアは、既存のDAQシステムに新しい機能を組み込む際、簡単には拡張できない場合があるという点です。
現在のシステムのニーズを満たすことができ、また将来的に拡張も可能なアプリケーションソフトウェアツールを利用するためには、カスタムアプリケーションを作成できるアプリケーション開発環境を選ぶ必要があります。アプリケーション開発環境は柔軟性が非常に高く、これにより、DAQドライバをソフトウェアに統合したり、必要に応じた計測またはテストルーチンを実行するためのカスタムユーザインタフェース (UI) やコードを開発したりすることができます。唯一のトレードオフは、事前にプログラミング言語を学習し、自身でアプリケーションを開発するために、ある程度の時間が必要になるという点です。これは時間のかかる作業のように思えるかもしれませんが、現代の開発環境では、オンライントレーニングやライブトレーニング、入門用サンプル、コード生成ツールなどのさまざまな支援ツールに加え、コードの共有や課題に関する話し合いを行うためのコミュニティフォーラムなどを利用できます。また、アプリケーションエンジニアや一般的なサポートチームから個人的に支援を受けることもできます。
新しいソフトウェアの学習にかかる時間は、人によって異なります。また、選択したソフトウェアツールの種類や、DAQアプリケーションのプログラミングに使用する言語によっても異なります。
すぐに実行できるソフトウェアツールは、最も簡単かつ短時間で学習できます。これは、ユーザがプログラミングの詳細を意識する必要がないためです。DAQシステム用のカスタムアプリケーションを決めるときは、ツールを短時間で学習するための適切なリソースが利用できるかどうかを確認してください。このようなリソースには、ユーザマニュアル、ヘルプ情報、オンラインコミュニティ、サポートフォーラムなどがあります。
アプリケーション開発環境については、多くの場合、学習に要する時間が長くなりますが、その時間の大部分は、アプリケーションをプログラミングするために環境内で使用される言語の学習に費やされます。使い慣れた言語がアプリケーション開発環境で使用されていれば、新しいアプリケーション開発環境のプログラマとしてスキルを上げるために必要な時間が確実に短縮されます。多くのアプリケーション開発環境では、1つのフレームワーク内で複数の異なる言語を連携させたり、それらの言語をコンパイルしたりすることができます。
新しい言語の学習が必要となるアプリケーション開発環境を評価するときは、プログラミング言語の基本的な詳細を優先するのではなく、発生しているエンジニアリングの問題を重点的に解決できる環境を検討する必要があります。ANSI C/C++などのテキストベースの言語は、一般的に学習するのが難しいと言われています。これは、コードのコンパイルと実行を正しく行うためには、複雑な文法や構文のルールに従う必要があるためです。NI LabVIEWで提供されているようなグラフィカルプログラミング言語は、多くの場合、容易に学習できます。これは、より直感的に実装でき、エンジニアの思考方法と一致した視覚的な表現が可能であるためです。
また、アプリケーションソフトウェアに付属しているスタートアップリソースについても検討する必要があります。これらのリソースを利用することで、新しいソフトウェアツールをより短時間でセットアップし、実行できるようになります。すべてのソフトウェアツールに役立つスタートアップリソースの一部を以下に示します。
多くの場合、開発者は、計測デバイスをDAQシステムに組み込むには、単にデバイスドライバがあれば十分であると考えています。このような開発者は、デバイスドライバが、DAQシステムの開発に使用しているアプリケーションソフトウェアにどのように統合されているかを必ずしも考慮していません。DAQシステム全体を適切に統合するには、相互に互換性のあるドライバとソフトウェアツールを選択することが重要です。
多くの場合、DAQシステムでは、後処理、解析、データ保存を行うためにシステムおよびデータ管理ソフトウェアとの統合が必要になります。選択したアプリケーションソフトウェアが、収集したデータを簡単に管理できる方法を備えていることを確認してください。
計測システムでは解析が一般的に行われます。データ収集用に設計されたほとんどのアプリケーションソフトウェアでは、信号操作ツールまたはAPIを介して解析ルーチンが提供されます。アプリケーションソフトウェアがシステムに必要な解析ルーチンを備えていることを確認してください。解析ルーチンがない場合は、データ収集用の環境に加えて解析用の環境についても学習が必要になります。また、2つの環境間でのデータのやり取りについても検討する必要があります。
多くの場合、DAQシステムでは、視覚化とデータ保存が密接に関連しています。選択したアプリケーションソフトウェアでは、事前定義されたUIコントロールやカスタマイズ可能なUIコントロールを介して、収集したデータを簡単に視覚化できる必要があります。これにより、収集したデータをユーザに表示できるようになります。また、アプリケーションソフトウェアでは、大量のデータや多数のテスト結果を保存するために、システムおよびデータ管理ソフトウェアと簡単に統合できる必要があります。エンジニアは、データを保存して後で操作する場合が多くあります。そのため、アプリケーションソフトウェアは、多様な保存方法や共有方法に対応するためのさまざまなツールを備えている必要があります。これにより、データの後処理や、共同作業用に標準化された専門的なレポートの生成など、柔軟な対応が可能になります。
アプリケーションソフトウェアを取り巻くエコシステムは、ソフトウェアツールそのものと同じくらい重要です。適切なエコシステムでは豊富なリソースが提供されるため、新しいソフトウェアツールについて簡単に学ぶことができ、独自のアプリケーションを開発する際には、フィードバックによってサポートを受けることができます。時間をかけてコミュニティのフォーラムを閲覧し、フォーラムがどれだけ活発に活動しているか、また共有されている情報の種類 (コード、ディスカッション、ヒント、テクニックなど) を確認してください。必要となるコミュニティは、活発に活動しており、解決しようとしている問題と密接に関連した情報を共有しているコミュニティです。
また、アプリケーションソフトウェアを支えるユーザのエコシステムが、将来の開発の原動力となる場合があります。アプリケーションソフトウェアを提供する組織がコミュニティのニーズに対処しているかどうか、また、ユーザからの情報提供がソフトウェアの将来の機能につながるかどうかを確認してください。
DAQシステム用のアプリケーションソフトウェアを選ぶとき、最後に考慮すべきことは、正式なドキュメントや機能仕様書ではなく、口コミによって提供される情報です。アプリケーションソフトウェアを使用したユーザの成功例を参照したり、プロジェクトでソフトウェアツールを使用したことのあるユーザの話を聞いてみることが重要です。そのソフトウェアを開発した企業以外での事例を参考にすることで、安定性と成功の実績について深く理解することができます。安定性と長期稼働が実証されているアプリケーションソフトウェアを選択することで、システムの再利用と拡張を確実に行うことができ、選択した環境がシステムの使用開始後すぐに陳腐化することがなくなります。
LabVIEWの詳細を参照して、計測アプリケーションソフトウェアのニーズに対応しているかどうかを確認する