Paulo Marques, COGEU
1次ユーザと2次ユーザの両方が、有限の無線スペクトル資源を現実的なコストで有効に利用できるようになることを証明する。
LabVIEWとNI USRP™を使用して、柔軟なテスト用プラットフォームを開発する。それを活用し、スペクトルの再利用の効果を示すために、スペクトルセンシングとジオロケーションデータベースを組み合わせたクロスプラットフォームのコグニティブ無線試作機を開発する。
欧州委員会(EC)の第7次フレームワークプログラムの一環として、欧州連合(EU)に加盟する8カ国の研究者でCOGEUというプロジェクトを立ち上げました。これは、欧州のテレビホワイトスペース(TVWS)を効率的に共有するためのコグニティブ無線システムに焦点を絞ったプロジェクトです。スペクトルの再利用について研究を進めることによって、最終的には、ワイヤレス通信のコストが削減され、ワイヤレス機器におけるデータレートの向上を求める声に応えられるようになると期待されています。COGEUのチームは、シミュレーションを通して、スペクトルの再利用のコンセプトを構想から実際の試作へと推し進めるべく積極的に取り組んでいます。COGEUが目指しているのは、コスト面も含めた実用化を果たすことを目指した公的な政策に働きかけできるようにすることです。
テレビ用スペクトルの場合、1次ユーザの利用形態としては、テレビ放送とPMSE(Programme Making and Special Events)機器の2つがあります。テレビの放送塔の位置は知られており、送信塔(マルチプレクサ)の周囲にある特定の地理的領域を非居住区域として包含しています。COGEUでは、ドイツの放送局と協力し、ミュンヘン地方のTVWSに関するジオロケーションデータベースを開発/導入しました。これには、商用デジタルテレビの受信者に対する実際の保護基準を適用しています。ジオロケーションデータベースでは、各ジオピクセルに対して、未使用のテレビ用チャンネルの一覧を記録します。ワイヤレスマイクなど、多くのPMSEアプリケーションはテレビ用チャンネルを使用しますが、それらについては時間、周波数、位置の予測を行うことができません。このような機器の振る舞いにより、ほかのアプリケーションにおいてテレビ用スペクトルを利用する貴重な機会が損なわれることになります。PMSEシステムの波形は標準化されていません。このように信号に関する情報がない状態でPMSE機器の存在を判断するためにはブラインド検出技術が必要になります。
COGEUプラットフォームのデモ機では、ローカルでPMSEセンシングを行い、TVWSに関するジオロケーションデータベースの情報をチェックします。COGEUの研究者らは、シミュレーションによって、CAV(Covariance Absolute Value)とBCED(Blindly Combined Energy Detection)の2つの方法がほかのPMSEセンシングより優れた性能を示すと判断しました。そして、これらPMSEセンシングのアルゴリズムを、COGEUの試作機に搭載しました。実際の使用を想定した試験によって、CAV/BCEDアルゴリズムは、高度な検出アルゴリズムによってゲインを求める標準的なED(エネルギー検出)アルゴリズムよりも優れていることが実証されました。CAV/BCEDアルゴリズムを使用する手法では、検知時間が100 ms、検出の確率が90%、誤り警告の発生確率が10%という条件の下で、レイリー(Rayleigh)チャンネルにおいて-17 dBの信号対雑音比でPMSE信号を検知することができます。
COGEUのプロジェクトでは、グラフィカルシステム開発のアプローチを採用しました。システム開発ソフトウェアであるNI LabVIEWを使用して、ジオロケーション用にはGPSレシーバを統合し、コグニティブ無線用には NI USRP(Universal Software Radio Peripheral) を統合しました。また、ジオロケーションデータベースへのインターネット接続機能やGUIもLabVIEWを使用して統合しました。COGEUの研究内容を紹介する直観的なユーザインタフェースの開発に、シームレスに統合されたLabVIEWとNI USRPを活用できたことから、ほかの技術者や政策担当者により深く理解してもらうことができました。
このプロジェクトでは、ソフトウェア無線プラットフォームであるNI USRPをベースとしてコグニティブ無線用のセンシング技術を実現しました。従来、この部分は主にGNUの無線向けオープンソースソフトウェアを使用して実現していました。COGEUのシステムでは、TVWSジオロケーションデータベースに対するオンラインでのアクセスなどの部分で、さまざまな技術とプロトコルを統合する必要がありました。LabVIEWはその概念実証や試作の面で理想的なプラットフォームでした。このプロジェクトでは、数学処理や信号処理の機能、NI USRPのソフトウェアドライバ、接続ツール/データ通信ツールなどを扱うにあたり、LabVIEWの多くの機能を活用しました。
センシングプラットフォームでは、NI USRP、GPSレシーバに加えて、LabVIEWをインストールしたホストPCを使用しています。NI USRP-2920では50 MHz~2.2 GHzの範囲のRF信号を扱うことができます。また、ホストPCとしてはWindowsベースのノートPCを使用しました。このPCは、USRPの無線リンクに接続するためのギガビットEthernetや、インターネットにアクセスするためのワイヤレス接続機能も備えています。BluetoothによってGPS機器をホストPCに接続し、調整が可能な市販のFMワイヤレスマイクも使用しました。
この研究プロジェクトにおいて、LabVIEWとNI USRPは非常に重要なコンポーネントでした。これらのプラットフォームにより、COGEUのチームは迅速に試作を行い、最初のテスト環境を短期間で実装することができました。今後は、テレビやPMSE機器のユーザを保護しながら、単一のテレビチャンネルにおける複数のPMSE機器の検出や、自動スペクトルシェーピング、スペクトルアグリゲーション技術など、未使用のTVチャンネルを効率的に使用するための高度な機能をデモンストレーションに付加していく予定です。
Rogério Dionísio, José Ribeiro, Jorge Ribeiro, Paulo Marques, Jonathan Rodriguez, “Cross-platform Demonstrator Combining Spectrum Sensing and a Geo-location Database(スペクトルセンシングとジオロケーションデータベースを組み合わせたクロスプラットフォームデモンストレータ)”、 Future Networks and Mobile Summit、2012年7月4日~6日、ドイツ・ベルリン(カンファレンス議事録への掲載用)
COGEUのジオロケーションデータベースは以下のURLからオンラインで使用できます:http://projectos.est.ipcb.pt/cogeu2/cogeu_novo.php
Paulo Marques
COGEU
pmarques@av.it.pt