Jaguar Land Rover社、Simon Foster氏
400人以上のエンジニアと200台以上のデータロガーによって生成された時系列データは1日につき最大500 GBにも上る。このデータを管理・解析する総合的なデータ管理ソリューションを実装する。
DIAdemソフトウェアとDataFinder Server Editionに基づくソリューションを構築して、収集元に関係なくすべてのファイルのメタデータのインデックスを作成し、データの検索、検査、分析、レポート作成が従来のマニュアル手法の20倍速く行えるワークフローを作成できるようにする。
Jaguar Land Rover社、Simon Foster氏
Jaguar Land Rover社、Pablo Abad氏
Jaguar Land Rover (JLR) 社が長年にわたって成功を収めてきた要因には、高度な設計、エンジニアリング、技術のすべてが関係しています。当社は英国のどの製造会社よりも研究開発に投資しており、何千人ものエンジニアによって、世界トップクラスのイノベーションを世に送り出してきました。研究開発への投資に伴い、パワートレインキャリブレーション/制御部門の400人以上のエンジニアは、毎日最大500 GBの時系列データを収集しています。
しかし、これだけの量の収集データを1部門で管理することは容易ではありませんでした。特定のテスト結果を得るまでには、テストを頻繁に繰り返す必要があることがわかりました。当社での従来の解析ルーチンはマニュアルプロセスに基づいており、その後開発した自動プロセスと比べると20倍の時間がかかっていました。解析ツールは複数あり、アルゴリズムを実装するには、すべてに対して特別なスクリプトが必要でした。標準化されているものは何もなく、メタデータ名やチャンネル名さえも統一されていませんでした。こうした非効率なプロセスが原因で、当社が解析できたのは収集したデータのわずか10%でした。
このBig Analog Data (ビッグアナログデータ) の課題を解決するため、専門チームを結成し、当社のアプリケーションに最適なプラットフォームを決めるための9つのツールを評価しました。ツールの評価基準は以下のように定めました。
9つのツールの評価結果に基づいて、DIAdemソフトウェア、今ではSystemLink TDM DataFinderモジュールと呼ばれていますが、その採用を決定しました。NI技術データ管理プラットフォームを選んだのは、上記の基準を満たすという理由のほか、次のような理由がありました。
車両テストを行う場合、あらゆる方法でデータを収集します。その一つとして、データロガーを設置して、試験走行中にセンサから情報を収集する方法があります。テストが完了すると、データはWi-Fiまたは3G/LTE経由でダンプ領域に転送され、前処理が行われます。ノートPCを車両に直接接続し、CAN、MOST、FlexRayまたはECUプロトコル、CCP、XCP、ETKなどの車両ネットワークのデータも収集します。テストが完了し、JLRネットワーク (Jaguar Land Rover Network) への接続が確立されると、データが自動的にダンプ領域に転送されます。このプロセスを開始するのに、ユーザによるアクションは必要ありません。
データの収集を終えると、私たちは常に適切なメタデータがあるかどうかを確認します。この確認を行うには、ファイルの識別子/タグを、他の内部データベース (車両データベース、エンジンキャリブレーションデータベース)、またはCANログなどの信号からネットワークデータをデコードしたものと相互参照します。平均温度、速度、MPGなどのパラメータを計算した後、そのメタデータをDataFinder Server Editionに基づいたサーバに保存します。エンジニアは誰でもデータをクエリして、特定のパラメータに合致するすべてのテスト結果を返すことができます。
この段階からエンジニアは誰でも独自の解析ルーチンを実行できるようになります。より詳しい調査が必要なデータに対しては、あらかじめ定義されたルーチン、またはカスタムの特別解析を実行することができます。次に、選択したファイルに解析を実行するか、またはサーバソリューションに送信するバッチプロセスを実行します。解析は数千に及ぶファイルに対して実行する場合があるので、マルチコアプロセッサの装備は重要なポイントでした。既存の解析ツールとアルゴリズムの使用も可能なので、それがこの新しいデータ管理、解析ソリューションを社内展開するのに役立ちました。
解析の実行後、テンプレートに基づいた総合レポートを受け取ります。このレポートで反復設計が容易になり、データに基づいた決断を速やかに下せるようになります。自動レポートでテンプレートを使用するメリットは、同じフォーマット (同じ軸またはズーム領域を含んだグラフ、同じデータおよび演算サブセットを含んだ表など) で情報が表示されることです。フォーマットが同じなら比較が容易で、確信を持って決定することができます。
このソリューションを開発、実装して1年弱が経過した今、最大95パーセントのデータ解析率が見込まれています。また、再テストが不要になったことで、テストコストと年間のテスト実施回数が減少しました。
その他のメリットとしては、システムが複雑になったとしても、お客様に最終製品を届ける前に、より多くの問題を発見し対処できるようになったことが挙げられます。以前に比べて製品の堅牢性が向上した結果、お客様の満足度評価が高くなりました。
将来を見据え、パワートレインキャリブレーション/制御部門以外にもこのデータ管理/解析ソリューションを拡大することを考えると、DIAdem、DataFinder Server Edition、およびNIとのパートナーシップは、このアプリケーションを進化させていく上で必要不可欠な要素です。
Simon Foster氏
Jaguar Land Rover社
sfoste31@jaguarlandrover.com