テストデータ管理インフラストラクチャ構築

Jaguar Land Rover社、Simon Foster氏

「このソリューション開発、実装1経過した今、最大95パーセントデータ解析見込まれています。また、テスト不要ことで、テストコスト年間テスト実施回数減少しました。」

- Jaguar Land Rover社、Simon Foster氏

課題:

400人以上のエンジニアと200台以上のデータロガーによって生成された時系列データは1日につき最大500 GBにも上る。このデータを管理・解析する総合的なデータ管理ソリューションを実装する。

ソリューション:

DIAdemソフトウェアとDataFinder Server Editionに基づくソリューションを構築して、収集元に関係なくすべてのファイルのメタデータのインデックスを作成し、データの検索、検査、分析、レポート作成が従来のマニュアル手法の20倍速く行えるワークフローを作成できるようにする。

投稿​者:

Jaguar Land Rover社、Simon Foster氏
Jaguar Land Rover社、Pablo Abad氏

 

Jaguar Land Rover抱えるBig Analog Data問題

Jaguar Land Rover (JLR) 社が長年にわたって成功を収めてきた要因には、高度な設計、エンジニアリング、技術のすべてが関係しています。当社は英国のどの製造会社よりも研究開発に投資しており、何千人ものエンジニアによって、世界トップクラスのイノベーションを世に送り出してきました。研究開発への投資に伴い、パワートレインキャリブレーション/制御部門の400人以上のエンジニアは、毎日最大500 GBの時系列データを収集しています。

 

しかし、これだけの量の収集データを1部門で管理することは容易ではありませんでした。特定のテスト結果を得るまでには、テストを頻繁に繰り返す必要があることがわかりました。当社での従来の解析ルーチンはマニュアルプロセスに基づいており、その後開発した自動プロセスと比べると20倍の時間がかかっていました。解析ツールは複数あり、アルゴリズムを実装するには、すべてに対して特別なスクリプトが必要でした。標準化されているものは何もなく、メタデータ名やチャンネル名さえも統一されていませんでした。こうした非効率なプロセスが原因で、当社が解析できたのは収集したデータのわずか10%でした。

 

アプリケーション最適ソリューション見つける評価基準

このBig Analog Data (ビッグアナログデータ) の課題を解決するため、専門チームを結成し、当社のアプリケーションに最適なプラットフォームを決めるための9つのツールを評価しました。ツールの評価基準は以下のように定めました。

  • データの自動アップロード—このソリューションに関わる400人以上のユーザの負担を最小限にするため、コンピュータのネットワーク接続時に新しいデータセットを自動的にアップロードし、中央サーバにこれらのファイルを転送する仕組みがある。
  • メタデータの管理—ソースが異なるデータの結合、ファイルに保存されていないメタデータの追加、メタデータからのファイルの検索が可能な仕組みがある。
  • 解析を実行する対話式ツール—エンジニアが新たなプログラミング言語を習得する必要のないよう、対話式の解析機能を備えたソリューションとする。またこれにより、数少ない解析専門の技術者に依存せず、エンジニアが独自解析できるようにする。
  • バッチプロセスでの並列解析の実行—数千のファイルに対して同時処理を実行する。
  • レポート作成テンプレート—統一性と信頼性のあるレポートを作成して、意思決定がスムーズに行える。
  • 柔軟なプラットフォーム—既存のデータ収集プロセスに統合して、将来的には他部署にも拡大する。

 

当社DIAdemおよびDataFinder Server Edition基づくソリューション理由

9つのツールの評価結果に基づいて、DIAdemソフトウェア、今ではSystemLink TDM DataFinderモジュールと呼ばれていますが、その採用を決定しました。NI技術データ管理プラットフォームを選んだのは、上記の基準を満たすという理由のほか、次のような理由がありました。

 

  • DataFinder Server Editionは市販のデータベースソリューションで、メタデータのインデックスを作成します。ユーザはそれに対して特定のテスト結果を探すクエリを送信します。
  • DIAdemは1,000以上のファイル形式をサポートし、データの読み込やロードが可能です。つまり、現在のデータ収集プロセスに一切変更を加える必要がなく、また将来に変更が必要になっても、データ解析プログラムとの互換性を心配する必要がないのです。
  • DIAdemを使用すれば、プログラミングせずに対話形式で解析ダッシュボードを作成することができます。
  • データを選んでロードすることができます。ファイルに200個以上のチャンネルが含まれ、そのうちの5個のみを解析する場合などが該当します。DataFinderを使ってクエリを実行し、解析するデータを絞り込んで、1つ、あるいは複数のファイルから必要なデータを選択してロードし、DIAdemクライアントで解析することができます。
  • NIの技術サポートは、問題に直面したり疑問が生じたときなどに、大変有益でした。

 

 

完全自動解析プロセスワークフロー

車両テストを行う場合、あらゆる方法でデータを収集します。その一つとして、データロガーを設置して、試験走行中にセンサから情報を収集する方法があります。テストが完了すると、データはWi-Fiまたは3G/LTE経由でダンプ領域に転送され、前処理が行われます。ノートPCを車両に直接接続し、CAN、MOST、FlexRayまたはECUプロトコル、CCP、XCP、ETKなどの車両ネットワークのデータも収集します。テストが完了し、JLRネットワーク (Jaguar Land Rover Network) への接続が確立されると、データが自動的にダンプ領域に転送されます。このプロセスを開始するのに、ユーザによるアクションは必要ありません。

 

データの収集を終えると、私たちは常に適切なメタデータがあるかどうかを確認します。この確認を行うには、ファイルの識別子/タグを、他の内部データベース (車両データベース、エンジンキャリブレーションデータベース)、またはCANログなどの信号からネットワークデータをデコードしたものと相互参照します。平均温度、速度、MPGなどのパラメータを計算した後、そのメタデータをDataFinder Server Editionに基づいたサーバに保存します。エンジニアは誰でもデータをクエリして、特定のパラメータに合致するすべてのテスト結果を返すことができます。

 

この段階からエンジニアは誰でも独自の解析ルーチンを実行できるようになります。より詳しい調査が必要なデータに対しては、あらかじめ定義されたルーチン、またはカスタムの特別解析を実行することができます。次に、選択したファイルに解析を実行するか、またはサーバソリューションに送信するバッチプロセスを実行します。解析は数千に及ぶファイルに対して実行する場合があるので、マルチコアプロセッサの装備は重要なポイントでした。既存の解析ツールとアルゴリズムの使用も可能なので、それがこの新しいデータ管理、解析ソリューションを社内展開するのに役立ちました。

 

解析の実行後、テンプレートに基づいた総合レポートを受け取ります。このレポートで反復設計が容易になり、データに基づいた決断を速やかに下せるようになります。自動レポートでテンプレートを使用するメリットは、同じフォーマット (同じ軸またはズーム領域を含んだグラフ、同じデータおよび演算サブセットを含んだ表など) で情報が表示されることです。フォーマットが同じなら比較が容易で、確信を持って決定することができます。

 

これまで成果

このソリューションを開発、実装して1年弱が経過した今、最大95パーセントのデータ解析率が見込まれています。また、再テストが不要になったことで、テストコストと年間のテスト実施回数が減少しました。

 

その他のメリットとしては、システムが複雑になったとしても、お客様に最終製品を届ける前に、より多くの問題を発見し対処できるようになったことが挙げられます。以前に比べて製品の堅牢性が向上した結果、お客様の満足度評価が高くなりました。

 

将来を見据え、パワートレインキャリブレーション/制御部門以外にもこのデータ管理/解析ソリューションを拡大することを考えると、DIAdem、DataFinder Server Edition、およびNIとのパートナーシップは、このアプリケーションを進化させていく上で必要不可欠な要素です。

 

投稿者​情報:

Simon Foster氏
Jaguar Land Rover社
sfoste31@jaguarlandrover.com

図1. 収集データの最大95%解析を可能にした、NI DIAdemソフトウェアとDataFinder Server Editionを使用した自動化システム