- Atsushi KUBOTA, Sky Technology Inc.
OCTでは、空間的に分離された光の情報をFFT演算する事により画像化された奥行き情報として得ることができるが、このプロジェクトでは市販製品(30 kHz~50 kHz)よりも高速なOCTシステム(最大75kHzのラインレートのInGaAsカメラ使用)を開発することが目的であり、より大量のデータ収集し、高速にFFT演算、立体画像化する処理システムを開発する必要があった。 また、医療機器として販売するため、これらが小型で一体化したシステムである必要があった。
NI 1483 画像処理モジュールとPXIe-7966R FPGAモジュールを使用し、ラインカメラからの深さ方向の光干渉データ(2048点)を収録しつつ、FPGAで逐次FFT演算を行い、画像化した奥行き情報をMXI Expressを使用してPCへ直ちに転送。 ガルバノスキャナー制御には、NI PXIe-6361を使用し、患部へのレーザーが当たる位置を変化させながら、立体データを最大75 kHzのラインレートで収録。収録した立体データは、PCのGPUを使用したボリュームレンダリングを行い、直ちに立体画像の表示を行う事ができるシステムを構築した。
Masayuki SUZUKI - Faculty of Medicine, Saitama Medical University
Michihiro KANEDA - Sparkling Photon
Atsushi KUBOTA - Sky Technology Inc.
光の干渉を利用し、対象の内部構造を計測するOCT(Optical Coherence Tomography)の技術は、従来診断装置と比較し、高速・高分解能で患部の断層を撮像することができ、さらに近赤外線を使用するため人体に対する負担が少なく、眼、皮膚、血管など様々な人体組織の撮像に使用されている。
埼玉医科大学では、LD(Laser Diode)励起ファイバーレーザー技術を用いて波長1000nm帯における広帯域の光源の開発を行い、従来品に対して高浸達で高分解能なOCT装置を製作することが可能となった。
今回、この光源を使用したOCTシステムを、埼玉医科大学、スパークリングフォトン株式会社、株式会社スカイテクノロジーの3社で共同開発することとなった。
OCTでは、空間的に分離された光の情報をFFT演算する事により画像化された奥行き情報として得ることができるが、このプロジェクトでは市販製品(30kHz~50kHz)よりも高速なOCTシステム(最大75kHzのラインレートのInGaAsカメラ使用)を開発することが目的であり、より大量のデータ収集し、高速にFFT演算、立体画像化する処理システムを 開発する必要があった。
また、医療機器として販売するため、これらが小型で一体化したシステムである必要があった。
FlexRIO NI 1483 画像処理モジュールとPXIe-7966R FPGAモジュールを使用し、ラインカメラからの深さ方向の光干渉データ(2048点)を収録しつつ、FPGAで逐次FFT演算を行い、画像化した奥行き情報をMXI Expressを使用してPC へ直ちに転送。ガルバノスキャナー制御には、NI-DAQ PXIe-6361を使用し、患部へのレーザーが当たる位置を変化させながら、立体データを最大75kHzのラインレートで収録。収録した立体データは、PCのGPUを使用したボリュームレンダリングを行い、直ちに立体画像の表示を行う事ができるシステムを構築した。
【機能検証用 試作機の作成】
埼玉医科大学で開発した光源が全波長型(広帯域)であるため、OCTのシステムとして分光器型OCT(SD-OCT)を採用している。
SD-OCTでは、光源から全ての波長を同時に出力し、ハーフミラーで参照光と測定光に分離。患部からの反射光と参照光を干渉させ、干渉波を分光器で分光し、ラインカメラで検出する事で深さ方向の情報を取得する。
この時、測定光をガルバノスキャナーで走査する事により、立体画像を得ることができる。
本プロジェクトでは、最初に機能検証用 試作機(以下 試作機)を作成し、開発したOCT光源と光学系の調整および処理アルゴリズムの確立を行った。
試作機のシステム構成(図2.)は以下となる。
DAQボード PXIe-6361で、ガルバノスキャナー制御(アナログ電圧)とカメラへのシャッター信号(TTL)を制御し、画像収録ボード FlexRIO NI 1483+PXIe-7966Rで1ライン毎データの収録を行いながら、逐次FFT演算を行う。 このFFT演算処理は、カメラの最大収録速度75kHzであることから、同等の速度で実行される必要があるが、当初はカメラからのデータ転送の仕組みによる影響などで半分の速度(37kHz)しか演算することができなかった。そこで、FFT演算処理を2つ並列に実装し、ライン毎にFFT演算処理を割り振ることで、当初目標の75kHzのFFT演算処理を実現している。
こうしてFFT演算されたデータは、MXIを通してホストPCに直ちに転送され(1024点x(実部4bytes+虚部4bytes)x75kHz≒614.4Mb/s)、ホストPCでは、転送されたデータを収集し、GPUへデータ転送し、GPUでボリュームレンダリング後にディスプレイに表示される。
また、診断時のエビデンス用に、OCT立体画像データ保存機能も有しており、RAIDを使用する事で、収録している全てのデータ保存ができるようになっている。さらに、OCT光学系の調整用に、FPGAでFFT演算を行わず、カメラから収録した生データを保存し、波形として同時に表示する機能も持たせている。
【 量産機の試作】
試作機でOCT装置の性能目標を達成することができたが、量産に向けては、さらなる小型化・低コスト化が求められた。量産機の検討を行っていたところ、NIよりFlexRIO用コントローラ NI 7935Rが発売された。NI 7935Rは、NI Linux Real-Time OSを備えたスタンドアロンで動作するFlexRIO FPGAモジュールとなっており、FlexRIOアダプタモジュールがそのまま使用でき、Real-Time OS用に一部コードを変更する必要があるが、試作機で作成したLabVIEWコードがそのまま利用できることから、量産機のデバイスとして採用に至った。
量産機のシステム構成(図3.)は以下となる。
試作機と量産機での変更点は以下3点となる。
カメラトリガの入力方法は、試作機では、DAQボードから出力したトリガ信号は、PXIシャーシのバックプレーンを通して、FlexRIOボードへ転送していたが、量産機では、DAQボードからのトリガ信号を、一度端子台に出力し、その信号をFlexRIOコントローラのTrig In端子に入力するように変更している。
接続方法の違いによる処理の変更では、試作機ではMXIによりホストPCに各種ボードが直接接続されている状態となっていたが、量産機で採用しているFlexRIOコントローラの場合、それ自体がReal-Time OSにより独立して動作しているデバイスとなるため、ここの処理とホストPCとの通信部分を追記する必要があった。
また、物理的接続の部分でも、試作機ではMXIケーブルでの接続だったのに対して、量産機では、ホストPCからFlexRIOコントローラへの指令をUSBによる仮想Ethernet通信で行い、FlexRIOコントローラからの大量のデータ転送は、SFP+による10Gb EthernetのUDP通信としている。
特に、10Gb Ethernet通信は、FlexRIOコントローラのFPGAが直接サポートする機能を使用しており、データ通信の高速性と信頼性を両立するため、難しい処理となったが、NI 技術部の手厚いサポートのおかげも有り、試作機と同等の614.4Mb/sでの安定したデータ転送を実現し、高速性・信頼性を確保することができた。よって、当初心配していた最新機種への変更による開発工数の増加や小型化による処理速度の低下は殆どなく完成することが出来た。
新たに構築したソリューションのメリット
NI製品を採用するメリット
開発した装置の有用性を証明する臨床データの取得と同時に電気試験を行い、医療機器としての認証を取得する。 また、医療機器としての装置の利便性を医師の意見を伺いながら向上させる。
Atsushi KUBOTA
Sky Technology Inc.
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